地域に根ざした大衆的な中華料理店「町中華」にスポットが当たって久しいが、同じように地域に根ざしたゴルフショップといえば「ゴルフ工房」がある。経験豊かなクラフトマンが使い手の要望に合わせ、ヘッドとシャフトを組む「カスタムクラブ(地クラブ)」が人気だ。そこで、人気工房の「飛ぶスペック」を週イチで紹介! 試打者はゴルフダイジェストで四半世紀にわたり世に出たほぼすべてのクラブを打ってきた堀越良和プロだ。

増田さんがドライバーからアイアンまで愛用するシャフトを使った1本

連載21回目は愛知県海部郡に工房を構える「エンジョイゴルフ工房」の 増田理さんがおすすめする1本をご紹介。もともと『ホットスタッフ』というパーシモンなどの修理がメインの会社で働き、その知識や修理ノウハウを活かし約25年前に独立、そして現在の「エンジョイゴルフ工房」をオープンした。増田さん自身はゴルフはあまりせず、今はエンジョイゴルファーとしてゴルフと向き合っている。

画像: アイアン調整中の増田さん

アイアン調整中の増田さん

クラブ選びについて聞くと、「自分自身がゴルフが上手ではないため、お客様が感じたアイアンの顔であったり、感性を大事にしています。アマチュアだからと言って難しいクラブを勧めないといったことはせず、難しいクラブを使うことによって練習量が増したり、ゴルフに対して向き合う姿勢が上達に繋がると思っています」とゴルフとの向き合い方を大事にしているという。また「クラブを試していただく時は、好みのヘッドに試したいシャフトを挿し、実際に打っていただくことで、実際のフィーリングを感じてもらえればいいなと思っています。技術的なアドバイスはあまりできないので(笑)」とカチャカチャでない地クラブでもこの対応をしてくれる工房は珍しいだろう。フィッティング自体はやっていないが、3月と10月に増田さん主催の試打会が行われ、今回の『カムイ』をはじめ、様々な地クラブを試せるそうだ。「コロナ明けから若い人や女性が増え、ドライバーのスリーブ交換やライ角調整などの依頼が増えましたね。調整している間、店頭に並んでいる三浦技研やエポンをみて驚いたり、試打や実際に購入していく方が多くなりました。若い人に来ていただくことで地クラブに興味を持っていただくきっかけになると嬉しいです」と語った。

「カムイ『TP-XI <イレブン>nitrogen』とフジクラ『DIAMOND SPEEDER(5S)』がおすすめ」と増田さん。「昔は『飛びのカムイ』と言われたほど飛距離性能には定評があります。カムイのヘッドは難しそうに見えますが、見た目に反して万人向けのヘッド。今回のヘッドはサイドスピンが減り打ち出しは上がりやすく、直進性も高くなっています。シャフトは50Sですが、製品自体は30g台まで用意されているので体力やタイプに合わせたカスタムが可能です。私の工房では年齢層が高く、30gのシャフトも注文頂いており、好評です」と語った。

●ヘッド/KAMUI TP-XI <イレブン>nitrogen(ロフト10度)

画像: カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen

カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen

フェース後部に内部ウォールを作ることでクラウンとソールをつなぎ、Nitorogen装填BOXを作り出したことでボールのスピン軸が傾きにくい大慣性モーメントヘッドと変わらない寛容性を実現。Nitorogen(窒素ガス)をヘッド内に装填することで、ヘッド内圧を高めて、たわみやすいβ系チタン「DAT55G」を薄肉化しても余計なたわみを抑えて高いレベルでCT値を適合範囲内にキープして、耐久性も向上。価格(税込)/10万8000円(ヘッド単体/ガス&発泡剤)

●シャフト/フジクラ DIAMOND SPEEDER(5S)

画像: DIAMOND SPEEDER

DIAMOND SPEEDER

飛距離追求型シャフトとしてDIAMOND SPEEDER DW/FWを2017年に発売。さらにハイブリッド/アイアン用を望む声も多く、2019年にフルラインナップとなった。新素材を纏い、さらにロートルクへとバージョンアップ。また多くのゴルファーに対応するため、軽量のラインナップも追加。価格(税込)/6万6000円

