「フェアウェイキープがカギになる」(レックス倉本)
2016年大会以来、8年ぶりにサハリーカントリークラブで開催される今年の全米女子プロ。コースや見どころについて、米国での取材経験が豊富なレックス倉本に話を聞いた。
「前回出場した選手が『狭いとは覚悟していたけど、それ以上に狭く感じる』と言っていました。フェアウェイ自体が狭いのに加え、日本の林間コースよりも木々が高く、空間を覆って空も狭く感じるため、より窮屈に感じるコースです。アンジュレーションも効いていて、この時期の西海岸は地面が硬いこともあって、どこに転がるか落としどころにも気を使う。前回大会ではブルックス・ヘンダーソンとリディア・コーがプレーオフで争ってヘンダーソンが優勝しましたが、2人のようにボールストライキングに秀でていて、フェアウェイを確実にとらえられる選手が有利になるでしょう。また、最近の女子選手はねじれのない、真っすぐな球を打つ選手が多いのですが、このコースはせり出した木の枝やコース形状によって左右に球を曲げる技術も必要。マネジメント力と想像力も試されることになります」
「4つあるパー3のうち3ホールが池絡みで、とくに打ち下ろしで距離のある17番パー3は、右手前の池につかまってトラブルになった選手が前回大会も多かったホールです。各選手、最後の最後まで気が抜けません」(レックス)
みんゴル注目はボールストライキングが高いこの2選手!
レックス倉本プロの発言を受けて、今回の出場する日本人選手のスタッツを確認。米LPGAでは、ボールストライキング(※)という数値は出していないが、西郷真央、畑岡奈紗、古江彩佳が米LPGAに参戦している日本人選手のなかでは上位に入る。
一方、JLPGAではスタッツを公表しており、今回出場する選手でいえば、山下美夢有、岩井千怜、岩井明愛が上位にくる。
※JLPGAではトータルドライビングとパーオン率の順位の合計
畑岡奈紗は米LPGAでの経験も多く、スタッツもいいが、ここは最近の調子を鑑みて、岩井明愛・千怜姉妹を推したい。
JLPGAボールストライキング8位・岩井明愛(トータルドライビング/18位、パーオン率/2位)
全米女子オープン前のリゾートトラスト レディスで今季初優勝を遂げ、全米女子プロの前のニチレイレディスで今季2勝目を挙げた岩井明愛。ニチレイレディスの会見でそのことを聞かれると「そんなに先週優勝したからそのままいけるとは限らないので、また自分のスウィングの調子もあるので、確認しながら試合をやっていきたい」と話し、優勝後に挑んだ全米女子オープンのあまり良くない結果を引きずることはないようだ。
また「自信はあるんですけど、向こうにいくとティーショット荒れてしまうとスコア作るのが難しいので、もっとティーショットを思うような感じで打てたらいいなと思いますね。全米女子オープンではドライバーがよくなかったので荒れてしまったけど、そこからちょっとずつ修正して、今週(ニチレイレディス)もちょっとずつよくなってきてという状態なので」と話す。
飛ばし屋で知られる岩井明愛。2023年のフェアウェイキープ率は61.6272%だったが、今年は62.9568%とわずかではあるがキープ率は上がっている。この要因は「今年始まる前にタイで合宿して、その時も同じクラブで良かったので、クラブは悪くないし、自分の体の使い方かなと思います。少しずつ良くなってきています」と話す、今年から使用しているパーソナルモデルのドライバーが合っているのはあるだろう。
JLPGAボールストライキング6位・岩井千怜(トータルドライビング/1位、パーオン率/16位)
もう一人は、今季JLPGAで2勝を挙げ、全米女子オープンでも予選ラウンドを5位タイで通過し、メジャー大会でもその実力を示した岩井千怜。ボールストライキングでは前述の姉・明愛の2つ上位に位置している。
姉に比べてドライビングディスタンスはやや劣るものの(明愛は254.37Y、千怜は247.68Y)、フェアウェイキープ率は圧倒(明愛は62.95868%、千怜は71.4286%)。また、個人的にも昨年が64.1165%だったという結果からみても、今季の球の曲がらなさは特筆すべき点だろう。
それについて、千怜は「サウジアラビアから使用している新しいドライバーがとにかく曲がらないんです。打点がズレたときでも真っすぐ飛んでくれる」とこちらも独自カラーのドライバーへの信頼度は高い。
どちらも海外メジャーだからといって、クラブ調整はせず、ニチレイレディスのままで難コースに挑戦する。姉・明愛が「千怜もいますし、楽しみが倍です」という全米女子プロに期待したい。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月2日号「今週、全米女子プロゴルフ選手権」より一部加筆