「『東北福祉』を倒して日本一になろうとずっとやっていた」(大堀)
時松 大堀さんは大阪学院大学ですよね。僕、高校卒業前に見学させていただいたんですけど、結局、すぐプロになったんです。大学に行かれてどうでしたか。
大堀 ゴルフ以外のことも含めていろいろ覚えられるし、社会人として大事な経験とかも得られるけど、そのまま踏み外す場合もあるなあ。高校時代上手かったのが大学行って全然あかんかった選手は山ほどいるから。
時松 踏み外す原因は、やっぱり遊びですか。
大堀 そっちに走る人もいる。だって車の免許を取れて、お酒を飲める年齢にもなるから。いきなりプロの世界に入った源ちゃん(時松のあだ名)はどうだった?
時松 北九州オープンとか試合のときに飲みに行ったり、少しパチンコを教えてもらうなどはしましたけど、競馬・競艇まではしきらんかったです。覚えておいたほうがよかったのかな(笑)。
大堀 確かに僕はそのときにそれなりに経験したから別にプロになってからハマることもなかったので、その点はよかった(笑)。
時松 絶対に大学生活はプラスになっているとは思います。ないものねだりですけど、行ったほうが楽しかっただろうなと。ゴルフに関しても団体戦など楽しそうでしたよね。
大堀 団体戦は楽しいし、勝っても負けても感動があって泣く。
時松 個人プレーはそういうのがないですもんね。
大堀 僕はキャプテンで、ホンマに「東北福祉」を倒して日本一になろうとずっとやっていた。
時松 福祉大は強かったですか。
大堀 僕が1、2年の頃は松山英樹と藤本佳則さんの2人が66とかで回ってくるし、団体戦では(池田)勇太さんがやって来て、臨時コーチでコースマネジメントとかを教えるのよ。そら勝てないって。
時松 勇太さんの「圧」だけで勝てそうにないです(笑)。大堀さんは大学までずっと関西ですが、コースの特徴はどんなですか。
「攻めのセンター狙い」と「守りのセンター狙い」の違いとは?
大堀 まず狭い。狭くても関東みたいな林間コースの狭さだったらまだいいんだけど、関西のコースは狭くてOBが出るコースが多いからティーショットは球が低くなるよね。
時松 関東で育ったプロは飛距離が出て、関西で育ったプロは小技が得意だと。今後世界を見据えてのことも含めて、どういった課題を持っていますか。
大堀 セカンドショットの精度を上げること、つまりパーオン率を上げるということだね。
時松 パーオン率を上げるには、どうしたらいいと考えてますか。
大堀 いや、(今平)周吾とか源ちゃんがやっていることだよ。具体的には「守りのセンター狙い」じゃなく「攻めのセンター狙い」をするということです。
時松 僕はわかりませんが、「攻めのセンター狙い」というのは(片山)晋呉さんの攻め方を見ているとわかります。たとえば、右ピンのときにドローがかかってグリーンセンターに飛んでいったら、「ガマン!」と声出す人は多いけど、晋呉さんは逆にクラブをクルクルって回してOKみたいな感じで見ているので、「あぁ最初からピン狙ってないんだ」と。予選ラウンドで晋呉さんは、そういう感じでほぼグリーンの真ん中に打ってきます。
大堀 そうなんだよね。そういうピン位置に応じてセンターに打つというのが「攻めのセンター狙い」なら、とりあえずセンターに乗せておくかという「守りのセンター狙い」とでは結果が違ってくる。もちろん、最終日などで優勝争いに絡んでいたりした場合、状況に応じてピンを攻めることはあるけれど、予選の2日間とかは、無理には攻めない。そういう攻め方の組み立てを、長年、賞金ランクトップで居続けている選手は無意識にできている。源ちゃんもそうでしょ。
時松 確かにパーオン率は意識しますよね。僕はこれまでパーオンが70%台にいったことがないですが、60%台と70%台ではスコアに違いが出る。70%になるとパッティングの数が変わってきます。3回バーディパット打つのと、5回バーディパットを打つのでは、確率でいうと当然、5回のほうがバーディを取れる可能性は上がります。
大堀 そうだよね。源ちゃんはチップインも多いけど。
時松 もちろん外からのチップインなどもありますけど、やっぱりゴルフはパーオンしたほうが絶対に楽になる。考えることが減るから。1年間、戦っていくなかでトータル的なストレスでみたらパーオン率が高い人のほうがリラックスできている時間は長いかなとは思います。結局、「余計なことをしない」ということがゴルフでは大事という話になるわけですけど。
大堀 でも、いらんことをさせられるようなコースが日本って多いから。基本的に狭いしね。
時松 その意味でも、大堀さんが言われたセカンドショットの精度を上げるための「攻めのセンター狙い」という組み立て方は大変参考になりました。
TEXT/ Masaaki Furuya
※週刊ゴルフダイジェスト2023年7月18日号「時松プロ ご指名プロと技トーク わかったなんて言えません」より