ここはアメリカ? それとも日本? 夢のような8日間だった
8日間にわたったZOZOチャンピオンシップが幕を閉じました。
金曜日は、習志野カントリー倶楽部のキャディさんが、「26年勤めていますが、ここまで冠水したのは初めて」と語るほどの大雨に見舞われ、止む無く土曜日のセカンドラウンドでは10番ホールを140ヤードパー4にするなど、苦難の出来事が多々ありながら、予備日の今日、月曜日を使っての完走です。
夢のような8日間。陳腐な言葉ながら、そう言うにふさわしい試合でした。400ミリレンズを覗きながら、まるで米国開催のツアーのような錯覚を何度も感じたり、撮影対象を変えようと歩いていると、意図せずにジェイソン・デイがいたり、パトリック・リードがいたり。本来であれば主役級の選手が、あふれんばかりにコースのそこここにいます。
その中にあっての主役は、タイガー・ウッズ。世界のどの試合でも、その注目度、セキュリティの厳重度、そして人気度ナンバーワンです。
そして海外試合に赴いての撮影でも、出会うことの少ない選手の一人でもあります。幸い、私の今年のタイガー撮影率は高く、2月ファーマーズインシュランスオープン、3月メキシコ選手権、4月マスターズ、5月全米プロ、7月全英オープン、そして10月ZOZOチャンピオンシップの計6回。
月曜日に、最終ラウンドの残りを午前7時半から開始するとのアナウンスを受けて、当日午前6時にプレスセンター到着。カメラの準備を怠りなく済ませて朝食をとり、スタート1時間前には練習場へ。すでに多くの選手が朝の練習に励んでいます。
ドライビングレンジが二つに分かれていて、タイガーも松山も奥のレンジ。まだは朝の冷気がする中、打球音だけがこだましています。松山が早めにレンジからアプローチ練習場に移動し、パター練習グリーンへ。それを追って行くと、後から来た石川遼が松山に声をかけていました。
そうこうしている間にスタート15分前。残り7ホールを残して3打差をつけているタイガーをガッツリ追うか、6ホールを残す松山の逆転優勝を狙うか。ゴルフを撮る者として、これほど悩ましい選択はありません。カメラは3台持ち歩いていますが、体は一つ。タイガーは12番ティから、松山は13番ティからの再開。
まずは松山が打つ13番、パー3に向かいました。おっと、その前のザンダー・シャウフェレ、マシュー・ウルフ、ビリー・ホーシェル組が打ちます。通常ならば重要な3人ですが、今はその限りでなく、松山のティショットを待ちます。松山がアイアンを振り抜きました。グリーンオン。バーディパットは……惜しくも外れてパー。松山、悔しそう。
そのまま次の14番パー5のティショットを撮り終えると急ぎ13番へ。タイガーのティショットをグリーンわきから見届け、落下地点を確認して撮影ポイントに入ります。
リーダーズボードを見るとタイガーが昨日よりスコアをひとつ落としています。13番のバーディパットは外れてパー。14番からはタイガーの最終組をフォローです。このパー5のホール、左足下がりの3打目をピン奥へつけ、バーディ。スコアを戻します。
16番パー3で松山がバーディを奪った様子。この時点で2打差、まだ松山の優勝の可能性は残されています。タイガーの17番セカンドショットを撮り、グリーンオンを確認して、急ぎ18番の松山の元へ向かいます。
18番パー5はプロアマ日に石川遼がアルバトロスを決めたホールで、ティショット次第で十分イーグルも狙えるホール。セカンド地点に向かうと、フェアウェイバンカーに松山のボールが。前の組のプレー終わりでグリーンが空くのを待ちますが、長く、じれったく感じます。松山の手にはフェアウェイウッド。
勝負を掛けた一打に、撮るほうも緊張が伝わります。この時ばかりは見たところ、ギャラリーの誰一人スマホを向けていません。
この一打がいかに重要かが共有されています。放たれたボールはグリーン左手前のバンカーへ。勝負の3打目は……あっ! 大きい。反対側のギャラリー手前まで行きました。このホールはパー。松山、ナイスプレー。
18番セカンド地点では最終組が待っています。タイガーのセカンドショットはグリーン右脇のバンカーへ。この日観戦できた多くの幸福なギャラリー達とともに、タイガーがやってきました。バンカーショットをグリーンに乗せ、これを沈めて今日ふたつ目のバーディ。これがウィニングパットです。
マスターズでの復活優勝のときに見せたのよりも静かな勝利ではありましたが、日本で初めて開かれたUSPGAツアーの優勝者がタイガー・ウッズであることの意味は大きいと思います。
また、私自身2019年のゴルフ撮影の中、マスターズの優勝に続き、タイガーが我が国でサム・スニードに並ぶツアー82勝目を挙げる姿を目の当たりに出来たことの幸運を、ジワリと感じます。
ZOZOチャンピオンシップが日本のゴルフ文化に与えた影響がどう出るか。今後の楽しみになりました。