
VISA太平洋マスターズは4度目、ツアー通算20勝目を挙げた石川遼(撮影/岡沢裕行)
「チャンスが最後の最後にきた」(石川遼)

最終18番でバーディを奪い両手を大きく挙げた石川遼(撮影/岡沢裕行)
劇的なフィナーレだった。
通算10アンダーで河本、谷原と首位に並んで迎えた最終18番パー5。石川は3番ウッドの第1打でフェアウェイ左をキープすると、残り230ヤードの第2打を3番ユーティリティで果敢に2オン狙い。ボールは右サイドの池をかすめもせずピン一直線に飛んでグリーン近くに着弾し、ピン手前8メートルをとらえた。
大ギャラリーが見守る中、イーグルパットこそカップをかすめたが、20センチのウイニングパットをしっかりと沈めた。沸き上がる歓声と拍手を全身で受け止めながら、両手を1度、2度、3度と突き上げ、喜びを爆発させた。
優勝インタビューでは笑顔で感慨に浸った。
「すごくいいゴルフができたなという気持ちでいたので、最後まであきらめずに。後半なかなかチャンスをものにできなかったけど、最後まであきらめずにやりたいなと思っていて、チャンスが最後の最後にきたので、我慢してよかったなという思いです」
過去に19回も頂点を極めてはいても、優勝の重圧を克服するのは簡単ではなかった。3番で左バンカーから50センチに寄せてバーディを先行させると、第1打を8番アイアンで10センチにつけた7番からは3連続バーディ。前半だけで4つスコアを伸ばし、2位に2打差をつける単独首位でハーフターンを迎えたが、後半は11番、13番でボギーをたたき、谷原秀人に首位を譲った。そこから盛り返しての優勝だけに喜びはひとしおだった。
「ゲーム運びが今日はよかった」(石川遼)

果敢なチャレンジでファンを魅了した石川遼(撮影/岡沢裕行)
「後半、いいゴルフができたという気持ちは、正直あります。本当に今までのゴルフとは違った形だなというすごく思います。サトウ食品のときにはなかなかできなかったことが今週結構できた。ゲーム運びとか試合運びというのが今日はよかった」
510ヤードの6番パー4では"直ドラ"を披露した。結果はパーだったが、想像力の豊かさを証明するようなチャレンジだった。
「左の林は消したいし、右の林も入れたくないので、滞空時間があまり長くない球でという、消去法で直ドラありかなという感じで(土曜は直ドラを使用)。今日はほんの3~4ミリティーアップしたんですけど」
今年で52回目となる今大会で史上単独最多4度目の優勝を果たした。さかのぼれば10勝目を挙げたのも今大会。思い入れの深い大会で節目の20勝目をつかんだ。通算20勝をマークした選手は史上12人目だった。
20勝について「実感がない」

2度目の賞金王も狙えるべきところへ(撮影/岡沢裕行)
「20勝というところに関してはそこまで思い入れはないです。今回の勝ちっていうことはすごく嬉しいですけど。20という数字で自分が何か変わるかというと、それは客観的な指標であって、そこまでではないかなと。実感がないというのが正直なところですね」
優勝賞金4000万円を獲得し、今季賞金ランクは首位の平田憲聖に3081万9035円差の5位へ急浮上。最終戦の日本シリーズJTカップを含めた今季残り3試合で2009年以来となる2度目の賞金王も十分に狙えるところへきた。
「僕の名前なんか誰も考えていなかったでしょうね。まずは嬉しい。そこまでは全然考えていなかったし、まだ考えていないですかね。残りの試合を勝ち、勝ちで行く選手が(賞金王に)なるでしょうし、かなりの選手にまだチャンスがある。まだまだこれからみたいな。(平田)憲聖はいい選手だなと思ってみていましたし、(重圧を)余裕で吹き飛ばす力もある。憲聖にとっても試される時期なのかな」
相性のいい大会で4度目の優勝を果たし、勢いを得た石川がミラクル逆転賞金王を見据えた。