松山英樹以来のアマチュア優勝の快挙を成し遂げた東北福祉大学3年の金谷拓実。彼の強さの秘密に、メンタルコーチ・池努が迫った!

学生らしからぬ集中力

三井住友VISA太平洋マスターズで東北福祉大3年生の金谷拓実選手が通算13アンダーで優勝しました。大学の先輩にあたる松山英樹選手が達成したのと同じ、ツアー史上4人目のアマチュア優勝でした。その偉業を達成した金谷選手のメンタル面の特徴をプレーやインタビューの情報をもとに分析していきたいと思います。

3日目終了時点で単独トップに躍り出た金谷選手は、会見で「(最終日は)周りを気にせずに自分のベストを尽くすことだけに考えてプレーします」と話しています。このようなコメントは誰もがする一般的なコメントだと思います。ただ、凄みを感じるのは本当に周りを気にせずに「自分のベストプレー」に集中できたことです。

周りを気にしないと言葉にするのは簡単ですが実践することは簡単ではありません。なぜなら、人は本能上で他人の評価や目線、スコア、そして未来の結果を気にするのが当たり前だからです。

画像: 史上4人目のアマチュア優勝を挙げた金谷拓実(写真は2019年の三井住友VISA太平洋マスターズ)

史上4人目のアマチュア優勝を挙げた金谷拓実(写真は2019年の三井住友VISA太平洋マスターズ)

それらに影響されずに、「目の前のワンプレー、ワンプレー」にできる限りの意識を向けることができる「集中力」これがまずは抜けていると思います。そして、最終日は途中でショーン・ノリス選手に逆転されても動揺する様子は顔つきや振る舞いからは感じられずに、後半にもスコアを伸ばしました。「自分のプレーをやり続けることができました」というコメントにもあるように「自分のベストプレー」をやり抜く力、いわゆる“グリット”も持ち合わせているように思います。

さらに、決めれば優勝が決まる最終18番ホールでの「入れることしか考えていなかった」という7メートルのイーグルパット。ここでも最終ホール、優勝という結果をかけたプレーにも関わらず、カップというターゲットだけに没頭する持ち前の集中力を発揮し、カップインを引き寄せ、優勝を成し遂げ渾身のガッツポーズ。ガッツポーズの姿も優勝が前もってイメージできたかのような振る舞いです。

東北福祉大の阿部監督から「優勝してこい」と言われ、さらに自身の中でも優勝のイメージは頭のどこかに、または鮮明にあったのではないかと推測します。もしかすると金谷選手は意識的にまたは無意識的に自分がツアーで優勝する絵を何度もイメージトレーニングしていたのかもしれません。

高いセルフイメージ

さらに優勝後には「今日はリーダーでスタートしたが、自分らしくプレーしようと思っていた。ショーン・ノリス選手はすばらしいプレーをしていた。松山選手にはプロのトーナメントで勝ってこいと言われた。報告ができて、うれしい。松山選手、勝ちました!松山選手は世界トップ。早く同じステージで戦えるよう頑張りたい。」と言葉にしていますがこのコメントからセルフイメージの高さが伺えます。

画像: 金谷自身のセルフイメージは「世界基準」にあると池は分析する(写真は2019年の三井住友VISA太平洋マスターズ)

金谷自身のセルフイメージは「世界基準」にあると池は分析する(写真は2019年の三井住友VISA太平洋マスターズ)

セルフイメージとは「自分はどんなレベルのゴルファーなのか」という自己への認識のことです。「ショーン・ノリス選手はすばらしいプレーをしていた」と他者に目を向ける余裕があること、さらに「松山選手は世界トップ。早く同じステージで戦えるよう頑張りたい。」と優勝会見で語れるということはセルフイメージがすでに「世界基準」にあるように思えます。

確かに、金谷選手は世界アマチュアランキングでトップに立ち、日本アマチュア選手権を史上最年少で制覇。同年「日本オープン」での11位でローアマチュアに輝く年少記録を更新。「アジアパシフィックアマ」を制し、19年「マスターズ」へ出場など数々の実績を持っており、これらの経験も「自分は世界トップを目指すゴルファーにふさわしい」というセルフイメージに繋がっているように思えます。

おそらく、自分への基準を常日頃から世界レベルに置き、日常生活や練習を積み上げているのではないでしょうか。そう考えると、今回の優勝も金谷選手にとってはサプライズではなく、想定内の出来事だったと言えるでしょう。

今回の優勝を機に、益々の注目を浴びる中で金谷選手がどんなメンタルでどんなプレーを見せていくのか、とても楽しみです。

撮影/姉崎正

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