これがゼクシオ流「飛びの3要素」の最適化
3代目ゼクシオ エックスは、ヘッド形状やシャフトなどがそれぞれ専用設計されているため、本家「ゼクシオ13」とは異なる特性を持ったドライバーだと言えるが、搭載されているテクノロジーに共通点が多いことからも、ゼクシオ本来の「やさしさ」を兼ね備えたアスリート志向のドライバーという位置づけになる。
フェース外周部の剛性を高めることでフェースのたわみを最適化し、高反発エリアを広げることができたという「BiFLEXFACE(バイフレックスフェース)」。前作にも搭載されていたダウンスウィングでの空気抵抗を減らし、ヘッドスピードを高める効果があるという「ActivWing(アクティブウィング)」をさらに進化させてきたのが、3代目ゼクシオエックス(と13代目のゼクシオ13)の特徴になる。
クラブ設計家の松尾好員氏は、初代から3代目にかけて「ヘッドの慣性モーメント」が大きくなっていることと、重心率(※)が「66.3%」と徐々に高く設計されていることに注目した。
※重心率/重心位置の指標のひとつ。「重心高さ÷フェース高さ」の数式で表され、数値が小さいほど低重心となり、低スピンになりやすい
ヘッドの慣性モーメントと重心率の役割を簡単に説明しておくと、ヘッドの慣性モーメントはスイートスポットを外したとき、どれだけヘッドのブレを抑えてくれるかを判断することができ、重心率はスピン量と弾道の安定を考えるデータになる。
スイートスポットよりトウ側でヒットした場合、ボールの衝撃でフェース面は、時計回りにはじかれる。その結果、ターゲットより右側に打ち出すことになり、逆にヒール側でヒットした場合、フェースは反時計回りにブレてしまい左側に打ち出すことになる。(もちろんヒール側にはシャフトが差さっているので同じくらい打点位置がズレていても影響の大きさは異なるが……)
スピン量と弾道に関係してくる「重心率」は、「61%前後」だと低重心、「64%前後」だと高重心というのがひとつの目安になる。打ち出し初速が遅く、スピン量が少ないと、打球はドロップしてしまいキャリーを出すことが難しい。その場合は、高重心のヘッドでスピン量を増やす必要があり、逆の場合(打ち出し初速が速く、スピン量が多い)は、低重心のヘッドでスピン量を抑えることで、弾道を安定させることが可能になる。
弾道の安定は、飛びの3要素(打ち出し初速、打ち出し角、スピン量)の最適化によって実現するため、ほぼすべてのドライバーがそこを目指して開発されていると言っていいだろう。
3代目ゼクシオ エックスは「バイフレックスフェース」による有効打点エリア(打ち出し初速アップ)の拡大、高重心化による安定したスピン量、慣性モーメントの大幅アップによって、前作を超える「やさしく打てて飛距離が出せる」ドライバーに進化したと言えそうだ。
心機一転!フェード系に変身
ここからは2代目ゼクシオ エックスと比較しながら凄腕シングルでもある松尾氏に実測データをもとに性能解説をしてもらいます。
クラブ長さが45.38インチ(以下すべて実測)と「やや長く」、クラブ重さは297.6グラムで「標準的」ですが、スウィングウェイトはD3.1と「大きい」ため、クラブの振りやすさの目安となるクラブ全体の慣性モーメントは293万g・cm2と「大きく」なっています。この数値はドライバーのヘッド速度が46〜47m/sくらいのゴルファーにとって、タイミング良く振りやすくなっています。
まずヘッドを見ていくと、全体的に前作2代目と似たオーソドックスな形状となっています。大きく変わった部分は初代、2代目がフックフェースに作られていたのに対して、3代目は明らかにフックフェース度合いが弱まり、スクエアフェースに近くなっています。
実際に試打したところ、アドレスでは少しフックフェース気味ですが、スクエア感があり、比較的平らなフェース面が特徴的でした。ヘッドの後方が低いシャローバック形状なので、インパクト付近をアッパーにスウィングしやすいイメージがあり、リアルロフトも十分あるので、「球が上がりやすいイメージ」が出ています。
試打クラブは10.5度で標準のSシャフト仕様。シャフトは軟らかめの設定で、ヘッドスピードが41〜43m/sくらいのゴルファーでも十分に扱えそうです。また、2代目よりもクラブ長さが1/4インチ短くなっているのも特徴で、振りやすくなっています。
そして、前作と比べて重心距離は「長く」、重心深度も「深く」設定されているので、過去3代のゼクシオ エックス の中では、最大のヘッド慣性モーメント(左右方向)になっており、「芯を外れたミスショットに対する寛容性が高く」なっています。
さらにフェース面上の重心(スイートスポット)は、フェース中央からややトウ寄りに配置されているので、3代目ゼクシオ エックスはフェード系の弾道が打ちやすくなっています。
ヘッドのネック軸回りの慣性モーメントも「非常に大きく」なっているため、ダウンスウィングからのヘッドの返りが遅いので、その点でも2代目よりも球をつかまえ過ぎないフェード系でコントロールしやすくなっています。
アスリート向けのエックスですが、ゼクシオシリーズらしくインパクト音は高く、打ったときの爽快感は継承されています。また適度なスピンも入って弾道は安定しており、つかまり系の前作からフェード系の今作と華麗な変身と言えそうです。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年1月9&16日合併号「ヘッドデータは嘘つかない!」より