「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……

青木瀬令奈のセッティングをお手本にしたい

GD 昔はウッドとアイアンの2種類しかなく、どんどん変わってきている。

長谷部 女子プロがアイアンを減らして、ウェッジとユーティリティを増やしている傾向があります。青木瀬令奈プロみたいに7番アイアンも入れないようなプロが出てくると、アマチュアが見習うべき考え方は、そこなんじゃないかと思います。自分の適正なクラブの選び方って、ヘッドスピードと技量だとすると、無茶してアイアンを打つ必要ないよねっていうことをプロがもっと実証してくれれば、そういう考えが定着してくると思います。

「週刊ゴルフダイジェスト」2024年2月13日号で特集した青木瀬令奈プロのセッティング

GD でもゴルショップ行くとそういう選び方ってまだできないじゃないですか。

長谷部 そうなんです! だからアイアンセットをやめて、単品販売にメーカーがしてくれればアマチュアはもっと選択肢が広がる。でもメーカーにしてみればビジネス上やりづらいし、お店もやりにくいから、できるとしたら地クラブメーカー? 単品販売で1本ずつ買えるようにしたら、アマチュアもプロのようなセッティングが可能になります。

GD 実際プロってそういうセレクトをしていますよね。金谷拓実が飛ぶ5番アイアンと普通の5番アイアンを入れていたりするのを見ると、番手の並びではなく、ロフトの並びでもないような気がします。

長谷部 ヘッドの機能の違うものを選んでいたりします。飛ぶ5番はライナー用で、もう1本の5番はハイロンチのもの。

GD そうなってくると、クラブ選びの基準は相当変わってきますね。

長谷部 何を基準にして選べばいいか、すごく難しい時代になってきていると思います。

GD クラブはやさしくなっているけど、クラブを選ぶのは非常に難しい。

長谷部 もっと極端に言うと、今までアイアンセットってロフトの階段、総重量の階段が、ほんとにアマチュアにとってこれでいいのかわかっていません。たまたま半インチ刻みにするのが正攻法とされていて、同じシャフト重量のものを選んであげれば、なんとなく総重量の階段も綺麗にできたんですけど、実はPWは軽すぎて、5番アイアンは重すぎたかもしれない。

もっとミドルアイアンは軽く振りやすくして手打ちにならないように、ウェッジ系はもうちょっと重くしてもよかったのかもしれないっていうのは、実はあるんです。日本人のマインドとして理想のセットを使いこなそう、練習して上手くならないと、という気持ちが根強くあると思います。

GD 最近、トラックマンレンジとか、トップトレーサーレンジが増えて、アマチュアも身近に自分の本当の飛距離を知ることができるようになりました。その結果、下の番手がギュギュっと詰まっていて、上の番手も同じようにギュギュっと詰まっていて、飛距離の階段がちゃんとできていないことがわかり出しました。でも、これって14本まで入れなきゃ損だという考えが働いて、本当に使い勝手のいいセッティングになっているかどうかまで行きついていないように思います。

長谷部 入れなきゃ損で入れちゃっているケースはありますね。コース攻略とスコアアップを考えるんだから、苦手なクラブってなに? その部分を厚くするのはいいと思うんですよ。一番苦手なのがドライバーだったら、ドライバーを2本入れて、パターが苦手ならパターを2本入れてもいいと思う。こういった考え方って、どこのメーカーもどこのメディアも言わないじゃないですか。14本を綺麗に揃えようとする傾向が強く、使わないクラブも「もしかしたら使うかも……」と念のため入れておく。

実際、2打目で使うのは7番アイアンとユーティリティだけというアマチュアはたくさんいますよね。スコアに直結するティーショットとグリーンまわりでバタバタしていることを考えると、もっと14本の使い方をドラスティックに変えたほうがいいんじゃないかというアマチュア多いと思います。

GD 1日プレーをして、「今日1回も使わなかった」というクラブがあります。そういったクラブは、使わないのか? 使いにくいのか? 何か理由がある可能性がありますね。

長谷部 アイアンの7番からPWまでのロフト差が3度刻みになっていると距離差が出にくいから、ここは4度刻みのものを選ぶとか、4度刻みでも差が出ないんだったら、今度は0.5インチではなく、0.75インチフローにして長さの差を付けるとかしたほうが、メリハリが付くように思います。

GD 距離の階段がちゃんとできる?

長谷部 デシャンボーのワンレングスとは逆説にはなりますが、番手間のメリハリを付けたほうが、アマチュアにはわかりやすいかな。

GD そうなると、現実的には「14本入れなくてもいいじゃん」という発想から考えたほうがメリハリが付くように思えてきました。番手間がくっついているんだったら、間を抜いてみる。3度ピッチのアイアンだとした、1本番手を抜けばロフト差は6度になります。

長谷部 最小限必要な10本を最初に決めて、苦手な部分を強化するように付け足していく。ドライバーの下にFWを2本入れて、アイアンをセットで入れて綺麗に揃えようとした結果、14本をうまく使い切れていないアマチュアが本当に多いんじゃないかと思います。

GD ストロングロフトのアイアンって、番手がつまっているじゃないですか。上の番手はもうこれ以上はロフトが立てられない。下の番手は飛ばさなきゃいけないからロフトが立っている。 さらに下のウェッジゾーンがスカスカ。数字上の番手にこだわって綺麗に揃えようとすると、かつては2本のクラブでカバーしていたところを3本でカバーしていることになって、10ヤード刻みではなく、5ヤード刻みのセッティングなっている?

長谷部 そうなっています。アマチュアは5ヤード刻みでなんか打てていません。ミスショットの誤差のほうがもっと大きい。

This article is a sponsored article by
''.