地域に根ざした大衆的な中華料理店「町中華」にスポットが当たって久しいが、同じように地域に根ざしたゴルフショップといえば「ゴルフ工房」がある。経験豊かなクラフトマンが使い手の要望に合わせ、ヘッドとシャフトを組む「カスタムクラブ(地クラブ)」が人気だ。そこで、人気工房の「飛ぶスペック」を週イチで紹介! 試打者はゴルフダイジェストで四半世紀にわたり世に出たほぼすべてのクラブを打ってきた堀越良和プロだ。

評価の高いパーツを組み合わせた1本

連載21回目は三重県四日市市にお店を構える「田中ゴルフ」の田中靖久さんがおすすめする1本をご紹介。「田中ゴルフ」はもともと田中さんの父親が始めたゴルフメインのスポーツ店で、50年以上の歴史がある老舗店だ。父親から店舗を引き継いだ田中さんは、以前の大衆的なスポーツ店から、ゴルフ好きが集まる、オーダーメイド(当時は、パーシモンヘッド) や修理、調整をメインとした工房に変えたという。

画像: 作業中の田中さん

作業中の田中さん

田中ゴルフのコンセプトを聞くと「お客様に合わせてクラブを作るのではなく、クラブ自体(ヘッドやシャフト)の素材をどういう風に組み合わせたり、組み立てていけばそのクラブポテンシャルを引き出せるかっていうのが大事だと思っています。組み立てたクラブがお客様に合うものかは実際の所わからない部分なので、お客様の好み通りのクラブに仕上げるということを大切にしています。ただ、クラブが出来上がったから終わりではなく、そこからがフィッティングの始まりで、お客様の好みに合わせて調整していく。というやり方がうちの考え方なんですけどね」と田中さん。また、「お客様のクラブやスウィングを機械で測って出た数値から、クラブを一発で仕上げるのではなく、使っていくうちについてしまう傷や使用感には、お客様のスウィングのクセやクラブとの相性など、情報がいっぱい詰まっています。それをもとに微調整して、本当にお客様に合ったクラブをお客様と一緒に作り上げていく。というやり方がうちの考え方です」と田中さん。

「『カムイ『TP-XI <イレブン>nitrogen』とフジクラ『DIAMOND SPEEDER(5S)』は、興味のあるヘッドと、興味のあるシャフトをつけてみました(笑)」と田中さん。「カムイさんには、私が希望するスペックを担当さんや開発さんにお願いしてクラブヘッドを送っていただいています。今回のカムイヘッドはガス注入の仕方、フェースの作り方が他にはない技術、今までの蓄積されたノウハウが細部まで詰め込まれたヘッドなので興味がありました。シャフトに関しては前モデルが当店での評価が高く、試してみたいなと思いました。(笑)」と語った。

●ヘッド/カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen(ロフト10度)

画像: カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen

カムイ TP-XI <イレブン>nitrogen

カムイといえば、ヘッド内に窒素ガスを装填することで、ヘッド内圧を高めて、たわみやすいβ系チタン「DAT55G」を薄肉化しても余計なたわみを抑えて高いレベルでCT値を適合範囲内にキープさせる技術で有名だが、このモデルはその技術がさらに進化。フェース内部に壁を作ることでクラウンとソールを物理的に繋ぎ、窒素ガス装填BOXを作り出した。その結果、ボールのスピン軸が傾きにくい大慣性モーメントヘッドと、変わらない寛容性を生み出した。相反する関係と言われる高いボールスピードと寛容性を両立したという。価格(税込)/10万8000円(ガス+発泡剤)

●シャフト/フジクラ ダイヤモンドスピーダー(5S)

画像: DIAMOND SPEEDER

DIAMOND SPEEDER

高弾性率・高強度を両立した東レ「トレカ MXシリーズ M46X」をゴルフシャフトで初採用。DAYTONA SPEEDERにも採用している『M40X』に加え、さらに超高強度・高い弾性率を兼ね備えた最先端素材『M46X』をダブル積層。前作を超える加速感とインパクトの強さで、さらなるボール初速アップを実現した。(WOOD用のみ採用)価格(税込)/6万6000円

