国内女子ツアーは前半戦を終えて今週から後半戦へ入る。昨季、自身のシーズンベストとなる2勝を挙げたが、今季はまだ優勝に手が届いていない青木瀬令奈。若手が台頭するツアーにあって、現在の“体・技・心”を語ってもらった。
画像: 青木瀬令奈。1993年、群馬県生まれ。7歳でゴルフを始め18歳でプロ入り。プロ13年目となる昨季2勝。通算5勝。9年連続でシード権を継続中

青木瀬令奈。1993年、群馬県生まれ。7歳でゴルフを始め18歳でプロ入り。プロ13年目となる昨季2勝。通算5勝。9年連続でシード権を継続中

GD 前半戦を振り返って。

青木 前半戦はトップ10が7回と今までのシーズンで一番多く、予選落ちの回数も少なくて安定感はあったなという印象です。トップ20くらいにコンスタントに入ったことは成長を感じられた部分ですが、5位が最上位だったので、優勝争いできなかったのは改善点です。その中でもオフから斎藤大介トレーナーと取り組んできたフィジカル面での成果が飛距離に表れてきました。

GD 体・技・心の“体”の面では飛距離が伸びた?

青木 ドライバーだけでなく、PWまで全番手の距離が伸びて、その距離を合わせるのが5~6月は大変でした。特に5Wとか、長いクラブだとキャリーで10ヤードほど飛ぶようになったので。

GD ラインに飛んだのに奥のバンカーへ、といった状況もあったのでは?

青木 そうなんです。ナイスショットが奥エッジキャリーになることが増えたり、パー3で他の選手が7Iで打ったな、という時に私が8Iを持っているという状況が出始めたんです。
すると、本当にこれでいいのかなって一瞬の迷いというか、ちょっと振りすぎちゃったり、逆に抑えちゃったり、普通に打っていけば良かったのにっていう、自分を信じ切れずに足踏みしちゃったなっていうところですね。

GD 飛距離が伸びたのはどういった要素が大きかったですか?

青木 スイングカタリスト(スウィング動作や弾道データの解析ソフト)で計測すると、地面を踏む力と反発を生むブレーキ力の数値が30ほどアップしたんです。

画像: 取材は、福岡県で行われた大東建託・いい部屋ネットレディス(青木は20アンダーで5位)、翌日の月曜日に茨城県のフレンドシップCCにて。秋に発売予定の朝日ゴルフの新しい距離計測器のプロモーション撮影後、時間を頂いてインタビュー

取材は、福岡県で行われた大東建託・いい部屋ネットレディス(青木は20アンダーで5位)、翌日の月曜日に茨城県のフレンドシップCCにて。秋に発売予定の朝日ゴルフの新しい距離計測器のプロモーション撮影後、時間を頂いてインタビュー

GD 実際に筋肉が大きくなったりといった変化は感じますか?

青木 体の部位が大きくなったという感覚は全くなく、連動性や感性はそのまま、感覚が変わらずに飛距離に生かせていると感じています。でもマッサージをしてくれるトレーナーからは筋肉量が増えたねと言われますね。

GD “技”の面では、前半戦はベースアップした体と飛距離でスコアを作るのに苦労して、それをアジャストしてきた感じ?

青木 最近はティーアップした時にヘッドスピードを1m/s落とす感じで振るとか、上に高く飛ばして距離を合わせるとか、そういった技術が増えました。ヘッドスピードが上がり、球に高さが出せるようになったので、あえて球を上に吹き上がらせて調整しています。

「瀬令奈さん“サムライ”みたいです」と言われます(大西)

青木を間近で見守り続けているコーチ兼キャディの大西翔太。ゴルフの変化を次のように語る。

大西 フィジカルが強くなったことで、バリエーションが増えましたね。
例えば、スプーンに関しても6球くらい球種があって、高いドロー、低いドロー、高い球、低い球の真っすぐ、高いフェード、低いフェードと。

GD なるほど。では、前半戦で印象に残ったショットやプレーをひとつ挙げるとしたら……。

青木 5月のブリヂストンレディスです。トレーニング効果があの試合から急に出始めて、ショット全般が飛びだしました。飛ぶのはいいんですけど、(会場の袖ケ浦CCは)ドッグレッグが多くて、ショットが狙ったラインに飛んでもランアウトして林ばっかり。トラブルショットをめっちゃやった記憶です。(木の枝による)空中ハザードも多くて、木の横から回したり、上へ行ったりっていうショットの連続でその週はそういった技術がレベルアップしました。経験が積めたなと。ミスショットというより、自分の想定よりも明らかに飛んでいる。バンカー越えまで215ヤードとかだと、今までは迂回していたのが、迂回するとランアウトするわけです。

画像: 5月のブリヂストンレディスオープン最終日。「朝イチから木の横で打っていました」と思い出して苦笑してしまうほど、大会を通じてショットが想定よりはるかに飛んでいたという

5月のブリヂストンレディスオープン最終日。「朝イチから木の横で打っていました」と思い出して苦笑してしまうほど、大会を通じてショットが想定よりはるかに飛んでいたという

だから、実際にはバンカーの上を狙っていかなきゃいけないんですが、無意識に反応しちゃってバンカーを避けて結局、普通に林やないかい(笑)みたいなのがありましたね。

GD 飛距離が伸びてスコアメイクに苦しむ一方で、経験値にはなったと。“心”の面ではどうでしたか。

青木 結果は悪くなかったし、何より飛距離の面や球の勢いが変わったっていうのは、クラフトマンやトレーナー、コーチ含め、現場にいる皆さんに感じていただけていて、いいゴルフしているねと言われることが増えました。自分にとっても自信になっていますし、充実していますね。年々成長を実感し、『ゴルフが好き』という気持ちが増しています。

GD 一方で、青木プロといえば、昨年の平均パット数1位のパットの名手。今季はどうですか。

青木 3月は全然ダメでした。そういう意味では前半戦は自分の強みを生かせていなかったと思います。今は少しずつ良くなっている感じです。パターは試合とコンディションに合わせて替えていて、今季も10本くらい使い分けていますよ(笑)。今は『ホワイトホットOG』のセンターシャフトを使っていますが、実は今年の1月、沖縄合宿の飛行機移動でネックが曲がっちゃったんですよ。ダブルベントみたいな感じになってちょっとアップライト気味に。でも、いい味ついたなって感じで、逆に気合入っちゃいました(笑)。

大西 どんな状況でも、ポジティブで男気にあふれているんです。

画像: ティーチングプロ兼キャディとしてツアーに帯同する大西翔太コーチと

ティーチングプロ兼キャディとしてツアーに帯同する大西翔太コーチと

GD まさに“瀬令奈の心”ですね! 最後に後半戦への意気込みをお聞かせください。

青木 飛距離については7月に入ってアジャストでき始めてスコアにつながっています。具体的にはドライバー以外の番手のティーアップ時にヘッドスピードを1m/s落とすとか、カットだったり、カットで短く握ってさらに飛距離を落とすなどの精度を詰めていきます。トレーニングのローテーションも確立してきたので、あとは優勝だけです。あと3つ残っているメジャーで勝ちたいです。

大西 青木プロは今、周囲から「武士みたい」って言われるんです。“覚悟”が決まった佇まいがそう感じさせるんですかね。

GD 確かに。“サムライ・セレナ”ですね。

PHOTO/Shinji Osawa
THANKS/Friendship CC

※週刊ゴルフダイジェスト 2024年8月13日号 より

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