4度の手術を経て飛距離のアドバンテージはなくなったが……
「技術的には、さらに一段と軽さが増しています。今回の勝利で、タイガー・ウッズの“40代のスウィング”は完成したと言っていいんじゃないでしょうか」
そう吉田が語るように、ZOZOチャンピオンシップでのタイガーは、とにかく軽〜く振っているように見えた。さすがにラフなど状況次第では力感を出して降りちぎる姿も見られたが、基本的には力感なく、まるで素振りのようにスウィングする姿に驚いた人は多いのではないだろうか。
タイガーによれば、それでも「今週は全力でフルスピードでスウィングできている」のだとか。以前は手術したひざをかばうことで腰に負担がかかり、そのことで捻転差をつくることができなかったという。まだ腰に痛みは多少あるそうだが、捻転差を作れるようになったのだという。
12月で44歳となるタイガー。4度の手術を経て、もはや肉体は20代の頃とは大きく変わっているはずだ。それでもトップ中のトップのレベルでプレーできるのは、自分の肉体の状態に合わせてスウィングをつねにマイナーチェンジしてきたからこそだろう。再び吉田は言う。
「今回のZOZOでのように軽く打つのが新生タイガーなのだと思います。体をハードに使うのではなくて、クラブに仕事をさせて、体の負担を減らしつつ方向性を出していく。飛距離のアドバンテージはなくなりましたが、アイアンのキレ、球筋を操る巧さは際立っていました」
最終日をゲーリー・ウッドランド、キーガン・ブラッドリーとプレーしたタイガーだが、基本的には一番飛んでいなかった。それでも、冴え渡るアイアンで彼らより内側につけてバーディを奪うプレーには凄みがあふれていた。
「練習場で見ても、ドローとフェードの打ち分けも完璧。スピンコントロールも完璧。150ヤード以内ならすべてピンにくっつくような印象です。ZOZOでサム・スニードの持つ82勝の最多勝記録に並びましたが、単独で追い越すのは当たり前。今回のプレーを見る限り、メジャー記録更新も完全に視界に入ったのではないでしょうか」(吉田)
タイガーに残された最後の偉業ともいえる、ジャック・ニクラスの持つメジャー最多優勝記録「18」の更新。タイガーは現在メジャー15勝で、残りは3。この大記録更新も、現実味を帯びてきた。
1996年の初優勝から23年。まだまだ、タイガー・ウッズから目が離せない。
撮影/姉崎正