14本の中でも、寿命によるクラブ性能の低下が発生しやすいのがウェッジだ。とくにバンカーや深いラフからの脱出にもよく用いられるサンドウェッジなどは、ショット時にどうしてもフェースとボールの間に砂や土が挟まり、フェース面にかかる負荷も大きくなりがち。すると、ボールを捉えてスピンを効かせるための要であるフェース面の溝が摩耗。結果、スピン性能の低下につながりやすいのだ。
もちろんプレー頻度や内容でもそのペースは変わってくるが、プロの場合はなんと「月イチで買い替えている」というのは、ショートゲームの達人・伊澤秀憲。
「ウェッジは、できれば一か月くらいで替えるに越したことはないと思っています。練習場で球を100発打つとして、僕の場合7~8割はウェッジを打ちますから溝の摩耗度は一般のアマチュアの方とは比べ物になりません。使うウェッジも軟鉄のノーメッキですから摩耗の度合いも激しいし、そもそもウェッジはラウンド中に一番使うクラブですから、どうしても溝の減り方は早くなりますね」(伊澤)
もちろん人並み以上の練習量、ラウンド回数をこなすプロだからこそフェース溝の摩耗も急激なのであって、月イチでの買い替えは大多数のアマチュアにとっては過剰すぎるだろう。しかし、買い替えのコストがもったいないからと溝の擦り減ったウェッジを続けていると、アプローチで十全な結果を得られない可能性は高まってしまうと伊澤は言う。
ではアマチュアはどのくらいの頻度で買い替えるのがベターなのか。先に述べた通りプレー頻度やその内容、もちろんショット後こまめにフェース溝を掃除しているかなど、様々な要因で変動することを前提としつつ、伊澤は「月2回のラウンド、練習場での球打ちが週1のアマチュアゴルファーでも1年のサイクルで買い替えはしてほしいです」と語る。
ただ、仕事としてゴルフをするプロと違い、アマチュアのプレー頻度はその時々によって変わるもの。また、懐事情を考えても何か「今がまさに替え時!」と判断できる要素があれば良いのだが……。
「溝の擦り減り具合は見た目であからさまに分かることはないですが、買い替え判断の目安はあります。アプローチでフェースに『ボールが乗る』という感覚があるんですが、このライからこの打ち方をしていたら間違いなく『乗る』という状況でもそういった感覚が伝わってこない、といったことが少しずつ出てくるんです」
そういった、フェースにボールが乗ることもあれば、乗らずにすっぽ抜けてしまうこともある端境期こそがまさにウェッジの替え時なのだという。
とはいえ多くのアマチュアにとっては“ボールが乗らない”状態も道具の影響なのか技術面に原因があるのかが判断しづらいところ。そんなアマチュアにもボールがフェースに乗る感覚が分かりやすい打ち方が「インサイドアウト軌道でドロー回転をかけるアプローチ」だと伊澤。
「多くの方はハンドファーストに構え、ヘッドの軌道が一直線になるようなイメージでカット目に打つアプローチをされていると思いますが、インサイドアウト軌道でドロー回転をかける場合は、普段通りハンドファーストに構えたら、体の回転に合わせてヘッドが弧を描くような軌道になることを意識して打ってみてください。フェースをスウィングの中で左側へ閉じながら、ヘッドをアウトサイドへ出していくイメージですね」
意図的にドロー回転をかけていくことでボールが乗る感覚もよりわかりやすくなり、アプローチの引き出しも一つ増えるというわけ。具体的には「ドロー回転をかけるとファーストバウンドでボールが前に転がりやすいアプローチになります。エッジから離れたピン位置に対して寄せていく際に効果的ですよ。キャリー5:ラン5のイメージです」と伊澤。
スウィングの中でフェースを閉じていきドローをかけるイメージが湧きづらいのなら「アドレスの段階でフェースを少し閉じて構え、その状態をキープしながらヘッドをアウトサイドへ振ってみる」のもオススメだという。
ウェッジの替え時を正しく判断する、そしてアプローチの引き出しを増やすためにも「アプローチでボールが乗りやすい打ち方を、普段から一つ持っておくことが大事だと思います」と伊澤。次の練習やラウンドの際に、ウェッジの寿命の確認がてら試してみてはどうだろう。
撮影/野村知也 撮影協力/葉山国際カンツリークラブ