欧米はデータと感覚の両方で個性を創る
「練習場の端から端まで沢山の選手がいたんですけど、全員同じスウィングをしていて驚きました」と話す。
機械のように繰り返される様はある種、スウィングの型が定められているかのように感じた。当時の韓国チーム独自のスウィング理論が存在し、選ばれた選手達はその方程式に当てはめられていたのかもしれない。もしも独自の型があったのならば「自分に当てはまらずにゴルフが駄目になってしまった選手もいたんじゃないかなと思います」と言う。
これまでの自分のスウィングをリセットし、矯正を余儀なくされたことで苦しんでいる選手がいたかもしれない。続けて「僕のように色んなことを試していくのとは対照的で、ひとつのことをずっとやり続けて極めていくやり方もあるんだなと感じました」。
さらに“ゴルフを上達する“という共通した目標に対して、ゴールへ辿り着くまでの過程は様々な方法があることを学んだ経験だった。
学生時代だけでなく年齢を重ねてからも短期間で海外へ足を運ぶこともあった。20代の初め頃にアメリカへ渡り、肌で体感した考え方に感銘を受けた経験がある。それはメジャーリーグに携わっている関係者と話す機会があり、「選手に何かを伝える時にはその根拠をセットで示すことを心がけている」と説明された。
「何をやるにしても裏付けを大切にしていると感じましたし、だからその手段としてデータを細かく扱っているのだなと思いました」
そしてアメリカに渡る前から秀憲自身もひとつひとつの物事に対して、裏付けを明確にしながら取り組むスタイルが確立されていたこともあり親近感を覚えた。さらに"アメリカ=最先端"と思われがちだが「データだけでなく個人の感覚も踏まえて、フィードバックに落とし込んでいる」と秀憲は当時の経験から振り返る。
だからこそ様々なツールを使いデータを扱うことだけを真似するだけでは海外の選手に打ち勝つことは難しいと考えている。形式的な手段の模倣だけでなく、その方法をどのように生かしてさらにブラッシュアップさせるかまで取り組むことで差を縮める第一歩に繋がるはずだ。
「データの数字だけに頼っていたらある種の型にはまってしまうと思うんですけど、そのデータをベースに自分の感覚と擦り合わせて、自分だけのオリジナルの型をアメリカの選手達は創り上げていると思います」
現在のPGAツアーで活躍する選手達も科学的なツールを使い、データを参考にしながら練習に取り組んでいるが、一人一人のスウィングを見てみると誰一人として同じ動きをしていない。秀憲がアメリカで感じた選手の感覚とデータの活用法を上手く擦り合わせたひとつの形が十人十色のスウィングと結果に出ていると言える。
秀憲がゴルフ人生を歩む中で試行錯誤し、辿り着いた”オリジナルの型を創り上げる”という考えは欧米でも行われていた
最近では日本のプロゴルファーや一般のアマチュアも弾道測定機を使い、数値を基に日々のゴルフの上達ツールとして導入している。しかし現状では「数値だけを頼り」にしているように秀憲は感じ危惧している。データと自分の肉体の感覚の両方を尊重したハイブリッドな考え方で取り込むことで、オリジナルのゴルフの型を創り上げる手段として正しく効果が発揮すると考えている。
このように各年代で触れた海外のゴルフ文化は確実に現在の秀憲のレッスン現場に生きていた。同時に秀憲がモットーとしている自分に合うオリジナルのゴルフの型を創り上げるという考え方が、海外の現場でも実践されていることを肌で体感した貴重な経験のひとつだった。
【プロフィール】
伊澤秀憲(いざわひでのり)/1991年6月生まれ。神奈川県出身。叔父伊澤利光の父であり、祖父の利夫氏に2歳からゴルフの英才教育をうけながら、ジュニア時代は同世代の松山英樹、石川遼らとしのぎを削ってきた。YOUTUBEチャンネル「アンダーパーゴルフ倶楽部」にてショートゲームを中心とした動画を配信中!
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