ラウンド中の気づきをノートに書き留める「ゴルフノート」を作ろう
前回まで数回にわたり、「ここ一番」でパフォーマンスを発揮するためのマインド(考え方)、そしてトレーニング法を紹介してきました。
スコア・順位、他者からの評価などの成果目標ではなく「攻める」などの目の前のプレーに対する行動目標にフォーカスする重要性、行動目標にフォーカスできるような脳をつくるためにマインドフルネスを取り入れていくこと、マインドフルネスは日常生活の中でも歯磨きや掃除で実践できることなど。
そして、次のステップはラウンドやコンペなどの実戦でそれらの考え方やトレーニングを試すということです。試すことで、実際に「今のワンプレーに集中できるようになっているのかどうか」を実感することができます。
その際、大切になのが実戦での気づきを頭だけで記憶せず、ノートなどに書き出すことです。これが今回おすすめするメンタル改善術「セルフモニタリング」です。これは自分の行動や思考、そして感情などを観察し記録していくという手法のことを指します。これはスポーツ心理学や認知行動療法の世界でもすすめられている手法でメンタルの改善に効果が認められています。
このセルフモニタリングはスポーツをやってきた人であれば誰もが一度はやったことがあるものです。野球ノート、サッカーノート、バスケノート、〇〇(競技名)ノートというように競技ノートの提出がチームの決まり事としてあり、練習後や試合後に試合の反省や次の試合に向けた改善点などを書いたことがある人も多いのではないでしょうか。
たとえば、高校野球の投手が野球ノートに次のようなことを書いたとします。
「今日の試合ではバッターを追い込んだときの決め球は良かった。しかし、ボールが先行したときとランナーを背負っているときの制球が乱れてしまっていた。乱れてしまったのは、フォアボールを出してしまったらどうしよう、点を取られたら交代になるかもしれないと追い込まれた場面でネガティブなイメージをしてしまっていたことが原因のように思える。次の試合ではピンチの時こそ、強気なピッチングができるように、練習の紅白戦から今回の課題を克服できるようにしたい」
このように自分の行動や思考、そして感情をノートに書き出す作業は頭の中で「ビデオ(モニター)に録画した自分自身(セルフ)を客観的に振り返る」ようにセルフモニタリングしているわけです。そして、これにより2つのメンタル改善の効果があります。それが「気づき」と「行動目標へのフォーカス」です。
技術的・メンタル的な課題に気づき、改善のための行動に目を向けていくこと自体が、セルフモニタリングにより上達していくのです。マインドフルネスを使う集中力を高めるトレーニングも同じく、「気づき」と「行動目標へのフォーカス」を高める目的がありました。呼吸に集中しながらも、意識が他にそれたら何が気になったかを気づき、また呼吸に集中する。
ゴルファーの方も1冊のノートを準備し、ラウンドの振り返りをしてみることはおすすめです。
「今日のラウンドは前半テンポよく球を打つことができ一打一打に集中できた。打つ前にボールの後ろからどんな球を打ちたいかという球筋イメージをつくり頭に残したままスウィングすると良さそう。また、呼吸でリラックスをつくり、打つときはボールを見ることに意識をむけると良いスウィングになる」というふうに。
このように自分を“客観的”に分析し、ノートに書きだすセルフモニタリングは、成長や課題を記録するとともに「気づき」と「行動目標へのフォーカス」の能力アップにつながります。
まずは5分でOKです。練習・ラウンド後にセルフモニタリングするためのゴルフノートをはじめることも良いメンタルづくりに役立つと思います。
撮影/三木崇徳