幼少の豪州遠征がレッスン現場で生きている
「これで荷物は全部かな」
いつもの中学校のベアグラウンドや砂場とは異なる環境に向かう準備をしていた。明日からは海を渡り異国の地でひと味違うゴルフ文化に触れる。祖父の知り合いの計らいで年に一度、オーストラリア遠征が行われていた。海外の広大な施設を利用して練習できることは秀憲にとって楽しみなイベントだった。そして普段やっている中学やコース合宿とは別角度のゴルフの練習を体感できた。
「またあの楽しい練習できるのかな」
胸を躍らせながら秀憲はオーストラリア遠征を心待ちにしていた。日本では味わえない環境だけでなく、秀憲の気持ちをくすぐられる理由は他にもあった。
「ジュニアゴルファーに対してゲーム性を重要視している印象があったんです。楽しみながら競わせる練習が多かったんですよね」と当時を振り返った。
印象的だった練習方法のひとつに、アプローチ練習場にオリジナルのホールを設けた練習があった。ルールは先攻後攻を決めて各ホールの条件を少ない打数でクリアした者が勝者となる。途中でミスをすると相手に順番が渡り、相手が失敗するまで待たないといけない。各ホールの攻略法は指導者が教えるのではなく、自分で考えて進み競い合うところが、低学年の秀憲の好奇心が刺激された。
「小学生の時のオーストラリア遠征の経験は、今の僕のレッスンでも参考にしているんです」と秀憲の指導現場で取り入れている。
実際にゲーム性を持たせた練習をジュニアにしてもらう時は、具体的な打ち方や技術の指示はしない。各シチュエーションを想定したステージで上手くいかなかった時は「一度、自分たちで考えてごらん」と楽しみながらも、自分で工夫する力を養うことを狙っている。
この他にも秀憲は海外で様々なゴルフ文化に触れていた。韓国の選手達が練習している場面に遭遇し、その時に見た光景が今でも脳裏に焼き付いている。
それは高校の時にアジア大会で日本代表としてマレーシアに訪れた時だった。