「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

シャフトの硬さはスウィングリズムと合わせるもの

GD ヘッドの重量で言うと、今回試打のヘッドに使用した『プロギア RS(2024モデル)』の3グラム、8グラムのウェイトを、3グラム、3グラムにしたらもっと振りやすくなるかも、と以前長谷部さんが言ったのを思い出して、試打ラウンドで試してみたら、これがばっちりはまったんですよ。

今多くのクラブがねじ式になってウェイト調整が可能になってきているので、ヘッドの重量配分だけではなく、ヘッド重量そのものを軽くする、重くする。そのような試みもやってみる価値はありそうです。

長谷部 ヘッド重量で5グラム変えるのはけっこう勇気がいるかなと思います。バランスの数値で言うと2から3ポイント変わるので。

大きな数値の変化ではあるんですけど、これによって劇的に振りやすさが変わるので、もしパワーダウンだとか、ちょっと振り切れないなっていう感じがある時は、まずヘッド重量を軽くするのはひとつの手だと思います。

それによっても振り感が変わってくるので、何も変えずにクラブ全体の振りやすさを変えるとなると、ヘッド重量の影響は大きいのかなと思います。

今回『スピーダーNX ブルー』の試打に使用したPRGR 『RS ドライバー(24年モデル)』。2つのウェイトの初期設定は3g、8gだが、これを3g、3gにすると格段に振りやすくなった。ウェイトは別売している

GD シャフトのフレックスを下げるのだったら、ヘッド重量も下げたほうがいい?

長谷部 ヘッド重量を変えずにシャフトだけ軟らかくしてしまうと、Rでやさしくしたはずなのに、ヘッドがもたついてしまって振り切れない、タイミングが合いづらくなるという弊害があるとすると、シャフトをやわらかくすると同時にヘッドも軽くすればそれほど極端にシャフトのしなり幅が結果的には変わらない。動的に変わらないんだとすると、そっちのほうが振りやすく感じるんじゃないでしょうか。

GD トップからの切り返しでヘッドが効いてくるような違和感がなくなると……。

長谷部 そうですね。静的な数値で言うと、振動数を計測すれば明らかに違ってきます。シャフトのしなり幅が大きいRシャフトにすると、振動数が小さくなるんですけど、バランスを軽くすることによって若干そこは補正されて、振動数をSシャフトに近づけることも可能でしょう。そうすると振った時の振り感の差は小さくなると思います。

GD 下手だからRシャフト、上手いからSシャフトではなく、そこに関係なくリズムよく振れるかっていう話になるわけですね。

長谷部 不調だった渋野選手がシャフトを少しやわらかい以前のシャフトに戻して復活しました。 石川遼選手が『ツアーAD』の新しいシャフトでは軽くやわらかい6Sにして優勝しました。

7Xとかハードな硬いシャフトを使っていて、 「硬い=曲がらない」って言っていた人たちが、軽くやわらかくしている傾向を見ると、やっぱりプロでさえ勘違いしてしまう世界だと思うので、シャフトのしなりは、あくまでもタイミングを合わせるだけの話であって、距離とか方向性に大きく影響するものではなく、むしろ今のスウィングに合うかっていうことに尽きるのかなっていう気がします。

GD 一般的にスウィングを改造しているときにクラブは替えないほうがいいという定説があります。でも、スウィングが変わることで、合うクラブも変わるってくる可能性があるので、スウィングとクラブ、両方を考える必要がありそうですね。

長谷部 プロがスウィングを劇的に変えようとして頑張っていても、先ほど言ったように、リズムまでは大きく変わらないはずです。スウィングプレーンを大幅に変更したとしても、気持ちよく振れるリズムは変わってないような気がするし、それを大きく変えようとして迷路にはまってしまうケースももちろんあるので、その中で気持ちよく振れるシャフトを見つけることのほうが安心して振れるから、結果的にスウィングが良くなるという相乗効果があると思います。

GD スウィングを変更中にシャフトのスペックを変えたくなるのは、プロもアマチュアも同じ?

