ひと昔前は、「ウェッジは飛距離よりも前後左右の正確性。そのブレを減らすため、ウェッジのシャフトは、アイアンよりも硬め」というのが定説のひとつだった。
しかし現在、スコッティー・シェフラーは、テーラーメイドP7 TWのアイアンのシャフトにX100を挿しているが、3本のボーケイデザインSM8のフレックスはS400。今年の全米プロチャンピオンのブルックス・ケプカは、スリクソンのアイアンZX7 MkⅡはX100なのに対して、4本のクリーブランドRTXウェッジはS400といった具合。
ジョーダン・スピースのシャフトはアイアン、ウェッジともに元調子で重めのPROJECT Xだが、アイアンは6.5X、3本のウェッジは6.0S+とワンランク軟めの設定。リッキー・ファウラー、ジャスティン・トーマスも、挿しているシャフトは違えど同様のパターンだ。
改めて調べてみると、そこにはウェッジの名クラフトマン、ボブ・ボーケイの登場が関係していた。ボーケイはウェッジのシャフトについて、「ウェッジは、フルショットではなくコントロールショットを多用する特別なクラブ。当然、ヘッドスピードも落ちる。その世界観のなかでヘッドを感じながら、安定したリズムで振ろうとするならば、シャフトは軟らかめのほうがいい。アイアンと同じフレックスを挿すことはあっても、硬いシャフトを挿すのは絶対に良くない」と説明している。
この考えがPGAツアーに浸透して、今に至ったというわけだろう。考えてみれば、アプローチやコントロールショットでも〝ヘッドの重みを感じて、しなりを使う〟のは、プロはもちろん、上級者になればなるほど頻出するフレーズでもある。
「実は(現在リハビリで、ツアーを休んでいる)タイガー・ウッズもアイアンがX100で、ウェッジはS400なんですよ」とはボーケイが付け加えたひと言。タイガーのプレーとクラブを間近で見ていた選手たちへの影響も絶大だったはず。
「何を今さら、そんなことは常識」という人もいるかもしれないが、知らなかった人は自分のクラブに置き換えて、例えばアイアンシャフトがSフレックスなら、ウェッジはSRやRという選択だ。(ウェッジの)買い替え予定があるならば、シャフトフレックスを一考する価値ありそうだ。
ちなみに編集Tが調査した範囲では、国内ツアーでは平田憲聖と阿久津未来也の2人が同様の“軟らかシャフト”ウェッジ。平田は、5IからAWがN.S.プロ モーダス³ツアー115のXで、ロフト58度のSWのみ同じシャフトのSを採用。阿久津は、5Iから50度のAWまでがX100で、54度と60度の2本がS300だった。
※週刊ゴルフダイジェスト2023年10月24日号の記事に加筆したもの ※スペックは9月末時点(PHOTO/Blue Sky Photos)