「痛めた右足をかばって、スウィングがおかしくなった」(大堀)
時松 大堀さんは今年、復帰したレギュラーツアーで活躍されていますが、昨年は何がよかったんですか?
大堀 足が治って、まったくストレスなくゴルフができたというのが大きいかな。
時松 足はどんな状態で?
大堀 2018年に、オフトレを兼ねてやっていたスキーで右足首を捻挫して。軽く考えて試合に出続けていたら”ネズミ”と言われる小さな骨がいっぱい出てくる症状が出始めた。小さい骨同士が当たるときはすごく痛いんだけど、普通にプレーできるときもある状態だったので、18年はシードも獲れたんだよね。
時松 18年の賞金ランクは43位でした。その後は?
大堀 元々、体重移動をして打つタイプだったんだけど、シーズン途中から痛くて右に体重が乗せられなくなってきて。そのときに、ちょうど1軸スウィングが流行っていたから、体の捻転でやってみると何とかできてはいたんだ。
時松 右足は痛いまま……。
大堀 痛みで次第にかばうようになり、それでスウィングがおかしくなって19年はシード落ち。2020年の特別QTにも出たけど足が痛すぎて途中棄権。それでもう無理だと思って20年の冬に手術したんです。
時松 手術は大変でしたか。
大堀 複雑骨折レベルの手術で、1週間くらい入院して、その後2カ月くらい足にギプスをして、ゴルフができなかったのは4カ月くらい。
「しっかり筋肉痛が残るくらいウェイトをするようにしている」(大堀)
時松 でもその1年後に始まる2022年のABEMAツアーで賞金王です。何か特別なことをしました?
大堀 特別なことではないけど、昨年ABEMAツアーに出ているときは試合が金曜日に終わるので、土日にウェイトトレーニングをするようになって、それがよかったと思う。
時松 試合翌日にウェイトを2日連続ってキツくないすか。
大堀 調子を見ながら1日だけのこともある。でも週明けにしっかり筋肉痛が残るくらいウェイトをするようにしている。筋肉痛が残った状態でゴルフをすると、よい力の抜け具合でできる感覚があるから。
時松 スウィング面もよい効果があるわけですか。
大堀 緊張して力んだときに力の抜き方がわかるようになったというか、それで打ち急ぎがなくなったかな。
時松 重いウェイトを持ち上げたら、力の抜き方が分かるようになる!
大堀 源ちゃんはバックスウィングからトップですごく”間”が取れているよね。どうすればの”間”ができるのだろうと思っていたんだけど。そんなときにウェイトトレーニングでめちゃくちゃ筋肉痛のままゴルフをしたら上手く当たらなくて、意識して”当てに”いこうとしても動かなくて。それで、「これって逆にトップで"間"ができるようなスウィングを作るにはいいんじゃないかな」と思ったんだよね。
時松 確かに、筋肉が痛いから、自分で打ちに行くような余計な動きはしなくなるというかできなくなりますよね。それで気持ちのよいところにしかクラブが上がって下りてこないスウィングになるので、自然にトップでも"間"が生まれたということなんですかね。
大堀 そうだと思う。
時松 トレーニングはどんなメニューですか?
大堀 基本のスクワット、ベンチプレス、デッドリフトのビッグ3。あとメディシンボールを放り投げるトレーニングはゴルフの動きに通じるのでよいと思います。ところで源ちゃんはウェイトトレーニングは?
時松 平均すると10日に1回くらいです。筋肉痛が残るので試合中にはあんまりやりたくないというのがあるんですよ。
「女子プロは常に同じ動きをするから、勉強になる」(大堀)
大堀 オフはガッツリ?
時松 実は、トレーニングというより、イベントです(笑)。でも今、You Tubeの企画で女子プロと回らせていただくので、いろんな女子プロの球を見られるので参考になります。
大堀 オッサンやん(笑)。でも女子プロは常に同じ動きをするから、勉強になるよね。
時松 そうなんです。女子プロは、ローボールとか、ちょっと右から回してとか、そういうのがない。僕なんかやたら曲げてピンにつけようとするけど、女子のゴルフを見ていて、余計なことをせずにもっとシンプルにやったほうがいいんじゃないかなと、気づかされることがあるんですよ。
大堀 トレーニングの筋肉痛で余計な動きが封じられ、シンプルに動けるようになったのと同じ効果を女子プロとのYouTubeで得られたということだね(笑)。
時松 絶妙なフォロー、ありがとうございます。
TEXT/ Masaaki Furuya
※週刊ゴルフダイジェスト2023年6月20日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より