「最後までショット力を信じられたのがよかった」(桑木)
笑顔の花が咲いた。
最終18番で桑木は1メートルのウィニングパットを沈めると、パターを持った右手と左手を高々と突き上げた。6月末の資生堂レディスで初優勝を果たしたときは感激の涙を流したが、この日は涙はなし。グリーンを埋め尽くしたギャラリーの声援を柔らかい笑みで受け止めた。
優勝インタビューでも落ち着いて受け答えをした。
「とても緊張したんですけど、ショットの調子がよかったので、最後までショット力を信じられたのがよかったです。(2勝目は)うれしいです。今は安心したというか、ほっとした気持ちでいっぱいです」
大混戦を制した。
脇元華と並ぶ1打差トップタイからスタート。4番で4メートル、6番で3メートルのバーディパットを沈めて流れを呼び込んだ。10番で第3打を2.5メートルにつけて通算13アンダーまでスコアを伸ばした時点では独走態勢に入りかけていたが、13番でこの日初めてのミスショットが出た。ティーショットを左へ曲げて、第2打は木がスタイミーになり、右へ打ち出すしかなく、このホールはボギー。16番もカップの右手前8メートルから3パットのボギーとし、通算11アンダーで上田桃子、鶴岡果恋に並ばれてしまった。
勝負どころの集中力でピンチを抜け出した。
16番でこの日2つめのボギーをたたいた直後の17番でスーパーショットを披露した。フェアウェイからピンまで130ヤードの第2打を9Iで打って、ピン左奥2メートルにピタリ。このバーディチャンスをしっかりとものにして、再び単独首位に立った。
「16番で3パットしてしまって、萎えかけたんですけど、逆にボギーを打ってから取り返そうという気持ち、やる気が復活したので、悪くは思っていないです。17番はセカンドショットもパットもいい感じで打てました」
迎えた18番は第1打で左フェアウェイギリギリをとらえ、第2打で確実にグリーンをキャッチ。カップの左奥8メートルからファーストパットを1メートルに寄せて、最後はスキを見せずに逃げ切った。
「初優勝より緊張しました」(桑木)
初優勝までは時間がかかったが、2勝目は初優勝からわずか2カ月後の達成となった。
「2勝目がすごく難しいといわれていたので、その壁はあると思っていたけど、意外と淡々といい感じで来られたと思います。初優勝とは違った感じです。初優勝より緊張しました」
その初優勝の経験も生かした。
「やっぱり追われる立場だったので、焦るとよくないというのは経験済みだったので、どんなことがあっても落ち着いてやろうというふうにはできました。(今週は)最終組の中で戦っていた感じだったので、目の前に敵がいるのはやりやすかったです。資生堂レディスと同じような状況だったので」
メンタルトレーニングを取り入れており、この日はその取り組みも背中を押してくれた。
「(メンタルコーチには)自分を信じるというか、周りの人を応援しつつ自分のプレーに集中するみたいな感じですね。要するに周りの人を自分の中に入れないというか、自分のプレーをするために、相手がどんなプレーをしようとも、それを褒めて自分のプレーに集中する感じです」
今週は海外メジャーのAIG女子(全英女子)オープンと日程が重なった。先週、出場権が自分にまで回ってきたことを知ったが、国内試合に集中することを優先した。今年の全英には日本勢19人が参加したが、今週はその空白を埋める活躍で国内ツアーを盛り上げた。
「語弊があると嫌ですけど、全英には行かなかった分、絶対にこっちで勝ちたい気持ちがあったので、他の大会よりもすごい気合いが入っていました」
この優勝でメルセデスランキングが5位に急浮上。さらなる高みが見えてきた。
「マジですか? うれしい。次は3勝目、4勝目を目指して、謙虚な気持ちで頑張りたい。これから(国内)メジャー大会も3試合あるので、そこで結果を残せるようにしたい。(最終戦の)リコーカップまでに(メルセデスランキング)3位以内に入りたいです」
初優勝からわずか2カ月で2度目の戴冠。大器が時間の流れが追いつかない速度で成長の階段を駆け上がる。