クラブの評価は2年ぐらい経たないとわからない
GD 大慣性モーメントにしても、ワイドスポットにしても、すべてのメーカーが同じ方向に向かっていて、だけど、メーカーによって少しずつ色が違うじゃないですか。好き嫌いで選べばいいのかもしれませんが、そこだけで選択するとメーカー主導のクラブ選びになってしまうような気がします。
長谷部 メーカーは常に自分たちの前作モデルを少し否定して、少し改良しながら物を出すということを努力していると思うんですけど、否定しすぎてしまって前作の良さを失ってしまうモデルチェンジもあると思うんです。
同じモデル、同じメーカーだからと言って、同じようなパフォーマンスが得られる保証もないわけですよ。だから、自分基準の良さを持っていただかないといけないのと、でもそれはさておき、メーカーの新しいものを楽しむ世界があって、もちろんそれでいいと思います。
良いものというか自分に合うものという観点で選ぶんだったら、自分の軸をしっかり持ちましょうと言いたい。ゴルフの新しいものを試す楽しみというか、それを評価する楽しみでやられているのはそれでいいと思います。この企画(ギア問答)を読んでいる人は、恐らく良いものを選びたいと思っている方が多いと思うで、あえてそういうことを言っています。
GD クラブって1世代前はわからないけど、2代、3代前になると、急に古臭く感じたりするじゃないですか。古臭くなった瞬間に性能が劣っているような気もする。だけど実際にはそんなに中身も構造も変わってないし、デザインが変わっているぐらいであって、そこまで変わってはいないんだけど、なんとなく性能が劣っているような気がしてしまいます。
長谷部 『ステルス』が登場しても、『SIM2』が長く支持されていたことを考えると、アマチュアの方たちにも評価されていたことがわかります。コリン・モリカワも『初代SIM』をなかなか手放せなかったっていうことを考えると、旧モデルを使い続けることがあってもいいんだろうなと思うんですよね。
新製品だからと言ってすべてが良いわけでもない。新しいチャレンジをしているメーカーをサポートしてくれている人たちもいて、それはそれでいいんですけど、本当の口コミ、良いものが見定められるのは、2年ぐらい経たないとわからないんじゃないですかね。
2021年2月発売のテーラーメイド『SIM2』は、後継モデルが出た現在でも根強い人気ドライバーとなっている。本当の市場評価は発売から数年経って見えてくる
GD 昔はこのクラブ10年使っているんだよ、なんてことが普通にありました。でも今は「3年使っているんだよ」っていうと、「まだ使っているの?」になってしまった。ゴルフクラブに対しての価値評価っていうのが変わってしまったような気がします。
460ccのドライバーに関して言えば、460ccで安定してるじゃないですか。長さも決まってきたし、テクノロジーもルールで頭打ちになっていることを考えれば、その範囲のものの中から良いものを見つけ、長く使うようにならないのかって思うんですが、どうですかね。
長谷部 シャフトの話を以前した時に、変えられないシャフト性能は変えられないと言ったのと同じように、変えなくてもいい状態が多分出てくると思います。耐久年数とか、打撃数で壊れることがない限りは、いいパフォーマンスが出せるケースは増えると思います。
GD フェアウェイウッドにはもうすでにそのような動きが起きていますよね。プロでも同じものを長いこと使っていることがあります。
長谷部 そうですね。ちょっと前に女子プロが、「私、このユーティリティ変えられないから、中古でもいいので探しています」というSNS投稿がありましたけど、5、6年経ってしまって、製造も中止されている。ヘッドのパーツもなくなった。 じゃあ次どうしようっていうようなことを考えるプロもいるぐらい、長く使い続けられるパフォーマンスのものもあると思うんですよ。
GD ゴルフクラブ市場の活性化といった意味で言えば、みんなが新しいものを買い替えてくれるのはいいかもしれないけど、ゴルフの道具というふうに考えれば、ある程度体に馴染むまで使った方が、自信と信頼が生まれるような気がします。
長谷部 月1回程度のラウンドでクラブに馴染むのって結構大変だと思います。練習場で打つのとコースで打つのとではまた違うので、ラウンド回数があまり多くない方は 1年ぐらいで替えるのはしんどいですし、3年ぐらい使って初めてその良さが分かってくるし、馴染むんじゃないですかね。
GD 毎週ドライバーを練習したとしても50回ですからね。50回で体に馴染むかって言ったら、馴染まないですよ。 5年使っています、10年使っています、やっと体の一部のように使えるようになりますというような気がします。
長谷部 新製品に飛びつかずに落ち着いて考えていらっしゃるゴルファーは3年ぐらい前のモデルでも十分使えるし、ようやく市場評価がまとまってきた頃に試していただいても全然いいと思います。
GD パターとウェッジに関しては、長いこと使うことに対して抵抗ないじゃないですか。これって体の一部としてあったほうがゴルフに得だと思うから、そういう感覚があるんだと思う。だけど、特にドライバーは一番目立つから、ドライバーぐらいは買い替えてやろうっていうようなことになるのかな?
長谷部 ドライバーはティーアップして打てる、ボールの状態に左右されない自己責任みたいなところがスウィング上あるから、割と新しいものを試しやすいし、コースの中で数多く打つクラブのひとつであるので、ドライバー選びってやっぱりスコアアップのためには重要だなって思います。
GD ゲームをスタートさせるのがドライバーなら、終わらせるのはパターかもしれません。始まりのクラブと終わせるためのクラブには、こだわりを持ったほうがいいように思いますが、道具として考えるとこの2本に関しては、体に馴染むまで使ったほうがいいような気がします。
長谷部 カーボンフェースのドライバーを「テーラーメイド」が2年前に出し3代目まで来ました。 じゃあこの先どうなるんだろうってみんな見ていたりするし、カーボンフェースの評価もある一定のところは出てきていると思うんですけど、 じゃあ3年使い続けた、もしくは4年続け使い続けた先どうなっているんだろうというのはまだ誰もわからない世界なのです。
今後どう評価されるのかわからないので、その辺が慎重になる人がいてもおかしくないのかなって気がします。まだ他のメーカーも追随してない。
ただこの秋にカーボンフェースドライバーが出てくるって噂もあるぐらいなので、そうなった時にまた市場がどう反応したり、カーボンフェースを使わなければならない背景や開発理由をどう評価するのかはちょっと見てみたいですね。
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