松山英樹の21年マスターズ優勝をサポートした目澤秀憲に、レッスン技術に造詣が深いライターDが、最新スウィング理論について話を聞いていく連載「みんなのスウィング3.0」。今回は、海外で活躍し始めた「戦略コーチ」について考えた。

今ある技術で戦略的な「穴」をつぶす

D 科学や物理の力でスウィングが進化する一方で、同じようにコーチングも進化しているという話を前回からしています。とくにPGAツアーではコーチが介在する分野がどんどん細分化されて、1人のプロに対して複数人のコーチがチーム体制で当たるケースが増えているということでした。

<前回の記事はこちら>

目澤 今やスウィング全般のコーチ、パッティングコーチ、メンタルコーチ、フィジカルコーチみたいな感じでチームを組んでいることは珍しくありませんが、最近よく聞くようになったのが、「戦略コーチ」ですね。

D コースマネジメントに関するコーチということでしょうか。

目澤 そうです。たとえば、「アップゲーム」というアプリ(Upgame Golf Statistics)を開発した、トム・ボイズという人がいて、トミー・フリートウッドやジェイソン・デイ、マット・ウォレスなんかの戦略コーチをしています。ちなみにアップゲームは日本でもダウンロードして使うことができます。

画像: トミー・フリートウッドも戦略コーチをつけるプロの一人。(PHOTO/Blue Sky Photos)

トミー・フリートウッドも戦略コーチをつけるプロの一人。(PHOTO/Blue Sky Photos)

D どんな機能のアプリなのでしょうか?

目澤 プレー内容を入力すると、ショットバリュー(ショットごとの成功度)を評価してくれて、自分の長所や弱点がわかるというものです。PGAツアーで運用されている「ストロークスゲインド」という指標がありますが、それとほぼ同じデータが簡単に出るようになっています。面白いのはボールがどこに止まったかだけでなく、そのショットで自分がどこを狙ったのかも入力するという点で、これによって目標地点と実際のショットのずれがわかり、それも評価基準になっているところですね。

D ストロークスゲインドでは、グリーンに向かって打つショットの評価はカップまでの近さで決まりますが、アップゲームの場合は、あくまでも自分が設定した目標に近いほうが評価は高くなるということですね。たとえば、ピンがグリーンの端に立っているけれど、周囲の状況を考えてグリーンセンターをターゲットとした場合は、(カップから遠くなっても)そこに近いほうが高評価になると。

目澤 そうです。ティーショットがフェアウェイかラフかというのも少し評価基準が違って、狙った方向に近くて、かつ「打てるライ」なら、ラフでもあまり評価が下がらないようになっています。

D より実戦に即したデータになると。つまり「戦略コーチ」は、ざっくりいえば、そうしたデータを基に「狙い方」を指導するコーチということですね。

目澤 今まではスウィングを修正するのがコーチの役目みたいなところがありましたが、たとえばパーオン率が低いという場合、スウィングの問題というより、実は狙い方の問題ということはよくあります。アマチュアは、グリーンに届かず乗らないことが多いですが、「今日だけはグリーンの奥のエッジを狙って」というと、グリーンオン率が急に跳ね上がるケースがあります。プロはこれとはレベルが違いますが、同じようなことが起きているケースはあって、それを指摘するのが戦略コーチというわけです。

※週刊ゴルフダイジェスト2024年2月13日号「みんなのスウィング3.0 Vol12」より

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