その前に同GCの歴史を簡単にたどろう。1930年に東京GC朝霞C設計のため招聘されたチャールズ・H・アリソンは廣野へ招かれ、設計図を書き上げた。英国遊学でアリソンと顔見知りの伊藤長蔵が現場監督になって造成し、32年に開場している。何度かの改修を経て2019年に全面改修へとかじを切った折、全英オープンを開催するコースのリニューアルを多く手掛けたマーティン・イーバートに依頼し、原初への回帰をテーマにした。同GCに保管されていたアリソン手描きの設計図を正確に立体化して復元するために、シェイパーやキーパー、ドローン技術者らとチーム化。バンカーやグリーンの傾斜などレーザースキャナーによる3D測量まで実施し、9カ月かけて完成した。
その4年後に開催された日本アマ。優勝した15歳の松山茉生(まお)選手は、「長いのにパー70。ラフも長いので飛ばすことよりフェアウェイをキープしないと。タフなコースで耐えるゴルフでした」と振り返ったが、松山選手のスコアは54ホールで7アンダー。長くてタフというわりには……。
同大会では1番と9番のパー5をパー4に変更したが、初日首位に立った鈴木隆太選手は1番(448ヤード)の2打目をウェッジでバーディとし、9番もバーディ。ちなみに松山選手のドライバー飛距離は320ヤードだそう。
予選通過したなかで最年長47歳の豊島豊選手は、「難攻不落に見えますが、IP点まで軽々と運ぶ若い人には無縁でしょう」と話す。
飛ばす人ほど有利という世界の伝統的コースが抱える悩みを同GCも垣間見せてくれたわけだ。
「厳しいコースだと言われますが、花道からランディングしていくルートを忍ばせているホールもあり、そのあたりはフェアだと感じました。日本で近年改修されたコースでは一番成功した例だと思います」(前出、豊島選手)
これからのメジャー開催コースの課題は見えたはずだ。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年7月23日号「バック9」より