コロナの影響でカリフォルニア州シャーウッドCCで開催される「ZOZOチャンピオンシップ」に出場する松山英樹。世界最高峰のアイアンショットを持つスウィングをプロゴルファー・中村修が注目した。

分厚くて柔軟性に富んだ体幹部のねじれのパワーでスウィングする

新型コロナウイルスの影響で米国開催となったZOZOチャンピオンシップ。会場となるシャーウッドCCはジャック・ニクラス設計で「典型的なニクラスのデザインで、ティショットはオープン(開けている)、セカンドから非常に難しい。いいアイアンショットには報酬がある」とディフェンディングチャンピオンのタイガー・ウッズは試合前の会見で話していました。

タイガーの話からアイアンショットがキーになるコースであることは間違いありません。そして、アイアンショットといえば我らが日本の松山英樹選手です。世界でも屈指の正確かつパワフルなアイアンショットのスウィングを見てみましょう。

画像: ZOZOチャンピオンシップで優勝を目指す松山英樹(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 写真/姉崎正)

ZOZOチャンピオンシップで優勝を目指す松山英樹(写真は2020年のWGCメキシコ選手権 写真/姉崎正)

松山選手の正確なアイアンショットは、安定した強すぎないダウンブローとフェースコントロールにありますが、細かく見てみるとその秘訣が見えてきます。

画像Aのグリップを見ると左手はややウイーク気味に握り右手もかぶせていません。自分なりの握りやすくフェースをコントロールができる握り方で握っています。

右の画像では左腕が地面と平行になる位置で背中や肩がかなり回っていますが、右の股関節にパンツのシワが見えることからも上半身だけでなく下半身も静かですがしっかり動いていることが見て取れます。体の分厚さがよくわかりますが、同時に柔軟性も感じられます。

画像: 画像A:左手はウィークに握り(左)、静かに下半身を使いながら早い段階で背中がターゲットを向く(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像A:左手はウィークに握り(左)、静かに下半身を使いながら早い段階で背中がターゲットを向く(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像Bはトップ(左)から切り返し(右)です。体の回転量に対して腕の運動量はコンパクトで分厚い体幹部のねじれがエネルギーになっていることが感じられます。どっしりとした下半身の力強さに目を奪われると同時に、右写真では体の中心から左サイドへの加重が確認できます。

画像: 画像B トップから左サイドへの加重で切り返しが始まる。分厚い体幹部のねじれがエネルギーの源になっていることが感じられる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像B トップから左サイドへの加重で切り返しが始まる。分厚い体幹部のねじれがエネルギーの源になっていることが感じられる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

そして松山選手の特徴的なシャフトを立てるような縦方向のタメの少ないダウンスウィングに移ります(画像C)。切り返し以降、手元が体から離れるように動くことでダウンスウィングの軌道の半径が大きくなり、入射角もゆるやかになります。

画像右の左手首に注目すると左腕とほぼ一直線でフラットになっています。これは、左腕の向きととフェースの向きが一致していることを示し、これによって方向性を確保しています。左ひざが曲がっていることからも、スウィングの3要素である左への移動、回転力、地面反力のうち、左への移動を少しと回転力を主なエネルギーにしていることがわかります。

画像: 画像C タメが少なくダウンスウィングの半径が大きくゆるやかな入射角が特徴(左)、左手の甲と左腕がフラットになりフェース向きと合致することで方向性を確保する(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像C タメが少なくダウンスウィングの半径が大きくゆるやかな入射角が特徴(左)、左手の甲と左腕がフラットになりフェース向きと合致することで方向性を確保する(右)(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

そして最後、画像Dはインパクトです。ここでは松山選手の特徴である、強烈なヘッド・ビハインド・ザ・ボールが見て取れますね。

画像AからDを通して見ると、スウィング中の軸がズレない非常に安定した回転運動が確認できます。帽子のつばの向きが変わらない、むしろアドレス時よりも後ろを向くような柔軟性には改めて驚かされます。アドレス時よりも頭の位置が決して左に突っ込まないところも見逃せません。このあとは、前傾角をキープしたまま大きなフォローへとつながっていきます。

ラウンド中、ピンを狙うショットではフィニッシュまで振り切らず、おさえたフィニッシュをとる姿をよく目にしますが、手先に頼らない体幹部のねじれをメインのエネルギーとするスウィングをしているからこそ、回転量に応じて縦の距離感も合わせやすいのでしょう。

画像: 画像D 帽子のつばの向きが変わらず柔軟性の高さと回転運動であるスウィングの軸がぶれないことが見て取れる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

画像D 帽子のつばの向きが変わらず柔軟性の高さと回転運動であるスウィングの軸がぶれないことが見て取れる(写真は2020年のファーマーズインシュランスオープン 写真/姉崎正)

この世界最高峰のアイアンショットから真似したい、真似できそうな点は、画像Cの切り返しであごに近づいた左腕(左肩)が右の画像ではあごから離れているところでしょうか。左腕とあごがくっついたままダウンに入ると頭が左に突っ込んでカット軌道やダウンブローが強くなりすぎます。とくに力の入るドライバーショットではスライスや引っかけの原因になります。あごと左腕を離すように意識すると頭が残り回転運動の軸も意識できるはずです。

見ているだけで勇気をもらえる松山英樹選手ならではのプレーを、今週も見せてくれることでしょう。

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