昨年4月に、筑波大学社会人大学院のリハビリテーション科学学位を専攻する‟女子大生”になった週刊ゴルフダイジェスト編集部Y。健康障害学特論では、老年学を学び、ゴルフのメリット、ゴルフとのつながりを深く考えるのだった。その第6回、リハビリ学は障害者だけのもじゃない。

私はゴルフ雑誌の編集者です。だから、ゴルフの魅力をいつも考えたり探したりしている。大学院の授業を受けるときも、レポートを書くときも、ついついゴルフに結び付けてしまう。いや、結びつけるようにしている。ゴルフしない人にとっては「?」が付くかもしれないが、何よりゴルフは金持ちの道楽だと思っている人にこそ、じわじわ伝えていきたいのだ。

健康と要介護の中間状態を“フレイル”と呼ぶ

それは、私が学ぶ大学の先生方へもしかり。ゴルフをしない方が多く、なかなか難しいのだけれど…しつこさを武器に「ゴルフ伝道者」となっているつもりだ。さて、「フレイル」という言葉を最近耳にした方も多いのではないか。2014年に日本老年学医学会が提唱した概念で、健康な状態と要介護状態の中間に位置し、身体的機能や認知機能の低下が見られる状態のこと。適切な治療や予防を行うことで要介護状態に進まずにすむ可能性があるという。

ここで1つ。研究者の話を聞いていると、まず事象の「概念」をしっかり定義する。これは研究においては必須であり、これがないと、ゴルフでいうと「軸」がないようなもので、スウィングがブレたり、ミスショットになったり……とにかく、とっ散らかる。

話を戻す。近年、平均寿命ではなく健康寿命を伸ばすことの重要性が言われているが(健康寿命は2000年にWHОが提唱した概念で「平均寿命から日常的・継続的な医療・介護に依存して生きる期間を除いた期間」のこと)、このためにゴルフを活用できると常々思っていた。

要介護状態に向かわぬよう、さまざな角度からのフレイル対策が必要だが、それは運動機能が低下する「身体的フレイル」だけではなく、うつや認知機能、閉じこもり、につながる「社会的フレイル」に対しても同様。

ここでゴルフの“登場”だ。ゴルフは老若男女が楽しめるスポーツで、自然のなかで、歩き、体をひねり、考え、また人とコミュニケーションしながらラウンドする。フレイル対策に成り得ると思うのだ。介護予防を行う上で3つの習慣とすべき要素は、社会参加、中強度運動、乳製品摂取だという。これらを取り入れるためにも、よいライフスタイルにすることが大切。まずはベースとして大事なことは規則正しい生活だという。このため、1日のなかに1つの軸を持つとよいそうだ。上記3つの要素に関わる「好きなこと」を起点に考えるとわかりやすい。

提案したい“筋トレ”と“乳製品”と“ゴルフ”の3本柱

たとえば週3回、好きなゴルフに行くことが軸になれば、それに合わせた起床、食事、就寝ができ、ゴルフそのものは中強度運動となり、行かない日でも自宅で筋トレなどを行える。ゴルフに行く日の朝は必ずヨーグルトを食べる、などと決めてしまえば乳製品は摂取でき、そのうち習慣化できるはず。そして、ラウンドでも練習でも、仲間とコミュニケーションを取りながら楽しむことこそが「社会参加」と言えるのではないか。

自分の年齢以下のスコアでラウンドすることを「エージシュート」と言いシニアゴルファーの1つの目標になっているが、年齢を重ねるごとに出せそうなスコアとの分岐点が近づく。目標があることでやる気が出て、健康のために努力し、蓄財や計画性を持てる。ゴルフダイジェストの読者は、「ゴルフが好き」という共通点がある。介護予防の必要性と効果を説明するときに、ゴルフを軸とし、介護予防の3要素を入れたライフスタイルをもっと伝えられたらいいなあと思う。

そもそも規則正しい生活は私自身も実現できているとは言い難い。若い頃からの準備や習慣化は必要だと思うので、若い読者にも知っていてもらいたい。また、高齢者の社会参加対策として、厚生労働省も推進する「通いの場」に力を入れている自治体は多い。地域の住民同士が気軽に集い、一緒に活動内容を企画し、ふれあいを通して「生きがいづくり」「仲間づくり」の輪を広げる場所だ。ただ、男性の参加者が全国的に少ないそうだ。

「ゴルフ場」を「通いの場」にして、ゴルファーはもちろん、地元の高齢者だけでなく、すべての年齢層に足を運んでいただく日を作るのはどうだろう。ゴルフではなく、コースを使ったウォーキングと組み合わせて行うのもいいかもしれない。SDGsなどの取り組みで、地域との交流を課題に置いているゴルフ場も増えているし、若い頃からの準備や習慣化は必要だということを知らせる場にもなるのかもしれない。どこかのゴルフ場さんと一緒に何かできればいいなあと本気で考えてます。

画像: 以前取材した小林良子さんは93歳(取材時・中央)。「勝負はグリーン上」と颯爽と歩き、定期的に筋トレも行う。「ゴルフ場ではいつも華やかな装いでね。あなたも筋トレしたほうがいいわよ」と記者本人にも‟人生指南”(PHOTO/Yasuo Masuda)

以前取材した小林良子さんは93歳(取材時・中央)。「勝負はグリーン上」と颯爽と歩き、定期的に筋トレも行う。「ゴルフ場ではいつも華やかな装いでね。あなたも筋トレしたほうがいいわよ」と記者本人にも‟人生指南”(PHOTO/Yasuo Masuda)

今回、最後の話題として書きたいのは「転倒」について。たかが転倒、されど転倒なのだ。転倒という事象だけにとどまらず、それが恐怖心を生み、引きこもり、栄養不良になるという悪循環ができてしまうと、要介護者の増加につながる。誰にでも起こることだと認識し、細かいケアのための研究と対策の必要性がわかった。米国・英国には、太極拳に効果がみられるエビデンスがある。では、ゴルフはどうか。高難度のバランス運動でありウォーキングも含まれる。 この観点からも「転倒」との関連性を研究する価値はあるかもしれない。

私自身も、“女エージシューター”を今から目指そうか。自分の健康増進だけでなく、自分のチャレンジを広めることで社会的な役割も果たせるかもしれない。そのためには、規則正しい生活が大事……まずは、お酒を控えるところからでしょうか(泣)。「老年学」とゴルフとのさらなるつながりについて、次回「医学リハビリテーション」の授業内容に続く――。

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