柳橋章徳(やぎはし あきのり)。
父親の影響で小学5年生からクラブを握る。大学は強豪校中央学院大学に入学し、ゴルフ部で技を磨きレギュラーとして活躍。2011年から2020年まで K’sIsland Golf Academyと契約し、常に世界最先端のスイング理論を追い続け、自らのフィルターを通してレッスンに取り入れている。
約1年前に個人のYouTubeチャンネル「BREAKTHROUGH GOLF」を開設し、本気のゴルファーに向けた動画配信もしている。
シャローイングって何のこと? 取り入れるメリットは?
シャローイングの“シャロー”は日本語の“鈍角”。対義語は“スティープ”で“鋭角”だ。スウィングにおけるシャローやスティープは、ダウンスウィングからインパクトに向かう際のヘッドの入射角を表している。
「シャローイングとはヘッドの入射角を浅くすることに特化した動きのこと。欧米ではフラットニングと呼ばれることもあります。基本的にはシャフトプレーンにクラブを沿わせるように下ろすのがシャローイングです」と柳橋章徳コーチ(以下同)。シャフトプレーンに沿ってクラブが動き、最終的にヘッドが緩やかな角度でインパクトに向かうのがシャローイングだ。
では、なぜシャローイングをするのか? 当然、それなりのメリットがあるはずだ。
「ヘッドが浅い位置から緩やかな角度でボールに向かうとインパクトゾーンが長くなります。また、フェース面の開閉速度が緩やかになってフェース面の管理がしやすい。これが一つめのメリットです。二つめはシャフトプレーンに乗せるべく、切り返しでクラブを寝かせる動きを入れることで、クラブに強く生じるトルク(ねじれ)を使えること。これによって飛距離アップが期待できます」。一つめについては何となく理解できるが、二つめはちょっとわかりづらいのでコーチに詳しく説明してもらおう。
「シャローイングはゴルフクラブの特性を使うことで発生する動きです。クラブは物理的に引っ張って使う道具なのですが、切り返しで引っ張ることにより、フェースには開こうとする動きが働きます。この動きはクラブが後ろに倒れようとする動きでもあるのですが、そこから手首とシャフトでできる角度(アーム角)をキープしてクラブを引っ張り続けると、クラブの重心特性上、後ろに倒れた重心が復元しようとする動きが生じ、自動的に理想的な入射角になるのです」。
クラブを引っ張るとは、ちょっとわかりづらいが、アマチュアの多くは切り返しでクラブを押していて、それが過度なスティープを招いて外からクラブが下りていわゆるカット打ちになっているという。押すとアーム角が崩れ、いわゆる手首の角度が解けた状態になり、引っ張るのとは真逆の動作になるというわけだ。
「切り返しからクラブを引っ張り続けるとトルク(ねじれ)が発生します。インパクトに向かってクラブが復元していくわけですが、シャローになることでクラブがインサイドから下りる。ヘッドが遠回りしてくる感じになりインパクトまでの助走距離が長くとれます。これによりトルクも強くなってヘッドスピードが上がる。これが二つめのメリットのロジックです」。ヘッドスピードが上がれば当然飛距離に反映される。シャローイングにより、フェース管理できることによる安定性と飛距離アップの両方を獲得できるというわけだ。
よくある勘違い
シャローイングと聞くと、P5(切り返し)のタイミングで手元を下げてクラブと地面を平行にすること、と想像するアマチュアが多くいるという。しかしその実態は全く違い、トップの位置に比べて切り返しでクラブが多少なりとも“寝る”動きがあればそれはシャローイングなのだという。
安定性と飛距離をもたらすこのシャローイングだが、人によって適正があるとのことなので次回その点を掘り下げていこう。
TEXT/Kazuya Kishi
Photo/Tsukasa Kobayashi
THANKS/GOLFOLIC 中延店
※2024年5月16日18:57、一部加筆修正いたしました。