長谷部 プロもやりたくなる。練習場に行くたびにスウィングが違ってしまうのがアマチュアなので、シャフトを変えてみようかなって思う機会はたくさんあると思うんですよね。

でもその時に絶対に気を付けなきゃいけないのは、フレックスをいきなりいじらないで、クラブの総重量とかシャフトの重量とかをいじった方がまだ怪我が少ないのかなって気がします。

GD アマチュアの多くはSシャフトが良くて、Rシャフトが良くない、みたいな考えを持っている人は多いと思うんですよ。

長谷部 これは糸巻きボール時代のコンプレッションと似ているものがあって、コンプレッション100はヘッドスピードが速い人用で、ボールがつぶれにくいから効率よく飛びます。 コンプレッション90とか80はヘッドスピードの遅い人のインパクトの瞬間のつぶれ具合の度合いを調整しています。

こういったことが糸巻きボールの時代にあって、クラブもパーシモンヘッドとスチールシャフトだった時には、ヘッドスピードが速い人はあまりしならせたくない、もしくは適正なしなりを入れたいからSシャフトにする。ヘッドスピードが遅い力のない人がRシャフトという選ぶ基準がある一定の時期にありました。

その流れを組んでSシャフトはヘッドスピードが速い人向け、Rシャフトはヘッドスピードが遅い人というジャンル分けをメーカーがしてしまっていることがひとつ弊害になっているのかなと思います。あくまでも総重量が350gくらいあった時代の話ですが……。

とはいいながらも、スウィングリズムを考えた時のしなり量と手元の硬さについては、一概にそれでは収まりきれない人たちがいるのも現実です。女子プロでもヘッドスピードが速くてもSRシャフトを使っている人もいるし、逆にヘッドスピードがそれほど速くなくてもSシャフトを使っている人がいます。

女子プロの中でもそういうことがあるとすると、アマチュアも振ってみた感じで自分はどっちが振りやすいのかって、ちょっと目線を変えないと、一概に自分のヘッドスピードが遅いとか、ドライバーが200ヤード以内だからRシャフトだと決めてしまうのはちょっと危険なのかなって思います。

GD 順番を整理すると、重要帯を決めて、シャフトのブランドが決まったら、最後の絞り込みがフレックス。ただ、最初に言ったように5Sの中からどれが良いんだろう? というのが一般的な選び方だと思います。なんとなくこのシャフトが合いそうだなってなった時に、最初からSシャフトと決めないで、その中のフレックス違いを試してみるのがいい?

長谷部 (ギア問答#17)女子プロに人気の『スピーダーNX』、ブルー、グリーン、ブラックを打ち比べたときに感じたのは、自分は手元の硬さを感じやすいので、ブルーが1番振りやすかった。

グリーンだと硬い感じがしたので同じように振り切れないっていうイメージがありました。だから、同じシリーズの中でも性能の違う3つがあるとすれば、その中で同じSシャフトは選べないんですよ。グリーンだったらおそらくSRかRを選んだほうがいいと思うし、ブラックだったらもう少し硬めのSを選びたくなる。これが個人で感じる振り感です。

GD 同じメーカーの兄弟ブランドでも、ブランドによって振り感の合うものがそれぞれ変わってくる可能性があると?

長谷部 その可能性は多分にあるので疑ってみる必要はあります。なので、ブラックの中で選びたいってなったら、自分はSXを選びたくなるし、グリーンの中で選びなさいって言われたら、SRかRを選びたくなるっていうのが、自分の感覚にはありました。

『NXシリーズ』のブルー、グリーン、ブラックでは同じ重さ、同じフレックスでも振り感が異なる。ブルーがSなら、グリーンはSR、ブラックだとSXをチョイスしたいとは長谷部氏は言う

GD 最後の決め手は振り感なんですね。

長谷部 気持ちよく振れるものを選んでいかないと、ヘッドのパフォーマンスが生かせないことになってしまうので、躊躇なく振り切れるシャフトを選ぶ、もしくはコントロールショットを重視でいきたいんだったら、コントロールできるシャフトを選んでくださいって言いたいですね。最後の調整がフレックスだということは、間違いはないでしょう。

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