ビクトル・ホブランのツアー選手権での勝利は躍進シーズンのフィナーレを飾るにふさわしいものでした。飽くなき向上心と自らへの挑戦の賜物です。その一端を垣間見るエピソードをPINGのフィッティング&パフォーマンス担当のマーティ・ジャートソン氏が語ってくれました。
今年5月の全米プロ3日目、最終組ひとつ前のホブランがティーオフする90分ほど前のこと。大事なラウンドの直前に、コーチのジョー・メイヨからPINGのジャートソン氏へ電話がかかってきたことに驚いたそうですが、さらに驚いたのはホブラン本人が話し始めたからです。
選手として最も重要なラウンドのひとつ、メジャーのムービングデーに、ホブランにはどうしても解明しなければならない問題がありました。舞台のオークヒルゴルフクラブは雨天。雨がクラブのスピン量や摩擦にどんな影響があるのかをクラブの担当者に直接尋ねるために、決戦の直前に電話をしてきたのです。
ジャートソン氏はおよそ5分間、苛酷な状況で起こり得る科学的分析をホブランに伝えました。そしてこう言うのです。「彼のなかでは常に ‟なぜ?” が渦巻いています。エンジニアが5回なぜを追求して新たな扉を開くように、ホブランは追求の手を緩めません」。
上手くなるためには、どんな方法も取り入れるのがホブランの流儀。マイナーなレッスンプロが配信するかなりディープなYouTubeからスウィングのヒントを得たり、試合中にユニークなドリルを取り入れたり。データ分析の専門家を雇うことも厭いません。少し前には、長尺ドライバーでのスピードトレーニングに没頭。ケガを心配したチームの面々が必死にそれをやめさせるといったこともありました。
「僕は分析的な人間で新しいことを試すのが大好き。だって楽しいから」とホブラン。「ドアの向こうに何があるかわからない。上達の可能性があるなら、うさぎの穴がどこに繋がっているか、いつも突き止めたいんです」。残念ながら全米プロではブルックス・ケプカに敗れ2位に終わりましたが、その経験を糧にプレーオフシリーズのクライマックスで2連勝という偉業を成し遂げました。次回、さらにホブランの探求心エピソードを掘り下げます。
※PGAツアーはBSJapanext( BS放送)で毎週LIVE中継が見られます。※週刊ゴルフダイジェスト2023年9月19日号より(ARRANGE/Mika Kawano、PHOTO/Getty Images)