2024年10月29日号の「週刊ゴルフダイジェスト」では、大阪学院大高校野球部監督の辻盛英一監督と、早稲田大学ゴルフ部監督の斉野恵康監督という新進気鋭の監督2人の対談を掲載! 高校野球と大学ゴルフで、強豪校に立ち向かい、結果を出している2人の人材育成、目標達成法など、スポーツだけでなくビジネスにも生かせる話を綴っている。「みんなのゴルフダイジェスト」でも、その一部を紹介していこう。

「『目的と手段』、明確にすることが大事です」
早稲田大学ゴルフ部監督・斉野恵康

画像: 早稲田大学ゴルフ部監督・斉野恵康

早稲田大学ゴルフ部監督・斉野恵康

さいのよしやす。1971年東京都出身。早稲田実業高、早稲田大学を卒業後、ゴルフ誌の編集者を経て、広告営業、新規事業の企画運営などに携わり大きな実績を上げる。現在はNPO法人日本トレーニング指導者協会の事務局長。3年前に母校のゴルフ部監督に就任。文武両道の精神で、現在日本アマチュアゴルフランキング4位の中野麟太朗はじめ、多くの有望選手たちを育てている。

「教えなかったら、選手は上手くなります」
大阪学院大高校野球部監督・辻盛英一

画像: 大阪学院大高校野球部監督・辻盛英一

大阪学院大高校野球部監督・辻盛英一

つじもりえいいち。1976年奈良県出身。奈良高、大阪市立大(現大阪公立大)を卒業し、三井住友銀行を経てアリコジャパン(現メットライフ生命保険)に入社。13年連続営業トップの成績を収める。現在は生命保険代理店「ライフメトリクス社」経営。指導者としては、母校の大阪市立大軟式野球部を13年務め、24年ぶりリーグ優勝に導く。23年3月に大阪学院大高の監督に就任。

「役立たず」になるコーチング

斉野 今春、大阪の高校野球界では2大巨頭の大阪桐蔭と履正社を倒し、風穴をあけられました。実は我々もちょうど春の対抗戦で日大と東北福祉大という、勝てないと皆が諦めている大学に勝ったんです。この3年、僕も手探りでやってきましたが、今日は辻盛さんのお話を聞いてさらに勉強させていただき、これからの指導に生かしたいなと楽しみに来ました。

画像: チームワークも孤独も大事という斉野。月に一度体力測定会を行う

チームワークも孤独も大事という斉野。月に一度体力測定会を行う

辻盛 僕も同じく、でございます。

斉野 まず、監督になって一番変えたことは何ですか? 僕の場合は、前の監督は20年やってらした達観からか、一番の目標は目先のことより人間性を磨くことだと。これは最近の大学生にはなかなか伝わらないんです。僕が就任したとき「日本一を本気で目指すこと」「学生ゴルファーの模範になること」、この2本柱を学生に伝えました。幅広い人間形成という目標から、より具体的で明確な目標になったことが一番大きいかもしれません。

辻盛 結局やっぱりそこですよね。僕は前任者の伝言など何もない状態からスタートしましたけど、部員がインタビューで「最初は冗談かと思ったら本気でこの人は日本一を目指しているとわかった」と話していて、そこは伝わっているんやなと。僕は、あまり指導はせずに生徒たちに任せたんです。たとえば日本一を目指すにあたって、今から何をしていけばいいか決めごとをいくつも作っていく。そのためミーティングをさせて、そこで決めたことを自分たちで守らせる。僕からは、挨拶はこうしなさい、声はこう出しなさいとは一切言っていません。そして次に日本一カッコいいいと思われるチームを作りたいからそのための決めごとを、最後は大阪学院ブランドというものを作りたいから、それを自分たちで考えて皆に発信してほしいと。もちろんむちゃくちゃなこともやりますよ。たとえば、円陣を組んでの掛け声は「ごいごいすー」にしたいとか。「マジか」と思いましたけど、それは今でもやってますわ。何よりできるだけ僕の存在は消すようにしています。

斉野 ゴルフのナショナルチームのメンタルコーチの方に指導に関するアドバイスをいただいたとき、「役立たず」になるよう努力してくださいと言われました。これは3年間でどんどん重い言葉になっていき、「ああまた役に立とうとしてしまった」と反省をしながら今もやっています。どうしても「そこはこうしたほうがいい」と役に立とうとしてしまう。でも、「なぜそうしたの、それでどうなったの、どう感じたの」とまどろっこしくやる必要がある。学生はきちんと自分で整理して考えて答えを出し、変わることができる。辻盛さんもある意味、「役立たず」になるコーチングをされているんですね。

辻盛 なるほど、ある意味ではなく、完全に役立たずです(笑)。

画像: 基本、否定はしない! という辻盛。「春に優勝して、21日くらい連続で取材になって。大会のときまでに一度メンタルは戻ったけど、試合当日のアップのとき横が全部カメラで、やっぱり負けたらどうしようなった。見たことのない顔でやっていました。でも、いい経験です。それを見た後輩たちがまた慣れていくんです」(硬式野球部公式インスタグラム@ogu_hs_baseball_officialより)

基本、否定はしない! という辻盛。「春に優勝して、21日くらい連続で取材になって。大会のときまでに一度メンタルは戻ったけど、試合当日のアップのとき横が全部カメラで、やっぱり負けたらどうしようなった。見たことのない顔でやっていました。でも、いい経験です。それを見た後輩たちがまた慣れていくんです」(硬式野球部公式インスタグラム@ogu_hs_baseball_officialより)

斉野 本当に難しいことです。

辻盛 上手い人が教えるということが通説になっているでしょう。元プロ野球選手、元社会人野球選手など、選手として実績がある人が監督をすると、教える人を超えることがないような気がします。自分が教えられる限界しかその選手が上手くなれないんじゃないかと。それが、不思議なんですけど教えなかったら上手くなります。僕はちょっとサポートをするだけ。でもね、本当にこの人ばかやなと思われたら終わりなんで(笑)。

斉野 確かに。なめられたら終わりです(笑)。

辻盛 バッティングでも「どう思いますか」と聞かれたら、「これをやってみたら」と言った後にちょっと知識を付け加えていくんです。「2023年に〇〇が出した論文のなかにこういう解析があるからよかったら読んでみて」と。絶対読まへんですけどね(笑)。

斉野 やっぱり、新しいことは常に勉強していかないといけない。

辻盛 はい。僕は野球のことに関してというより、スポーツなどに関する論文を読むのがめっちゃ好きなんですよ。解剖学、力学、栄養学、トレーニング理論……「グーグルスカラー」をずっと読んでいます。

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辻盛監督がゴルフを始めた理由や教え子たちへのアドバイスで気をつけていること、練習量など、2人の考え方は「週刊ゴルフダイジェスト」10月29日号、もしくは「Myゴルフダイジェスト」にてチェック!

PHOTO/Masaaki Nishimoto

※2024年10月21日11時41分、一部加筆修正しました。

斉野監督ほか、学生ゴルフ部監督の考えはこちらから

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