「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

コラボシャフトの台頭で、ヘッドの性能差が鮮明となった今年のD-1グランプリ

GD 今回はギア問答! スペシャルバージョンで「D-1グランプリ2024」のネタバレ御免企画をお届けします。D-1グランプリは1998年から続く月刊ゴルフダイジェストの名物企画で、3人の試打者が人間試打マシーンとなって、「本当に飛ぶドライバーはどれか?」を探し出す企画です。男子プロ、女子プロ、トップアマがそれぞれ10球打ちベスト3球の平均飛距離で競うガチンコ勝負になります。

今年のエントリーは31本。その上位16本が決勝トーナメント進みます。この結果を見て何か感じるものはありますか?

【予選結果】
1位/タイトリスト GT2 (260.4Y)
2位/タイトリスト GT4 (258.2Y)
3位/オノフ KURO(257.1Y)
4位/テーラーメイド Qi10 LS(256.3Y)
5位/タイトリスト GT3(255.9Y)
6位/ヤマハ VD/R (252.6Y)
7位/ピン G430 MAX10K(251.7Y)
8位/ヨネックス イーゾーンGTタイプS(251.3Y)
9位/ミズノ ST-MAX230(251.1Y)
10位/プロギア RS(250.9Y)
11位/プロギア RS F(250.8Y)
12位/テーラーメイド Qi10(250.3Y)
13位/キャロウェイ パラダイム Ai SMOKE MAX FAST(249.8Y)
14位/キャロウェイ パラダイム Ai SMOKE ♢♢♢(249.5Y)
15位/プロギア RS MAX(249.2Y)
16位/キャロウェイ パラダイム Ai SMOKE♢♢♢S(248.9Y)

長谷部 タイトリスト勢が上位に来ていますね。『テーラーメイド Qi10』も上位に来ている。ちょっと気になるのがキャロウェイの『パラダイム Aiスモーク』と『プロギア RS MAX』。やさしいと言われているモデルが下のほうに、アスリート志向の強いモデルが上のほうに来ている傾向が見えます。ただ、『ピン G430 MAX 10K』が7位なので、慣性モーメントが大きいからといって、けっして飛ばないわけではないとうことが、実際に数字にも出ています。

もちろんテスターとのマッチングは当然あるのでなんとも言えないですけど、今人気のモデルが上位に食い込んでいるところはあります。ただ、最新モデルの『タイトリスト GT』があまりにもいいパフォーマンスを出してきているので、ここは正直びっくりですね。

注目ドライバーのひとつテーラーメイド『Qi10シリーズ』もLSとレギュラーモデルの2本が予選を突破して決勝トーナメントに進出している

GD メーカー別で見てみると、かたまりのようなものが見えてきます。外ブラ、国内メーカーが入り乱れている感じですが、「ブリヂストン」、「ダンロップ」が予選で姿を消してしまっています。

長谷部 そうですね。「スリクソン」がベスト16に残らなかったっていうのは意外な結果だと思います。「キャロウェイ」、「テーラーメイド」の最新モデルはしっかり予選に残っているわけなので、このあたりが販売の実績通りの結果を残すのか? それとも実は飛ぶドライバーは別にあるんだよっていう結果になるのか? 準決勝あたりに残っているクラブは、ほんとに絞られてくるので非常に面白い結果になるかもしれませんね。

国内勢トップで予選を通過したのがオノフ『KURO』(予選3位)。タイトリスト『GT』3兄弟に打ち勝つことができるのか?

GD 過去のD-1グランプリを見てみると最新モデルが上位に来る傾向があるように思います。D-1グランプリは本当にガチンコ勝負でやっているので、クラブの進化というのは1年間でけっこうあるんだなっていう印象があります。ゴルファーが使う道具だからテスターが振りやすいものが、良い結果を生んでいくのが、D-1グランプリのひとつの見どころになります。

長谷部 試打者の横田英治プロが「最近のクラブほんと振りやすいよね」ってボソっと言っていたのが気になっていて、以前、別の機会(ギア問答#12)でコラボシャフトの話をしたときにOEMのいわゆる独自で自分たちが開発する専用シャフトではなく、「co-branding」シャフトが増えてきていると言ったなかで、その功罪に触れました。

『テンセイ』であったり、『ツアーAD』、『スピーダー』や『ディアマ』のコラボシャフトがテスターにとって非常に振りやすい中調子のシャフトに仕上げてきていることを考えると、ヘッドのパフォーマンスも深重心傾向になり、その中で反発をギリギリまで攻めてくることがあったりするので、ヘッドの違いがよりわかりやすいようになってきているのかなと思います。

ヘッド専用のシャフトを各メーカーが作らなくなってきたからこそ、D-1グランプリのテスターにとっては、どれも同じように振りやすくて、ヘッドの違いがそのまま順位として現れやすくなっているんじゃないかなっていう気がします。

GD 全体的にシャフトは中調子で、ヘッドは深重心という大きな流れの中で、微調整によってどれが一番振りやすいのか、飛ぶのかっていう戦いになっている?

長谷部 そうですね。あとはロフトが合うか合わないか。たまたま指定のロフト設定がテスターとマッチして、スピン量がどれぐらいになるのかっていったところが気になるのと、フェース面上の重心設計とオフセンターヒットにどれだけ強いか、ほんとに微妙な違いのところが結果として現れるような気がします。

それが平均値としては落ちてしまうような結果にもなり得るので、球に当てるのが上手いプロ、上級者のアマチュアだとしても、ある程度の許容範囲の大きなクラブが勝ち進む可能性はあるでしょう。 また一方で圧倒的なロースピンで前に行く機能を持っているクラブが最終的に残るかもしれないなっていう、この2つの戦いですよね。

GD 今日決勝トーナメントの1回戦を見てきましたが、打球の飛び方が変わったような気がしました。

長谷部 あきらかに吹ける、吹き上がるようなスピンの入り過ぎた打球はほとんどなかったと言っていいですよね。 ちょっとスピンが多いかな? という打球でも、(フライトスコープの)データだと3000rpm程度に収まっているということは、理想の弾道にどのドライバーも近づいていて、中でもそれがロースピンになれば球が前に強く行く、打球が高ければそれなりにスピンがちょっと増えて多くなってしまうっていう傾向があるぐらいなので、非常に高いレベルの争いにはなっていると思います。

D-1グランプ決勝トーナメント1回戦、2回戦の舞台は、東名カントリークラブのドライビングレンジ。やや打ち上げのためキャリーで飛ばせるドライバーが有利になる

GD 次回は決勝トーナメント1回戦8マッチの勝ち抜け予想をお願いします。トーナメントが始まる前に聞いた長谷部氏の予想は当たっているのか?お楽しみに!

●D-1グランプリ2024の模様は、月刊ゴルフダイジェスト10月号(8月21日発売)で掲載いたします。

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