シャフト長の違いが鮮明に感じる

ここからは堀越プロの試打結果とインプレッションをお届けしよう。

「まず構えてみると、フェースプログレッション(FP値)の大きさを感じます。いわゆる出っ刃のモデルです。FP値については、アイアンの話になりますが、大きければ球が上がりやすく、小さければつかまりやすいというのが良く言われる話です。ただ、ことドライバーに関していうと、FP値が大きくなると球が上がりやすいと同時に、つかまりが良くなると私は思っています。それは、形状からフェースが回転したときにフェースが出ていて、先にボールに当たり、左に行きやすいからです。また、カムイらしいディープフェースなので、寛容性が大きいモデルというよりも、初速に重きを置いているのかなと思います。シャフトはトルクが少ない『ダイヤモンドスピーダー』なので、『5S』ですが、かなり硬さを感じます。打つ前ですが、球をつかまえられるゴルファーであれば、強い球が出るイメージがありますね」と堀越プロは分析する。

画像: 試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

画像: 弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

実際に打ってみると、「球が高いですね! ディープフェースなので中弾道の強い球をイメージしていたのですが、これは形状からのイメージとは違って驚きです」と初球から15.9度の高打ち出しにビックリした堀越プロ。続く2球目、3球目も15.8度、16.3度と高い球が続く。「トルクが少なく、お助け感が強くはないダイヤモンドスピーダーなのに、これは本当にビックリしますね。フェース面のロール(縦の湾曲)が大きいからなのかなと思います。フェースセンターより上で当たっているので、よりロフト角が付いているのでしょう」と話す。「初速は60.9m/sや61.0m/sなので、このヘッドスピードで打ったときに極端に早いということはないのですが、しっかり出ています。全体的にドロー回転が掛かりやすく、しっかりキャリーで飛ぶクラブだと思います」(堀越)

なお、ヘッドスピード42m/s前後で5球を打っての平均は下記のとおり。

ボール初速●61.2m/s
打ち出し角●15.1度
スピン量●1716rpm
キャリー●221.5Y
総飛距離●247.1Y

総評

「ヘッドの形状と機能がいい意味でちぐはぐだったので、高弾道にまず目が行きましたが、ヘッド形状どおりの低スピンで飛距離性能はかなり良いと思います。いつも言っていますが、ヘッドスピードが40m/s以下の場合、打ち出し角が高いと飛びますし、ヘッドスピードが速ければ速いほど低スピン性能が生かせる。それを考えると、このヘッドはヘッドスピード帯を問わない、かなり優秀なヘッドと言えます。シャフトは切り返しのタイミングが取りやすく振りやすいのが特徴です。とはいえ、お助け感はないので、この組み合わせだとヘッドスピードは問いませんが、腕前は自分でしっかりつかまえられるゴルファーのほうがいいと思います。強弾道で高い球を打ちたいと思う上級者ゴルファーの贅沢な望みをかなえてくれる1本だと思います」(堀越)

画像: シャフト線軸よりもリーディングエッジがかなり前にくる出っ刃な顔(左)。「窒素の箱を小さくするって発想は面白いですよね」と堀越プロ(右)

シャフト線軸よりもリーディングエッジがかなり前にくる出っ刃な顔(左)。「窒素の箱を小さくするって発想は面白いですよね」と堀越プロ(右)

エンジョイゴルフ工房

画像: 練習場が併設されており、駐車場も完備

練習場が併設されており、駐車場も完備

カスタム豊富な試打クラブから、お気に入りのクラブが見つかる場所

住所/愛知県海部郡飛島村松之郷1-37
営業時間/10:00~19:00
定休日/木曜日
電話番号/0567-56-5628

※車は5~6台まで駐車可能

THANKS/クレアゴルフフィールド
※2024年12月12日11時00分、一部内容を加筆修正致しました。

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