「長谷部祐とギア問答」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリスト長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているんです……。

メーカーがショートアイアンとUTのコンボを売り出すことが重要

長谷部 メーカーは「5、6、7」のつながりを考えたら、7番と「8、9、P」のつながりを考えるのが次の仕事だと思う。

GD それにはプロのクラブがそうならないと、アマチュアまで普及しないのでは。

長谷部 プロのクラブはまだ番手の崩壊がそこまで起こっていないから、やれるとしたら「ゼクシオ」ぐらいじゃないかな。「5、6、7」のUTと「8、9、PW」のアイアンがセットして買えるような...…。

GD 今それをやろうとしたら、いろんなところからクラブを集めて、セットを作らないと難しいし、アマチュアにはハードルが高すぎると思う。

長谷部 そう、アマチュアには難しい。メーカーがUTとアイアンのコンボを作ってくれれば、シャフトだって流れができるし、距離や打ちやすさの流れもつくれるから、セットで使う意味が出てくると思うんだけど。

GD コンボセットでいったら、今のアイアンは7番と8番で構造が違うものが増えてきています。7番から上は中空とか、7番から上にはタングステンが埋め込まれているとか。そう考えると、7番と8番の間が……。

長谷部 分岐点になっているでしょうね。いまはちょっと流れが変わってきてしまってきているけど、8番までは「丸顔」、7番から上は「ちょっと四角」になってくる。顔の変化も7番と8番であったんだけど、それも変わりつつある。

GD それある。8番は8番の顔、7番は7番の顔じゃないと違和感がある。性能の分岐点でもあり、顔の分岐点でもあったわけですよね。今はそんなに気にするゴルファーもいなくなったのかな?

長谷部 どこかのメーカーがミドルアイアンの世界をちゃんと整理してあげないと。

GD ロフト的に言えば、31度、32度あれば、打てますよ。29度以下になってくるとUTのほうがいいんじゃないですか? という話と合致してきますね。

長谷部 「グローレ」の中空アイアンに、凄いシャローなのがあって、めちゃくちゃ球が上がる。ああいうシェイプも今後7番アイアンにはいいのかもしれない。

GD それっていつのグローレのこと?

長谷部 2023年モデル。あれぐらいシャローなシェイプなら絶対球が上がる。ああいう構造で、ロフト立てないで、セットが出来てくると、中空構造のやさしいモデルで、アイアンシェイプが生き残れるだろうけど、そうじゃないと、もう諦めてウッド形状の流れの7番UTが占めてくるでしょうね。

GD 7番アイアンもなくなってしまう?

長谷部 店頭の試打クラブから7番がなくなるんじゃかって、いま言われていますよ。

GD UTが苦手な人っているじゃないですか。そうなると、その人にとっては死活問題になってきますよ。

長谷部 死活問題です。

GD どうしてもユーティリティが苦手なら、アイアン型UTに行くんだろうけど、そういう人たちのためにアイアンは残されていく?

長谷部 残されていく。

GD でも、大筋というのはウッド型UTに行くと見ていいんですか?

長谷部 7番アイアンのロフト立っちゃったから大多数の人が、UTにしちゃうでしょう。ロフトの寝たUTのほうがやさしいやってことになったら、パー3でプレッシャーかからないし。昔はそれが恥ずかしいってあったけど……。

GD テーラーの最新Qi10のUTに31度があって驚いたんですけど、SIMまでは28度まで、PINGは30度。でも、28度と30度って見え方、大違いです。

画像: PING「G30」のユーティリティは中古市場で人気のため品薄。「みんな手放さないでいるのでしょう」。長谷部氏も長らく探しているが見つからないという

PING「G30」のユーティリティは中古市場で人気のため品薄。「みんな手放さないでいるのでしょう」。長谷部氏も長らく探しているが見つからないという

長谷部 急にフェースが上向いてきちゃいますからね。

GD 歯が出てきて、これって果たして慣れるんだろうか。使ったらすごくやさしいのでしょうけど、アゲンストでちょっと球を抑えたいなってときどうなんだろう? と思う。28度ならなんとかできる感じはある。

長谷部 28度でできるんだ。

GD ちょっとグースが入ったUTなら……。テーラーメイドとか、PINGは歯が出ているからちょっと難しそうですが、PINGの「G425」の26度なんて最高によかった。そう考えると26度、27度、28度あたりが、限界点のような気もするけど、30度を超えても「えっ」って思わないものができるんですかね。

長谷部 PINGだといま34度までありますね。

画像: PING「G430」のユーティリティはロフト30度の6UTに下に、34度の7UTもラインナップに加わった。

PING「G430」のユーティリティはロフト30度の6UTに下に、34度の7UTもラインナップに加わった。

GD ロイコレとか、地クラブでやらないかな? FW、UTの顔のよさには定評があるから、ロイコレがどう30度超えのUTを作るか見てみたい。

長谷部 たぶんなんか作っていますよね、35度のUTっぽいやつを。

GD それは何番アイアンの代わり?

長谷部 7番。だけど7番の倍ぐらいの高さで飛んでいくの。

GD 長いの?

長谷部 長さは8番アイアン。

GD うん? 8番アイアン?

長谷部 36インチぐらい。それよりちょっと短いかも。

GD UTのヘッドだと、それでも球が上がって飛んでいく?

長谷部 なかには上がりすぎて飛ばない人もいるかもしれないけど、スピンが入らないでドーンと飛んでいく感じ。

GD スピンは入らないけど、高さで止まる?

長谷部 ちょっと異次元なクラブだと思う。今度、打ってみてください。この間、ヘッドサンプルができてきて、打ったらめちゃくちゃよくて。それを起点に上下に展開できるのか? 検討中。それは、番手表示ではなく、ロフト表示にしましょうってことになっている。シャフトをカスタムすれば、7番代わりにすることも可能だし、8番の代わりにもなる。ヘッドは重量を変えられるようにしてあるからやりやすいと思う。

GD ロフト表示になると、ストロングロフトの覇権争いみたいなのは収まる?

長谷部 収まるでしょう。7番で150ヤード飛ばさないと、なんて考えなくなるから。それに、ストロングロフトの効果も5年も使えば消えてしまう。体が慣れてしまうから。それにああいう激飛び系アイアンのあのカタチも限界だと思う。

GD 確かに。ヤマハ『UD+2』は2代目以降おとなしくなった感じがする。

長谷部 それはメーカーがお客さまの声を聴くから、特に日本のメーカーは。ちょっとこれは格好悪いから、こうして欲しいと言うのを聞き入れると、初代は良くて、2代目から悪くなるのはお客さまや販売店の声を反映しすぎるから。当初のコンセプトがズレてくると長続きできない。その点、米国のメーカーはお客さまの声より一歩先に行こうとする。メーカーが考えるストーリーにハマるかどうかで作ってくる。それは国民性なのか、そうやってきて成功してきたということもあるけど、お客さまが一歩先、二歩先を言うことはごく稀なことだと思う。(市場の声を)聞いてもいいんだけど、それを判断するのは開発者だし、メーカーのポリシーだから、聞きすぎるのはよくない。聞いたからって絶対に売れるって保証はないですからね。

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取材協力/GDOゴルフガレージ

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