アプローチ感覚でドライバーが打てる。だから緊張しても崩れない
プロゴルファー・武市悦宏は週刊ゴルフダイジェスト誌上でジュニアゴルファーを取材する連載を長年続け、有力ジュニアのほとんどをその目で見ている“ジュニアゴルフウォッチャー”。もちろん、今回アマチュア優勝を果たした古江彩佳も2015年の中学3年時に取材済み。
それから4年後、アマチュアでプロの試合に勝つところまで成長した古江の姿に、武市は「まったく驚かない」という。古江しかり、同期の安田祐香しかり、“プラチナ世代”の女子ゴルファーたちは、中学生や高校生時代からすでにプロに匹敵する腕前を持っていたというのだ。
その上で、古江の強さの秘密はスウィング軌道にあると武市は言う。
「古江さんは、スウィング軌道はL字を描くんです。切り返し後にタメを作るのではなく、クラブを右足の前に落とし、そこから体の回転で打っていく。このような軌道で打つため、アプローチからドライバーまで、入射角がつねに一定で、球の高さが一緒なんです。タイガー・ウッズがやっているようなことを(19歳にして)できるってことです」(武市)
入射角が一定であることのメリットは、球の高さ、そしてスピンが一定になるということ。そのことにより、プレッシャー下でも曲がらなくなると武市。
「今回の試合でも、ドライバーをまるでアプローチ感覚で打っているように見えました。だから、緊張しても曲がらないし、優勝争いでも崩れない。たとえばもし彼女が今週の試合に出るとすれば、今週も上位に入ってくると思います。優勝した次の週に予選落ちするような、そういうタイプのスウィングじゃないですから」(武市)
古江本人は宮里藍が憧れだというが、武市に古江に似ているプレーヤーはと問うと、出てきた答えは学年で“ふたつ上”の畑岡奈紗。
「古江さんと畑岡さんは、ふたりともスピンコントロールができて、『すごくゴルフが上手』っていう点で似ています。飛距離は畑岡さんのほうが飛ぶでしょうし、現時点では畑岡さんのほうが上。しかし、古江さんのポテンシャルも高く、えげつないくらい強くなる可能性があると思います。余談ですが、安田祐香さんの細身の体で飛ばす、インパクトの効率の良さもすごいものがあります」
中学3年だった週刊ゴルフダイジェストの取材時、武市からの「将来はプロを目指しているの?」という問いに対し、「はい! いまは金銭面から送り迎えまで両親に頼り切りなので、早くプロになって恩返ししたいです」と答えた古江。恩返しのときは、ことのほか早くやってきたようだ。