評価の高いパーツを組み合わせた1本
連載20回目は三重県四日市市にお店を構える「田中ゴルフ」の田中靖久さんがおすすめする1本をご紹介。「田中ゴルフ」はもともと田中さんの父親が始めたゴルフメインのスポーツ店で、50年以上の歴史がある老舗店だ。父親から店舗を引き継いだ田中さんは、以前の大衆的なスポーツ店から、ゴルフ好きが集まる、オーダーメイド(当時は、パーシモンヘッド) や修理、調整をメインとした工房に変えたという。
田中ゴルフのコンセプトを聞くと「お客様に合わせてクラブを作るのではなく、クラブ自体(ヘッドやシャフト)の素材をどういう風に組み合わせたり、組み立てていけばそのクラブポテンシャルを引き出せるかっていうのが大事だと思っています。組み立てたクラブがお客様に合うものかは実際の所わからない部分なので、お客様の好み通りのクラブに仕上げるということを大切にしています。ただ、クラブが出来上がったから終わりではなく、そこからがフィッティングの始まりで、お客様の好みに合わせて調整していく。というやり方がうちの考え方なんですけどね」と田中さん。また、「お客様のクラブやスウィングを機械で測って出た数値から、クラブを一発で仕上げるのではなく、使っていくうちについてしまう傷や使用感には、お客様のスウィングのクセやクラブとの相性など、情報がいっぱい詰まっています。それをもとに微調整して、本当にお客様に合ったクラブをお客様と一緒に作り上げていく。というやり方がうちの考え方です」と田中さん。
「『カムイ『TP-XI <イレブン>nitrogen』とフジクラ『DIAMOND SPEEDER(5S)』は、興味のあるヘッドと、興味のあるシャフトをつけてみました(笑)」と田中さん。「カムイさんには、私が希望するスペックを担当さんや開発さんにお願いしてクラブヘッドを送っていただいています。今回のカムイヘッドはガス注入の仕方、フェースの作り方が他にはない技術、今までの蓄積されたノウハウが細部まで詰め込まれたヘッドなので興味がありました。シャフトに関しては前モデルが当店での評価が高く、試してみたいなと思いました。(笑)」と語った。
●ヘッド/カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen(ロフト10度)
カムイといえば、ヘッド内に窒素ガスを装填することで、ヘッド内圧を高めて、たわみやすいβ系チタン「DAT55G」を薄肉化しても余計なたわみを抑えて高いレベルでCT値を適合範囲内にキープさせる技術で有名だが、このモデルはその技術がさらに進化。フェース内部に壁を作ることでクラウンとソールを物理的に繋ぎ、窒素ガス装填BOXを作り出した。その結果、ボールのスピン軸が傾きにくい大慣性モーメントヘッドと、変わらない寛容性を生み出した。相反する関係と言われる高いボールスピードと寛容性を両立したという。価格(税込)/10万8000円(ガス+発泡剤)
●シャフト/フジクラ ダイヤモンドスピーダー(5S)
高弾性率・高強度を両立した東レ「トレカ MXシリーズ M46X」をゴルフシャフトで初採用。DAYTONA SPEEDERにも採用している『M40X』に加え、さらに超高強度・高い弾性率を兼ね備えた最先端素材『M46X』をダブル積層。前作を超える加速感とインパクトの強さで、さらなるボール初速アップを実現した。(WOOD用のみ採用)価格(税込)/6万6000円
ヘッドの見た目とは裏腹に高打ち出しでキャリーが出る
「まず構えてみると、フェースプログレッション(FP値)の大きさを感じます。いわゆる出っ刃のモデルです。FP値については、アイアンの話になりますが、大きければ球が上がりやすく、小さければつかまりやすいというのが良く言われる話です。ただ、ことドライバーに関していうと、FP値が大きくなると球が上がりやすいと同時に、つかまりが良くなると私は思っています。それは、形状からフェースが回転したときにフェースが出ていて、先にボールに当たり、左に行きやすいからです。また、カムイらしいディープフェースなので、寛容性が大きいモデルというよりも、初速に重きを置いているのかなと思います。シャフトはトルクが少ない『ダイヤモンドスピーダー』なので、『5S』ですが、かなり硬さを感じます。打つ前ですが、球をつかまえられるゴルファーであれば、強い球が出るイメージがありますね」と堀越プロは分析する。
実際に打ってみると、「球が高いですね! ディープフェースなので中弾道の強い球をイメージしていたのですが、これは形状からのイメージとは違って驚きです」と初球から15.9度の高打ち出しにビックリした堀越プロ。続く2球目、3球目も15.8度、16.3度と高い球が続く。「トルクが少なく、お助け感が強くはないダイヤモンドスピーダーなのに、これは本当にビックリしますね。フェース面のロール(縦の湾曲)が大きいからなのかなと思います。フェースセンターより上で当たっているので、よりロフト角が付いているのでしょう」と話す。「初速は60.9m/sや61.0m/sなので、このヘッドスピードで打ったときに極端に早いということはないのですが、しっかり出ています。全体的にドロー回転が掛かりやすく、しっかりキャリーで飛ぶクラブだと思います」(堀越)
なお、ヘッドスピード42m/s前後で5球を打っての平均は下記のとおり。
ボール初速●60.9m/s
打ち出し角●15.9度
スピン量●2176rpm
キャリー●225.8Y
総飛距離●246.7Y
総評
「ヘッドの形状と機能がいい意味でちぐはぐだったので、高弾道にまず目が行きましたが、ヘッド形状どおりの低スピンで飛距離性能はかなり良いと思います。いつも言っていますが、ヘッドスピードが40m/s以下の場合、打ち出し角が高いと飛びますし、ヘッドスピードが速ければ速いほど低スピン性能が生かせる。それを考えると、このヘッドはヘッドスピード帯を問わない、かなり優秀なヘッドと言えます。シャフトは切り返しのタイミングが取りやすく振りやすいのが特徴です。とはいえ、お助け感はないので、この組み合わせだとヘッドスピードは問いませんが、腕前は自分でしっかりつかまえられるゴルファーのほうがいいと思います。強弾道で高い球を打ちたいと思う上級者ゴルファーの贅沢な望みをかなえてくれる1本だと思います」(堀越)
田中ゴルフ
シニア、ツアープロからジュニアまで、様々な経験からご自身に合ったクラブを作ってくれる信頼できるショップだ。
住所/三重県四日市市西松本町10-36
営業時間/10時~22時(不定休)
電話番号/059-352-6623
田中ゴルフの看板猫たち