ヘッドの見た目とは裏腹に高打ち出しでキャリーが出る

この連載ではじめて、ヘッドとシャフトが同一モデルとなった。「え、ロフトもフレックスも先週とまったく同じ? ということは、カムイ『KAMUI TP-XI <イレブン>nitrogen』×フジクラ『ダイヤモンド スピーダー』は黄金スペックのひとつなのかもしれませんね」と堀越プロ。「あ、それでも長さは違うんですね。前回のは45.25インチで、今回のは45.75インチだから、今回のほうが長い仕様。素振りしてみると、その長さ分の違いを感じます。スウィングタイプでいえば、今回の長さだとアップライトにスウィングする人は切り返しのタイミングが取りづらいかもしれません。ヘッド自体は前回と同じく、ロフトは10度。フェースプログレッション(FP値)の大きさを感じます。出っ刃なので、ディープフェースの割に球が上がる印象です。前回のを思い出しながら試打してみます」(堀越)

画像: 試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

試打者/ほりこし・よしかず。試打経験から裏打ちされた豊富な知識と試打技量から大手メーカーのシャフトやヘッドの開発にも携わる。キング・オブ・試打。クレアゴルフフィールド所属

画像: 弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

弾道計測器は「ラプソード MLM2 PRO」を使用

1球目から「前回は打ち出しの高さに驚きましたが、今回は打ち出しの高さに加え、低スピン性能がすごいですね」と打った直後に口にする堀越プロ。データを見ると、まさにそのとおりで1923rpmと表示されている。続けて2球目を打つと、やはり2086rpmと、これまで打った21本のなかで一番のスピン量が少なくなっている。「私のスウィングと関係するのかもしれませんが、長くなったぶん、シャフトのお助け感が強まり、逆しなりが大きくなり、ヘッドスピードは前回より速くなる傾向にあります。またトウダウン量が増えるからか、ヘッドの上部に当たりやすくなっていて、そのため打ち出し角もそこそこ高い数値(2球の平均は15.0度)で低スピンになっています。逆に、この長さでスペックで球が上がらない人はドロップしてしまう可能性があるので注意が必要です。スピン量が多く、球が上がり過ぎて困っている人はこの45.75インチに、そうでない人は前回の45.25インチにするのがいいと思います」(堀越)

なお、ヘッドスピード42m/s前後で5球を打っての平均は下記のとおり。

ボール初速●60.9m/s
打ち出し角●15.9度
スピン量●2176rpm
キャリー●225.8Y
総飛距離●246.7Y

総評

「繰り返しになりますが、見た目はかなりの出っ刃モデルです。これは好き嫌いがあると思いますが、球が上がる仕様というのは間違いない。また、窒素を入れることで反発係数を抑えることができるとの触れ込みどおり、オフセンターヒット時でも初速は落ちていないです。45.75インチと長めなので、切り返しがゆったりめで、シャフトに助けてもらいたいゴルファーに向いていると思います。アウトサイドからロフトが立って入るゴルファーやスピン量が多いゴルファーにもいいと思います。最後に1点、注意点としては、FP値が大きいのでいままでよりもボール位置を半個分、右足寄りに置くとこのヘッドとシャフト(45.75インチ)の特性を最大限に生かせると思いますよ」(堀越)

画像: 「ハイバック&ディープフェースなので、低スピン性能は高いですね。またしっかり感のあるシャフトです」と堀越プロ

「ハイバック&ディープフェースなので、低スピン性能は高いですね。またしっかり感のあるシャフトです」と堀越プロ

田中ゴルフ

画像: 50年以上の歴史を誇る老舗店

50年以上の歴史を誇る老舗店

シニア、ツアープロからジュニアまで、様々な経験からご自身に合ったクラブを作ってくれる信頼できるショップだ。

住所/三重県四日市市西松本町10-36
営業時間/10時~22時(不定休)
電話番号/059-352-6623

田中ゴルフの看板猫たち

画像: 名前はコトラとボッサ

名前はコトラとボッサ

THANKS/クレアゴルフフィールド

※2024年12月12日11時00分、一部記事を加筆修正致しました。

「人気ゴルフ工房のぶっ飛びドライバー」のバックナンバーはこちらから

This article is a sponsored article by
''.