「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか?その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられていたんですね……。

2024年最強のドライバー試打! 今年の見どころは?

GD 前回に続き、最強ドライバー決定戦! D-1グランプリ2024のスペシャルバージョンをお届けしたいと思います。

D-1グランプリは1998年から続く月刊ゴルフダイジェスト誌の名物企画で、3人の試打者が人間試打マシーンとなって、本当に飛ぶドライバーはどれかを見つける企画です。男子プロ、女子プロ、トップアマがそれぞれ10球打ちベスト3球の平均飛距離で競うガチンコ勝負企画になります。その決勝トーナメントが今年も7月某日、気温31度のなか、東名カントリークラブにて行われました。

長谷部 ナマでD-1グランプリを見学させてもらって非常に楽しかったですね。楽しかったっていうのは、最近はインドアでのテストが主流になっているので、飛び姿を1つ1つ確認できたということは、単に距離の比較だけではなく、曲がり具合や球質の違いを実際に見ながら、順位とはまた違う評価を見聞き出来たのは非常に有意義でしたね。

D-1グランプリは男子プロ、女子プロ、トップアマの3人が人間試打マシーンとなって真のドライバーの飛距離性能を検証する企画です

GD 決勝トーナメントに進んだ16本でこれが勝ち進んでいくだろうなと感じた注目クラブがあったらあげてもらえますか。

長谷部 そうですね。まだデビューしたてというか、あまりまだ情報も出ていない『タイトリストGT』三兄弟が予選上位を占めたというのもびっくりでしたが、クラブを実際に見て、手に取ってみると1つ1つの熟成された完成度というのを感じました。

タイトリストGTに関して言えば、試打者の傾向にもよるのですが、低ヘッドスピードの女子プロをはじめ、どんな方にも馴染みやすい機能をそれぞれ持っているような気がしました。

それと比較的注目されにくかった日本ブランドのもの中にも、かなり距離優位であったり、音が良かったり、打感が気持ちいいみたいなクラブもあったので、「ヨネックス」をはじめ、「プロギア」の新製品もけっこう戦えそうな雰囲気がありましたね。

GD 「タイトリスト」に関して言えば、今ツアーシーディング(ツアープロによるテスト)が盛んに行われていて、前モデルの『TSR』からのスイッチが順調に進んでいるようなことが伝わってきていますが、『GT』の前評判も加味して何か感じるものはありましたか?

長谷部 事前にツアー情報を検索して色々読んでみたところ『GT3』が比較的浅重心の設計でありながら、『TSR2』からのスイッチがあるという傾向も見えていたので、本来なら「ハードめ」と言われる『GT3』、もしくは『GT4』が、どこまで3人の試打者の中で受け入れられるのかを興味を持って見ていました。

比較的そういう意味ではハードすぎず、「あれ、これ結構みんな打てそうだね」っていうコメントがプロから出ていたので、そういったところが今後注目されていくのかなという気がします。

あともう1つは、深重心のマックス系。この辺のクラブも予選をしっかり勝ち抜いてきました。『Aiスモーク MAX FAST』、『G430 MAX 10K』、『プロギア RS MAX』。この辺がどこまで戦えるのかを注目して見ていました。

GD 「タイトリスト」は常に正統進化を言うメーカーですが、『GT』が狙っている性能の方向性について何か感じましたか?

長谷部 ツアー契約、もしくは使用者が非常に多いところから来るフィードバックのきめ細かさを感じます。小さいヘッドを使いながらも少しやさしいほうがプロが好むという非常に微妙なさじ加減での調整を今回行っているような気がします。

設計の手法とか構造とかまったく情報が(この時点では)ないのでなんとも言えませんが、若干重心が深くなっているのか、もしくは慣性モーメントを大きくするような工夫がされているのか、見た目にはわからないところでの微調整をしっかり行っているのかなって思います。

それとフェースプログレッションをモデルの特性をしっかりと踏まえつつ、構えた時に違和感ないなかで、打ちやすさを重視する方向に調整されているんじゃないか。想像ですけど。

GD 「テーラーメイド」、「キャロウェイ」は、プロモデルとアマチュアモデルを明確に分けているじゃないですか。でも、タイトリストに関しては(GT1が出るかどうかわかりませんが)GT2、3、4はいずれもプロもアマチュアも使えるようなマーケティング商品のような気がします。

長谷部 「タイトリスト」はアイアンのシリーズも含めてですけど、アマチュアが使えるモデルもありますよということで、ヘッドの大きなものは存在するんですけど、比較的アスリート志向のアマチュアとか、いわゆるハンディキャップが少ないアマチュアがターゲットになるようなラインナップで、どちらかといえばプロ上級者に偏っているという気はします。

「テーラーメイド」や「キャロウェイ」は、それこそハンディキャップの多い、スコアで言えば100以上叩くような方でも使えるモデルをラインナップしていることからも、3つのモデルが出てくれば、その振り幅はテーラーメイド、キャロウェイのほうが大きいのかな。

タイトリストは非常に狭い範囲の中で3モデルもしくは4モデル出してくるので、さじ加減が非常に微妙なバランスで行われていて、どれを打っても上級者は満足するみたいなところまで来ているという気がします。

GD D-1グランプリは1発の飛びというよりは、平均的にどれが1番飛ぶのかを決めるコンセプトでやっているわけなんですけど、アマチュアモデルとツアーモデルを比べると、ツアーモデルのほうが飛ぶ印象があります。

長谷部 テストをする方法に関しては長年の歴史があるD-1グランプリなので何かを申し上げることはないんですけど、ある一定のレベルの人たちがきちっと毎回同じようなスウィングをするということを踏まえて考えると、球が揃ってくることを求める人たちは気持ちよく振れるクラブがいい。そういったところで必然的にヘッドの機能が定まってくるという気がします。

例えばですけど、スライサー向けのドローバイアスが強いものが勝ち残ることも考えにくいですし、それはD-1グランプリのテスターにとっては振りにくいものになるし、『ゼクシオ』みたいな超軽量でロフトの多いものが残る可能性が低いのは、やっぱりターゲットがずれてくるんで、そこは月刊ゴルフダイジェストの読者とマッチしてくるとは思います。ゴルフに興味があって、アスリート志向で、うまくなりたいという人たちに向けてのクラブのテストという意味では、結果もテスターも読者もマッチしてるのかなっていう気はしますね。

パラダイムAiスモークからは♢♢♢と♢♢♢Sの2モデルが決勝トーナメント進出。打点が安定している上級者には低スピンモデルが有利?

GD お助け機能の入っているクラブというよりは、3人のテスターが打ち進めていって、最後まで安定的に飛ぶドライバーが優勝する傾向はあります。準決勝、決勝が打ち下ろしで、ベスト8まではやや打ち上げでキャリーが必要という状況の中でやっているので、ニュートラルなクラブ性能が求められると思うんです。

長谷部 その通りだと思います。毎回スウィングが変わってしまうアマチュアにとってみれば、軽く、ほんとに手打ちでも打ちやすいようなクラブで球がつかまる機能が重視されるべきだと思うんですけど、D-1グランプリはアスリート、プロがしっかりと認める今年のナンバーワン決定戦なので、今回テストの状況を目の当たりすることができた中でも、やっぱりそういったことがデータ以外にもコメントとしても見られたので、非常に良いテストをやっているなという印象持ちますよね。

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