
「コーンフェリーでのスタッツは、飛距離は302.2Yと平均的だが平均パットが1位。ゴルフは物心のつく2、3歳の頃オモチャで始めたそう。必ずしも日の当たる場所を歩いてきたわけではない”雑草”の強みを見せてくれるかもしれません」という佐藤(PHOTO/Getty Images)
シェフラーやデシャンボー級の逸材!?
今回紹介するのはアリゾナ生まれの26歳のレフティ、マット・マッカーティです。正直、夏くらいまでは名前も知らない選手でした。しかし7月からの直近10試合で4勝。映画を見ているような、アメリカンドリームを実現しました。
トーナメントプロをほとんど輩出したことのないサンタクララ大出身。コロナ禍もあって5年在籍しましたが、戦績は2年生のときの1勝のみ。オールアメリカンに選出されることはもとより、全米アマでマッチプレーに進出したこともない選手でした。
同大を卒業後の21年にプロ転向。22年、カナディアンツアーからスタートし、22年はコーンフェリーツアーでランク55位、23年は35位と、着実に力を付けていきましたが、とても今季の活躍を予想できる選手ではありませんでした。コーンフェリーからPGAツアーに昇格できるのは30位まで。今年は大西魁斗くんが25位になり来シーズンをPGAツアーで戦います。
ちなみに昨年の最終戦、ランク37位で迎えたマッカーティは3日目、連続バーディで優勝争いに加わりましたが、最後の18番で「8」を叩き、トップタイから6位タイに。最終日も不発に終わりPGAツアー昇格を逃しました。
そうして今年7月、ランク22位で迎えたプライスカッターチャリティで、念願のコーンフェリー初優勝。8月には2勝を挙げ、同ツアー3勝でPGAツアー昇格を決めました。優勝すればPGAの試合にはすぐに出場できますが、コーンフェリーの賞金ランク1位になると来季のツアー選手権と全米オープンの出場権が手に入ります。
だからか、そのままコーンフェリーで戦い続け、そして賞金ランク1位を確定させた10月からPGAツアーに参戦。するとその2試合目のブラックデザート選手権で、なんとPGAツアー初優勝を飾ってしまうのです。
コーンフェリー3勝が史上13人目なら、両ツアーの同一シーズン優勝は、05年のジェイソン・ゴア以来、史上2人目。
これにより26年シーズンまでのシードを獲得するとともに、マスターズも全米プロの出場権も手中に。現時点で世界ランキングは49位。昨年のこの時期、同順位は400位台の選手だから、すごいランクアップです。
さて、過去に下部ツアーで3勝した選手は12人ですが、その後、大成したとは言い難いのもエリートばかりが集うPGAツアーの現実。チャド・キャンベルとヒース・スローカムが4勝を挙げていますがメジャーチャンピオンはいません。
シェフラーやシャウフェレ、デシャンボーなど多くのメジャーチャンピオンもコーンフェリー出身者であることを考えると、シーズン3勝達成者がそこまでの活躍をしていないことが不思議な感じです。
マッカーティもその壁にぶつかるのか。そこでどう対処するのか。
しかし、話し方の印象からしていい意味で深刻になりすぎない雰囲気があり、大学時代はゴルフはともかく学業でオールアメリカンに2度選ばれた明晰な頭脳を持っています。
さらに豪快な勝ちっぷり、年々上がっているスタッツを見ると、壁をすんなり打ち破れそうな気もします。これからの進化に興味が湧く選手です。
※週刊ゴルフダイジェスト2024年11月26日号「さとうの目」より