ツアー解説でおなじみの佐藤信人プロ。今回は全米プロの2人の”主役”メジャー初優勝を果たしたザンダー・シャウフェレと世界ランク1位のスコッティ・シェフラーについて語ってもらった。
画像: 全米プロ優勝のシャウフェレの裏話。「表彰式前に電話したら嬉しさのあまり号泣していた父。自分もつられて泣きそうになったので早めに電話を切ったという息子。日本人にもありそうな"巨人の星"的いい話ですよね」と佐藤プロも感動?

全米プロ優勝のシャウフェレの裏話。「表彰式前に電話したら嬉しさのあまり号泣していた父。自分もつられて泣きそうになったので早めに電話を切ったという息子。日本人にもありそうな"巨人の星"的いい話ですよね」と佐藤プロも感動?

今年の全米プロは、ネタが山ほどあった大会でした。

まずは4日間首位を守っての完全優勝でメジャー初優勝を果たしたザンダー・シャウフェレ。21アンダーはメジャーでも前人未踏の大会記録です。その前週のウェルズファーゴ選手権でローリー・マキロイに逆転負け。その試合後、「2年間勝っていませんが?」との質問に、「次に勝ったときの嬉しさが倍増するはず」と本音とも冗談と思えぬ答えではぐらかしました。

勤勉で真面目、長期計画を立てる能力の高いのが父譲りのドイツ人気質(父はドイツとフランスのハーフ)。練習態度は誰よりもストイックなだけに、ネガティブな思いに支配されることもあるでしょうが、一方で楽観的に言葉を発することができるのもシャウフェレらしさ。〝弟気質〟もあるのかもしれません。

咋秋からクリス・コモの指導でスウィング改造に取り組んできました。具体的にはレイドオフだったトップをスクエアに。素振りではクロスになるような大げさな動きを取り入れてもいました。

当然、そこには違和感もあったでしょうが、予選落ちもなく、そこそこの結果を残してきました。その違和感がすっかり消えたのがウェルズファーゴだったようです。

成功したスウィング改造の立役者はクリスに違いありませんが、そのベースにあるのは13歳から指導してきた父・ステファンさんのコミット(責任ある行動)、エクセキュート(実行)、アクセプト(どんな結果も受け入れる)という3つの教えです。

生真面目なドイツ人にして、かつては陸上でオリンピックを目指した父の指導は厳格そのもの。大会中ハワイにいた父は、「コミット、エクセキュート、アクセプト」や「雨垂れ石を穿うがつ」など昔からずっと言い続けているフレーズを息子に送っていたそう。 

全米プロに優勝後、世界ランキングは2位に。しかし、「今日はビールくらいは飲むかもしれないけれど、頂上にはシェフラーというすごい選手がいて、まだまだ上り続けなければならない」との優勝コメントは、まさに父の教えそのものですね。 

さて、その世界ランク1位のスコッティ・シェフラー。間違いなくシャウフェレ、ブライソン・デシャンボーとともに、この大会の主役でした。

2日目、会場のバルハラGCの前で警察に逮捕、連行されるという前代未聞の珍事が。容疑も晴れてなんとかスタート時間に間に合うと、スタートホールの10番でバーディ発進。それもすごいですが、「自分が逮捕される映像を留置場で見ていた。その留置場でストレッチは怠らなかった。2人目の警官がいい人で心が落ち着いたので、もう少し一緒にいてくれと懇願した」という内容のコメントをし、警察を一切批判しない姿勢はファンに好感を持たれました。

人気や華やかさといった点ではマキロイやジョーダン・スピースには敵いませんが、この一件で確実にスターへの階段を上ったのではないでしょうか。少なくとも後世まで語り継がれる、ゴルフ史に残る伝説になることだけは間違いなさそうです。

PHOTO/Blue SkyPhotos

※週刊ゴルフダイジェスト2024年6月18日号「さとうの目」より

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