たくましい、頼もしい日本人選手が出現!
9月のカズーフランスオープンで、欧州ツアー初優勝を飾った久常涼選手。日本人の欧州ツアー優勝は青木功さん、松山(英樹)くんに次ぐ3人目の快挙です。
友利(勝良)さんを皮切りに、ボク、手嶋(多一)さん、谷原(秀人)、(宮里)優作、川村(昌弘)……らが欧州ツアーに挑戦、「いつか日本人が勝つ日が来るんだろうな」と思っていましたが、正直、その快挙を21歳になったばかりの久常くんがやってくれるとは。
欧州ツアーは日本では中継がありません。それでも最終日はインターネットで順位を確認していたのですが、2打リードで迎えた18番。「ボギーでいいぞ、ダボだけは叩くな」と祈りながらの観戦(?)でしたが、難なくクリアしたようでX(旧ツイッター)で結果を知り、本当に嬉しい気持ちでしたね。
カズーフランスオープンは今年、105回を数える伝統のナショナルオープン。その優勝トロフィにはウォルター・へーゲン、バイロン・ネルソン、セベ・バレステロス、グレッグ・ノーマン、ニック・ファルド、ベルンハルト・ランガー、ホセ・マリア・オラサバル……といったレジェンドたちの名前が。そこに並んで日本の21歳の若者の名が刻まれたのです。日本で報道されている以上の快挙だとボクは思っています。
前回、この連載で久常くんを紹介したとき、昨年予選落ちした日本オープンのクラブハウス内での話をしました。「これが日本で最後(の試合)になるかもしれません」との言葉を残し、欧州ツアーのQTへと旅立って行った久常くんの姿を。普通、予選落ちした選手の表情や発言には、どこかネガティブな空気がにじみ出るものですが、彼にはそれが一切なく、未来しか見ていない若者の姿が、まぶしく映ったものです。
欧州ツアーは豪州やアフリカを会場に始まりますが、欧州大陸に戻ってからが厳しい戦いになり、初めて挑戦する多くの選手はここで苦戦します。雨、風といった厳しい天候に加え、それでも予選通過ラインが下がってきません。ところが久常くんの場合、いいスタートダッシュを切ったものの、4月の日本(ISPS)、韓国と連続予選落ちで、調子が悪いのかと少し心配していました。
それが5月のイタリアでの試合から徐々に本領を発揮するとシード権をほぼ手中にし、そして9月の初優勝。ルーキー・オブ・ザ・イヤーの候補に名前が上がると同時に、上位10人に与えられるPGAのカードもかなり現実的になってきました。
昨年の日本オープンから1年。まさに有言実行、あのときの言葉を現実のものとしたのです。そのフットワークの軽さだけでなく、優勝後にはたどたどしいながら通訳なしで英語でインタビューに応じる姿を見ても。すべてが世界基準で、たくましい、頼もしい日本人選手の出現です。
会場となったル・ゴルフナショナルは、来年のパリオリンピックの会場です。現時点の世界ランキングで日本人2位につける久常くん。大それたことをいとも簡単にやってのけるだけに、オリンピック出場、もしやメダル獲得も?といった可能性を感じさせる選手でもあります。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月27日号「うの目 たかの目 さとうの目」より