アイアンのセット崩壊の兆候が見えてきた!
GD プロのセッティングも随分様変わりしました。ロングアイアンが姿を消し、ウェッジの本数が増えています。かつては、人によっては1番アイアンから入れていていましたが、現在は3番アイアンも少数派で、松山英樹も4番アイアンから。ウェッジもPWを抜きGW(ギャップウェッジ)が入っています。
長谷部 1番アイアンを入れると、カッコいいというのはありましたよね。ウェッジに関しては、別ブランドでまとめる傾向があります。『クリーブランド』から始まって、『ボーケイ』が台頭してきて、アメリカでウェッジの覇権争いが起こって、独立したウェッジブランドが注目されるようになっています。日本では地クラブ系、工房系でウェッジを展開しているところはありますが、大手メーカーにはウェッジ単独ブランドはなく、「フォーティーン」の『MT-28』がその走りだったと思います。
GD 日本でも『ボーケイ』の人気に火が付いたのと同じ頃、「フォーティーン」のウェッジが男子ツアーで人気になり、ボーケイ派、フォーティーン派に分かれていました。
長谷部 ウェッジが注目された背景にはアイアンが10本セットだったのを、SW、AWを抜いた8本セットになり、その後、3番、4番を抜いた6本セットになりました。これは、「中部地区の量販店」が、そういう売り方をしたいということを、各メーカーに打診した結果、普及したと言われています。
これがひとつの形になったのに、今は6本セットも崩れはじめていて、5番アイアンもいらない、PWもいらないという動きが見え始めていて、プロのセッティングの変化とともに、アマチュアのセッティングも様変わりしていくのか? と見ています。
GD アマチュアのセッティングはプロの影響を受けることを考えると、プロのセッティングが変わると、アマチュアのセッティングも大きく変わる可能性はありますね。プロのセッティングがアマチュア化しているという見方もできそうですよね? 難しいクラブはあえて入れないように見えますし。
ロングアイアンがハイブリッド(ユーティリティ)に代わり、ウェッジは52度、56度、60度の3本が定着し、そこに48度、もしくは46度のGWが加わり、PWが姿を消しつつあります。日本では50度、54度、58度で違いはありますが、今後PGAツアーでPW代わりのGWが定着すると、日本のツアーでも流行することが考えられます。
長谷部 アイアンセットの流れのPWは、トウが高くてヒールが低い形状になっているので球がつかまりやすい。ひっかけのミスが出やすい人は、ウェッジ形状でトップラインの丸い、重心の高い形状を選んでいるんじゃないかと思います。石川遼プロが一時44度とか46度を入れてウェッジ5本にしていたのもそういうことだったのでは? と思います。今年は普通のセットに戻したようですけど、そのような悩みがある人は、左にひっかけにくいウェッジ形状を選ぶのかなと思います。
GD ウェッジ形状のほうがスピンが入りやすいと言われます。ツアーのセッティングがシビアになってくれば、スピンで止めたくなる。PWでは止めきれないところをウェッジ形状のもので止めたいという考え方もあるような気がします。
長谷部 それはあると思います。
GD そうすると、プロのセッティングもPW を抜いた5番から9番の5本セットの時代が来るかもしれない?
長谷部 男子でも女子プロのように5番アイアンを抜くプロも出てくるかもしれないですね。各メーカー、2番、3番、4番のアイアン型ユーティリティを出してきているので、それが5番まで広がれば、楽に球が上がるし、スピンもかけられるので、使うプロは現れるでしょうね。
GD トラックマンの普及によって、スピン量など打球データが可視化されるようになったじゃないですか。 それによって一番効率のいいクラブセッティングを求めようとする傾向って見えません?
長谷部 その通りで、トラックマンを使うようになってから、メーカーが各番手の飛距離差は10ヤード刻みですよ、と言っていたのにも関わらず、ロフト差を見たら2度しかないじゃん、みたいなことになっていてメーカーが提示する理想の階段に矛盾が生じていることに気付いてしまった。この辻褄をどうするんだというのがあったんです。
自分のスウィングの中で 9番で何ヤード、7番で何ヤードというのがわかるようになってから、足らない距離とか、求める弾道でクラブを選ぶようになりました。プロの世界はそれがますます進んでいて、球低すぎるじゃん、強すぎるということがわかってきたので、球が上がるクラブを選ぶようになっています。
GD それってもうセットとしての考え方じゃないじゃない。極論を言えば、単品の組み合わせで、距離と弾道をチョイスするようになっている?
長谷部 「アイアン」と言っている、そのジャンルすら怪しくなってきていて、ハイブリッドという言い方をはじめ、番手とクラブの呼び名が混沌としています。