アプローチが苦手な方は打ち方を試行錯誤しがちだが、その前に「フェース面の汚れも気にしてみてください」というのはアプローチの達人・伊澤秀憲。
「フェアウェイから打った時に、ちゃんとコンタクトができていれば、普通はボールはフェースに乗って適切にスピンが入ります。しかし、フェースとボールの間に何か異物が挟まっていた場合は、上手くスピンが掛からないことがあるんです。要するに、打ち方以前の問題でスピンが掛からないことがあるわけですから、まずは、打つ前にフェース面は常に綺麗にしておきましょうということなんです」(伊澤、以下同)
では、スピンに影響を与える「異物」にはどんなものがあるのだろう。一つずつ見ていこう。
「まずは水ですね。フェースとボールとの間に水分が入り込むと、スリップをしてボールのスピン量が減ります。ですから、打つ前にフェースに付いた水分をきちんと拭いておきましょう。あと、特に僕らプロが使うようなノーメッキのウェッジは、水分の付着を放置しておくと錆が浮いてしまったりするので、ショット後に芝から出た水分を拭きとることも忘れないようにしてください」
次にチェックしたいのが芝や泥だ。特に、素振りの後は要注意。
「打つ前にフェースをきれいに拭いたつもりでも、打つ直前に素振りをして芝を擦った後にフェース面に芝が付着していることはよくあります。特にアマチュアの人で素振りでダフる人などは溝に泥や芝が入り込んでしまうことも多いと思います。そのまま打ったり指でサッと払う程度で打ってしまう人が殆どですが、少しの泥や芝一本でも、少なからずスピン量に影響を与えるので、これはしっかり取り除いておきましょう」
溝に入り込んだ泥や芝を取り除くにはブラシが必要だ。ノーキャディの場合はカートに附随のブラシもあるが、伊澤が指摘したように、アマチュアは素振りで大ダフリすることも多いので、自前のブラシを携行するのが良いという。とくに伊澤がオススメするのが金属ブラシだ。
「ブラッシングして芝や砂を取り除く場合、軟らかい毛先のブラシでも除くことはできますけど、より良いのはブラシの軟らかな金属系のもの。これでやった方がフェース表面の細かな異物が確実に取れますし、先ほど言ったように、ノーメッキのウェッジで錆なども綺麗にすることが出来ます」
また、伊澤は溝の汚れを防ぐためにボールにマジックなどでラインを描くことも「できるだけしないようにしている」という。
「フェースにマジックの油分が付着して、スピンにマイナスの影響をすることが気になるんです。だから自分は、ボールにはできるだけマジックを使わないようにしています」
もちろんプレースタイルや使っているボールによってはここまで過剰にスピン量の低下を気にしすぎる必要はない場合もある。「僕らプロは主にスピン系の止まるボールを使っていますからここまでスピン量にこだわりますけど、一般のアマチュアの方で特にディスタンス系のボールを使われている場合は、その球の飛び方での距離感に慣れているわけですから、そこまで神経質にスピンにこだわらなくても良いと思いますよ」と伊澤。
ただし、そんなアマチュアにも一つだけ注意して欲しいことがあるという。
「ラウンド前に練習場に行って球を打った後に、フェース面にボールのカバーのカスが付着していたら要注意です。これも油分が含まれていますし、フェース面の一部分を薄く覆ってしまいボールのスピン量にかなり影響が出るので、次のラウンドの時までには必ず取り除いてください」
なんだかウェッジのキレが良くないなというアマチュアは、伊澤のアドバイスを元にフェース面をキレイに保つことを今まで以上に心がけてみてはどうだろう。
撮影/野村知也
撮影協力/葉山国際カンツリークラブ