アメリカのキャディ経験とラウンド経験から学んだこと
時松 20年冬に右足首の「ネズミ手術」(砕けた細かな骨を除去する手術)をした後は、どうされたんですか。
大堀 手術後約4カ月は、痛みが残ってゴルフをできない時期があり、暖かいところに行きたいなと思っていたら、以前から大阪に共通の友人がいた小平(智)さんから「じゃあ、アメリカに来いよ」って誘ってもらって。それで21年3月に小平さんのフロリダの家に泊まらせてもらったんだ。
時松 向こうでは、どんな生活だったんですか。
大堀 小平さんの家はめちゃ広くて、隣接しているゴルフ場は無料でラウンドできるんです。それで僕も毎日、練習し放題の環境でずっとやらせてもらった。僕は日本のプロなのにすごく歓待してくれて。アメリカのプロゴルファーに対するホスピタリティの高さを感じた。
時松 確かに、プロに対する対応はすごくいいですよね。
大堀 日本のPGAプレーヤーズカードがあれば、アメリカでも優遇してくれるんだよね。アメリカのPGAのプレーヤーズカードを持っていたらほぼ何処でも回れるらしいし。日本ならまだそこまではない。
時松 21年3月、小平さんのキャディをされたんですよね。
大堀 うん。アメリカ滞在の最後に、ホンダクラシックで担がせてもらった。間近で見て、選手のレベルが違うと感じた。開催コースのPGAナショナルはすごく難しくて、それでむちゃくちゃ風が吹くコンディションだったけど、それでも7アンダーとかで回ってくる選手が普通にいるしね。
時松 何が違うって感じですか。
大堀 飛距離が一番違うんだけど、ショートゲームも含めて下手な選手がいない。すべてのレベルが高いという感じ。
時松 僕も18年に数試合、アメリカでプレーをしたんですけど、地面が軟らかくて球が転がらないので、セカンドが200ヤードくらい残る。ボギーを打たないようにしのぐホールがすごく多かったです。全米プロで回ったべルリーフは、完全にドライバーはキャリー勝負みたいな感じになるので、しんどかったです。だからアメリカは、ティーショットで300ヤード飛んで、やっとゴルフプランが立てられるようなコースが多い印象なんですけど、どうでしたか。
大堀 僕がキャディさせてもらったPGAナショナルも完全にそういうコースだった。ドライバーのキャリーが300ヤード飛ぶと飛ばないとでは狙う方向すら違う。途中に池があるパー5では、300ヤード飛ぶ選手はドーンと真っすぐ打っていけるけど、280~290ヤードの選手は、迂回して打たないとダメという感じ。
迫力のあるスウィングより余計なことをしなスウィングのほうがいい!?
時松 あの世界でやっていくとしたら、300ヤード以上飛ばすロングヒッターを目指すか、200ヤードくらいの距離を1ピンに付ける精度を磨くか、いずれを選ぶかしかないですよね。僕なんかは、ケビン・ナとかザック・ジョンソンみたいに、精度を磨くほうを目指すしかないと思います。
大堀 小平さんと同組がスティーブ・ストリッカーだったんだけど、彼はまさにそういうタイプだよね。もちろんパターは定評あるから上手いんだけど、それ以外もめちゃ上手い。もちろんストリッカーも300ヤード以上飛ぶ。小平さんより前に行ったりしていたから。
時松 マジすか。全然、迫力のあるスウィングじゃないですけれどね。
大堀 そう。ストリッカーって、アゲンストが吹いたらクラブの番手を上げてスウィングは何も変えずにポーンと打つ感じのプレーヤーなんだよね。
時松 完全ボディターンって感じですよね。
大掘 そう。マジで余計なことをしないスウィング。だから飛距離だけに頼らずに活躍できるんだと思う。
時松 僕なんかは、カッコつけすぎなのかもしれないです。
大堀 え、源ちゃん、カッコつけてるの?(笑)
時松 なんかローフェードで置きにいくとか、そういう要らんことをするという意味のカッコつけなんですけど。
大堀 確かに。でも攻略するためにいろんなことをしないとあかんもんね。
時松 小平さんから教わったことは何ですか?
大堀 技術的なことも教えてくれたけど、ゴルフに対する考え方や取り組み方といったことを教わりました。遊ぶときは遊ぶし、ゴルフに向き合うときは真剣に取り組むという姿勢。僕がケガから立ち直ろうとしているとき、「とりあえずここからは上がるだけだから、頑張ろうぜ」って言ってくれた。
時松 めっちゃいいアドバイスですね。素晴らしいです。
TEXT/ Masaaki Furuya
※週刊ゴルフダイジェスト2023年7月4日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より