プロよりアマチュアのほうが難しいクラブを使っている?
GD クラブの進化のメリットよりもデメリットのほうが大きくて、結果、クラブが進化したことで、ゴルフがやさしくなっていますよ、とは言うものの、スコアに直結しない原因はそこにありそうですね。
長谷部 メーカーは部分、部分でしか言わない。ドライバーが飛びますよ、アイアンも飛びますよ、と言っても14本の構成を考えたときに、これらすべてがマッチしていますよとは、正直どこのメーカーもできていないし、やっていないわけです。なので、お客さんっていうか消費者が賢く選ばなきゃいけない。
自分のゴルフの悩みってなんだろう、スコアに直結する部分はなんだろう。そういった選び方で軸を考えないと、惑わされるというか、買わされてしまった結果、それを使わなきゃいけない脅迫感に迫られ、使いこなさなきゃいけないことになり、難しいゴルフをしている可能性はありますよね。
GD そうですよね。でも一般のゴルファーってそこまで育ってないと思うんですよ。言われるがままに持たされて、使わされて、「あれ? あれ? あれ?」っていうことになっている。これってメーカーが飛距離競争をした結果、飛距離の階段が壊れてしまったということですか?
長谷部 アイアンのパワーロフトは、一部の飛ばないことに対するデメリットを解消するには良かったのに、これを広げてしまった。 かっこいいシンプルなマッスルバック形状のものまでパワーロフトで作ってしまったことによって、どこの誰を目指しているの? ってことになって、そこにハマる一部の人以外は取り残されて、何を選んでいいかわからなくなってしまった。
GD 最近思うのは、アイアンをマッスルバックにしたほうが簡単なんじゃないかと。ロフト差はあるし、飛ばないけど、飛距離の階段と番手の役割が明確になる。それには飛距離との葛藤に勝たなくてはいけないんですけど。マッスルバックといっても7番までは打てる。4番、5番、6番はユーティリティにすればいいじゃん。あとは打てるスペックのシャフトを選べば、ゴルフがシンプルになるんじゃないかと思うんです。
長谷部 セットという考え方にしばられていて、その中で買い替えをやらざるを得なくなっている。でもプロは全然違うところからはじまっていて、セットなんて関係ない。自分が必要とする飛距離と弾道を求めるクラブ選びをしているから、プロのわがままじゃないですけど、その考え方のほうがいいでしょうね。
GD プロのほうがシンプルで、アマチュアのほうが複雑?
長谷部 それは選択肢がないからって言ってしまえばそれまでですけど、アマチュアはアイアンをセットで買わざるを得ない。アマチュアの選択肢が多様のように見えるけど、実はそうではない。ここが崩れない限り、アマチュアの選択肢は広がらない。ここはとても重要なポイントなんです! 「中部地区の量販店」が8本セットを6本セットで売りたいとメーカーに働きかけたのと同じように、アイアンの単品販売をさせてくれと言ったら、変わるかもしれない。
GD ドライバー、FW、ユーティリティ、ウェッジは単品で買えるようになったことを考えると、残すはアイアンだけですよね。
長谷部 お試しで7番アイアンを買ったら、下の番手を買おうってなるかもしれないし、アイアンの買い替えサイクルって昔と変わらず5年ぐらいなので、もし買い控えしているとしたら少しでも買いやすくして、ドライバーと同じぐらいの3年に1回ぐらいに。アイアンも進化しているわけだから、単品をちょっとお試しで買ってみたら、よかったらその他の番手も買おう。そんな風にチャンスを広げてあげたほうがいいのかなと思います。
GD メーカーがやろうと思えばできる?
長谷部 やろうと思えばできますよ。カスタムラインは状況が違いますけど、量産品の場合、7番は7番でまとめて作っておいて、箱詰めの段階で組み合わせているメーカーが多いはずです。そういうセット売りを諦めたときに、番手売りってどうですか? やってやれないことはない。やるか、やらないか。そうしたときに他の番手も売れるという保証はない。大抵の人が1本買っただけで終わるリスクを考えると、今までのようにセットで売ったほうが売り上げ立つじゃんっていうのがメーカーの発想なんですけど、顧客満足度を高めることを考えたら、1本でもいいから買ってもらって、気に入ってもらったら買い足してもらうほうが健全だし、買い替え需要喚起とアマチュアのお悩み解消に役立つと思います。
お客さんに喜ばれるんだとしたら、どこが最初にここに手を出すか。でも、手を出さざるを得ないメーカーもたくさんあると思うんです。年々セット売りの数量が減っていて、開発もままならないメーカーは、マーケティング的には顧客ニーズに寄り添って対応し、ウェッジと同じように単品売りで勝負してもいいと思います。
GD 売れる番手とって、売れない番手が出てきそう。
長谷部 それは考えられます。7番、9番、PWでいいや、8番はいらないっていう人は必ずいます。だから、最初は、7番単品で、8番、9番、PWの3本セットみたいに徐々にやっていく。
GD 5番、6番も単品。
長谷部 ある程度メーカーに誘導されたほうが楽なので、そうやって選んでいる人は本当に多い。皆さん、同じような悩みに突入しているわけで。 何を足そう、何を削ろうと考えたときに、実はこの大きなメインのところのアイアンに手を加えずに両端を入れ替えしているだけ。セッティングの中心はやっぱり7番、8番、9番なので、まずはここをしっかりと固める必要があります。上級者なら6番からPWですかね。
GD それが決まってから、上と下のバランスをどう取るか? 飛び系だったら下を厚くしなきゃいけないし、コントロール系だったら上を厚くできる。でも、それは番手と飛距離のジレンマとかプライドの問題が解消しないと、なかなかそこまでそういう意図を持ってセッティングをしても、人がそういうふうに見てくれないと思うと、やりにくいとことはありますね。
長谷部 だから、アイアンも番手表示をやめて、ウェッジやユーティリティと同じようにロフト表示になると思うんですよね。「25度の鉄」、「30度の鉄」っていう風になって、ロフトの刻みは4度がいいよねってなれば、今みたいな5番、6番、7番が2度刻みのような変なことが起こらない。健全なアイアン、鉄になるんですよ。たぶんそれが最終形じゃないですか、ロフト表示であり、番手表示じゃない。
小社「チョイス道楽」で開発したロフト表示のアイアン。6度ピッチのため飛距離のメリハリも考えられている
30度、36度、42度と組み合わせが可能なウェッジ3本、46度、51度、56度。7番アイアン相当の30度、PW相当の46度。使い勝手が良さそうな構成
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