平均飛距離312ヤード(2020年2月10日現在)と、今シーズンも大いに飛ばしているロリー・マキロイ。念願のマスターズ制覇、そしてグランドスラム制覇に向けて視界は良好といえるマキロイのスウィングを、プロゴルファー・中村修が分析した。

スウィング中に働く「3つの力」を効率良く使っている

昨秋開幕したPGAツアーの2019-2020年シーズンは、ZOZOチャンピオンシップで3位タイ、WGC HSBC選手権で優勝、年を開けてファーマーズ・インシュランス オープンでは3位タイと相変わらず好調を維持しているロリー・マキロイ。

画像: 2018-2019年シーズン年間王者、ロリー・マキロイは2020年も好調をキープ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

2018-2019年シーズン年間王者、ロリー・マキロイは2020年も好調をキープ(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

日本開催のZOZOチャンピオンシップで間近に見る機会に恵まれましたが、やはり175センチくらいの体から高弾道でキャリーで300ヤードを飛ばす大迫力のドライバーショットと、正確にコントロールされたアイアンショットが強く印象に残っています。

今回はマキロイの代名詞ともいえるドライバーショットを見てみましょう。

飛距離の源になる柔軟性や筋力など身体能力の高さが抜きんでているのは間違いないのですが、マキロイの場合、スウィング自体も素晴らしいものがあります。

足裏にかかる圧力を計測することで力の方向と強さが確認できるフォースプレートでスウィングを解析すると、飛ばしには3つの力が必要であることがわかっています。

すなわち、水平方向への力(ホライゾンタルフォース)、回転力(トルクフォース)、縦方向の力(バーチカルフォース)です。これらを適正なタイミングで使うことで大きく飛ばすことができるのですが、マキロイの場合、まさしく正しい順序で正しく力を使っていると言えると思います。

まずは画像Aのテークバックから見てみると、左手をややストロングに握るグリップから両腕を伸ばすようにワイドに(手が体から遠くなるように)上げることで、腰回りから背中の筋肉を伸張して、回転力のもとになるエネルギーをためていきます。

画像: 画像A:ややストロングなグリップから、腰回りから背中の筋肉を伸ばすようにテークバック(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像A:ややストロングなグリップから、腰回りから背中の筋肉を伸ばすようにテークバック(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像Bを見ると、トップで肩のラインは90度を越えているのがわかります。深く捻転することにより腰回りや背中の筋肉がしっかりと伸長され、ダウンスウィングでクラブを加速させる十分な助走距離も確保しています。

そして切返しでは背中をターゲットに向けたままスクワットするように踏み込んでいます。わずかですが水平方向への力(ホライゾンタルフォース)が見られます。さらに、スクワットするような動作はこの後の縦方向の力(バーティカルフォース)への伏線となります。水平方向への動きが入ることで手元が動き始め、回転力(トルクフォース)へと移行していきます。

画像: 画像B:深くねじられたトップから、軽くターゲット方向へと踏み込みつつ、スクワットするように切り返す(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像B:深くねじられたトップから、軽くターゲット方向へと踏み込みつつ、スクワットするように切り返す(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像C左のハーフウェイダウンでは、限界まで引き伸ばされたゴムが勢いよく戻るように、腰回りや背中の筋肉が縮む動きを回転力に変え、それにより手元を地面方向へと下ろしています。

そこから切り返しでスクワットしてためた縦方向の力を利用して左サイドを伸ばし、それにより体の左サイドを鋭く回転しクラブを引っ張る力を増大させることで、クラブを一気に加速させています(画像C右)。

このように、切り返しでターゲット方向に踏み込む力(ホライゾンタルフォース)、バックスウィングで目一杯伸ばした筋肉が縮み、体を回転させる力(トルクフォース)、そして切り返しで沈み込み、インパクトでは左脚を伸ばすことでクラブを加速させる縦の力(バーティカルフォース)を順序よく、最大限に使っているからこその、圧倒的飛距離なのです。

画像: 画像C:筋肉が縮む動きを使って体を回転させてクラブを引き下ろし(写真左)、インパクトでは脚を伸ばすことでヘッドを加速させる(写真右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像C:筋肉が縮む動きを使って体を回転させてクラブを引き下ろし(写真左)、インパクトでは脚を伸ばすことでヘッドを加速させる(写真右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

それともう一つ。PGAツアーでは、真っすぐ立って真っすぐ打つのではなく、「左を向いてプッシュアウトを打つ」ことで効率よく飛ばせると言われていますが、マキロイも実践している選手の一人。

これも足裏の圧力を計測したことで解明されたことですが、画像Dのマキロイのインパクトのとき、足裏の圧力は右足のつま先と左足のかかと方向、つまりターゲットに対しては斜め左方向にかかっています。

この足裏の圧力のかかる方向をダイナミックエイミングといいます。マキロイは、ターゲットに対して斜め左に向くダイナミックエイミングに対して、クラブ軌道はターゲットに対してややインサイドからインパクトゾーンに入っています。ふたつの線がターゲット後方でクロスするように振ることが、飛ばしの要素になっているということがわかってきているのです。

みなさんも、右にプッシュアウトしたときに意外なほど飛んでいた記憶はありませんか? ZOZOチャンピオンシップでは、期待の若手選手の一人、マシュー・ウルフも同じようにダイナミックエイミングとクラブ軌道をクロスさせて飛ばしていました。

PGAツアーでは真っすぐ構えて真っすぐ打つという常識にとらわれずに、最新理論に基づいた、もっとも効率のいい方法を重視しているということなのでしょう。

画像: 画像D:足裏の圧はターゲットラインの斜め左方向に向き、実際の出球はターゲットラインより右。それにより飛ばしている(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

画像D:足裏の圧はターゲットラインの斜め左方向に向き、実際の出球はターゲットラインより右。それにより飛ばしている(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 撮影/姉崎正)

マキロイの場合、ドライバーではこのようにダイナミックエイミングとクロスさせるクラブ軌道で振っていますが、正確性を重視するアイアンでは真っすぐ構えて真っすぐ振り抜くことでフェースの開閉をおさえているようです。

ショット力に対してパッティングのスタッツが悪かったことで、成績が安定していなかったようですが、それも改善されてきています。4月のマスターズ、アイルランド代表として出場することが濃厚な東京オリンピックと、マキロイのゴルフから目が離せなくなりそうです。

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