滋賀県・琵琶湖CCは「自然共生型ゴルフ場を目指す」と宣言
滋賀県の琵琶湖CCは、2021年の日本オープン開催前の記者会見で「自然共生型ゴルフ場を目指す」と表明。以来、カーボンニュートラルに取り組んでいる。関連会社のヤンマーエネルギーシステムと共同で、太陽光発電による電力を蓄電するリチウムイオン蓄電池、エネルギーマネジメントシステム、木質バイオマスボイラー、LPGを使用する熱電供給システムを導入。以前の、CO2年間排出約800トンから現在は年間500トンと約300トンのCO2削減を実現している。さらに184トンぶんはJクレジット(省エネ設備の導入や再生可能エネルギー利用によるCO2等の排出削減量と適切な森林管理によるCO2等の吸収量を国が「クレジット」として認証する制度)を購入している。
廃プラスチックの問題では、マーカーを木質に替え、スコアカード用のミニえんぴつを導入。「珍しいね、いいね、と木のマーカーは来場者に評価が高いです。今は、グリーンだけでなく、大量に出るラフやフェアウェイ芝の刈粕をどのように土に戻すのかを課題にしています」。芝などの刈粕とレストランの食料廃棄物でたい肥を作り、樹木に使用して土壌中に炭素を貯留し、CO2削減を図る試みをしている。「経費は必要ですが、今後も積極的に取り組んでいきます」(横田潤一郎支配人)。
六甲国際GCのバイオマスボイラー、アダム・スコットと宮里藍が見学に訪れた
毎年、女子ツアーのサントリーレディスを開催している兵庫県の六甲国際GCでも、脱炭素に向けた取り組みを実行している。再エネ事業者のシン・エナジーと提携し、2022年に重油からバイオマス資源のボイラーに転換し、使用電力の一部は太陽光発電によって自家消費をしている。「脱炭素エネルギーとコスト削減のための取り組みです」と加藤敏常務取締役。
2019年には約500万円の燃料コストがかかっていたが、今は年間約100万円弱まで大幅にコストダウン。年間約840トンあったCO2排出量は、バイオマスボイラーに替えたことで約220トンのCO2排出量を削減することができた。バイオマスボイラーの見学に訪れる企業も多く、小学校の校外学習での見学にも一役買っている。「アダム・スコット選手や宮里藍さんも見学に来たんです。環境問題に関心がある方には興味を持っていただけるのですね。これからもより視野を広げたSDGsの推進をしていきます」
リソルグループの3コースでは脱炭素エネルギーの発電量を見える化
国内17コースを運営(1コースは提携)するリソルグループでは、リソル総合研究所が監修して、スパ&Gリゾート久慈(茨城)、中京GC石野C(愛知)、瀬戸内Gリゾート(広島)で、環境省の補助金を活用し、駐車場にソーラーカーポート(太陽光発電設備を搭載したカーポート)を設置。クラブハウスへ送電することで脱炭素エネルギーの活用を推進している。同研究所の湯田幸樹取締役会長によると、「脱炭素の取り組みです。変動幅が大きい電気料金の対策、利用者の快適性向上にもつながっています」
「再生可能エネルギーの発電量をクラブハウスのモニターで見ることができるので、脱炭素の意識が上がり、利用者からも環境にやさしい取り組みとして評価されています」。今後は、全ゴルフ場への導入を検討していく。「補助金がなくても導入メリットが得られるよう建設コストの削減についてカーポートの製造会社や建設会社と協議中です」
兵庫県・宝塚GCでは“蛍鑑賞の夕べ”。これもSGDsのひとつ
宝塚GCでは、宝塚市と一緒に「蛍観賞の夕べ」を行っている。「きっかけは、平成元年に市の外郭団体である自然を守る会の方が個人的にコースにいらして、コース内の川で蛍の餌となる貝がいるかどうか調べたいと。するとけっこういたんですね。『夜には蛍が出ているはずです。ぜひ、入らせてください』と。すると、本当に蛍が飛んでいたんです。そこでイベント化して市民の方に見ていただけるようにしました」と同倶楽部の小堂剛裕支配人。コロナ禍前は120~130人が来場したこともある。今年の6月、久しぶりに開催した。
「今年は70名がいらっしゃいました。ゴルフ場には駐車場設備がありますから、気軽に来てサッと見て帰れますよね。地域貢献にもつながりますし、メンバーの方やご家族にはレストランで食事をしていただくことで、普段ゴルフをされないご家族にも倶楽部のことを見ていただくよい機会にもなります」。専門家の話では、蛍は、山奥の原生林には出現せず、町中の田んぼに出るのだという。「草刈りなどの環境整備が大事なようです。ゴルフ場の農薬に関する意識も変わりました。蛍が証明してくれていますから(笑)。皆様に喜んでいただいていますから、今後も続けていきたいですね」
脱炭素、脱プラ、地域貢献を中心に進むゴルフ場のSDGs。今後も、その進捗をレポートしていく予定。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年8月22 29日合併号より