最終組の1組前でプレーしていたシンは通算14アンダーでホールアウトし、リーダーボードを確認した。すると、ついさっきまでトップを走っていたはずのP・ゴイドスが突如ボードから消えていた。「あれ? と自分の目を疑った」とシン。
最終組の17番で、後続を1打リードしていたゴイドス。パー3のティーショットをグリーンに乗せ、6メートルのバーディチャンスにつけたのだが、バーディパットがカップを1メートルオーバー。パーセーブして最終ホールに向かう、と誰も思っていたが、そこから信じられないことが起こる。1メートルのパーパット、ボギーパット、ダブルボギーパットと3回連続でカップに蹴られ、1オン5パットのトリプルボギー。茫然自失の本人。優勝争いをしている好調な選手が1メートルを4パットするとは……。
解説のラニー・ワドキンスも「目を覆いたくなる。確実に1メートルを沈めてパーで切り抜けると思ったのに」と言葉を失った。上がり2ホールをパーでクリアすればシンを1打抑え、2017年の3M選手権以来となる6年ぶりのツアー6勝目が手に入るはずだったが、勝ったシンさえ「ショックだ」と同情する悪夢のような出来事だった。
ところで開催コースのワーウィックヒルズG&CCは、かつてレギュラーツアーのビュイックオープンの舞台だった。シンはその大会で3度(1997年、2004年、2005年)優勝を飾っており、今回が4度目の勝利。
「このコースではなぜかドライバーが思ったところに飛んでくれる。ドライバーとパットが噛み合って勝ってきたけれど、今回も少し前まで悪かったパットが機能してくれた」と相性の良さを強調。「最近、自分のゴルフが戻りつつある」とタイガーの全盛期に世界ランク1位に輝いた実力者。次回は相手のミスによる“棚ぼたではない”完璧な優勝を目指すつもりだ。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月19日号より