アメリカと日本では売れているモノが違う?
GD 2024年のゴルフダイジェストアワード、ドライバー・オブ・ザ・イヤーは「タイトリスト GTシリーズ」に決定しました。このシリーズは(月刊ゴルフダイジェストの名物企画)「D-1グランプリ」で上位を独占するパフォーマンスの高さを発揮し、PGAツアーでも高く評価されています。他メーカーが「マックス」モデルを次々と投入するなかで、一線を画すクラブでした。
長谷部 ドライバー・オブ・ザ・イヤーは歴史のあるアワードなので、その時話題の商品が取ったりしています。受賞する理由の1つが飛距離。圧倒的な飛距離の優位性が過去は多かったかなとは思います。その中で今回、「GTシリーズ」が獲ったと聞いて、「なるほどその通りだろうな」っていうぐらい良い印象を持っています。
2年ぶりのモデルチェンジということもありますけど、大慣性モーメントが話題を先行していた今年の春から時間を経て、夏に発表、秋に発売という中で、ツアープロのスイッチをきちんと行って発売したというマーケティングもしっかりしていたなと思いますよね。
GD PGAツアーの影響力はあるかもしれないんですけど、アメリカと日本ではクラブの人気がちょっと違うということを聞きますが?
長谷部 そうですね。アメリカの市場データをたまに見ることがありますけど、日本市場の上位モデルが、アメリカでも売れているかというとそうではないという話を聞きます。 なので、日本におけるマーケティング戦略の成功が、日本の市場の順位に影響されていると思います。そういった活動と全く離れたところでモノづくりをしっかり行い、自分たちの路線を突き進んでいる「タイトリスト」のすごさを感じますね。
GD 「GTシリーズ」も含めて、アメリカのゴルファーはクラブ選びに保守的な感じがします。
長谷部 割と保守的だと思いますよ。 そんな中で、革新的な製品を「キャロウェイ」とか「テーラーメイド」は毎年新しいことを打ち出してきますけど、それが全てにおいて好意的に取られているのかというと、決してそうでもないケースもある。
「タイトリスト」にはボールのユーザーももちろん多いけど、アイアンしかり、ウェッジしかり、あらゆるカテゴリーにおいて、本格化志向のゴルファーにとっての信頼するブランドとしても揺るがないものになっているんだろうと思うと「タイトリスト=USA」なんて思ってしまうこともありますね。
GD トラディショナルとか、保守的をキーワードとすると、日本のメーカーで言えば、「ダンロップ」、「ミズノ」、「ブリヂストン」という古参メーカーは、共通するものがあるように思います。
何か守っている部分を感じるんですけども、でも日本のゴルファーはそこには目を向けず、革新的なものに今は手を出しているような気がします。
長谷部 一般的なアマチュアゴルファーが情報を入手する方法や場所が、ここ何年かで色々変わってきていると思うので、この先もそれが続くのかどうかは一概には言えないですけど、その外ブラがウケた理由のひとつには大型量販店の影響、効果というのが大きいと思うんですよね。
キャンペーンを行い店頭に相当な物量を投入して、お客様が自由に選べるような環境を整えたというのが大型量販店の役割ですし、それに伴って手に取りやすい価格やいろんなポイント制を使ってお求めやすい価格設定にもチャレンジしたっていうところが、普及の第一歩だったと思います。
GD この現象は、いつから起こっていたんですかね?
長谷部 15〜16年前くらいになるんでしょうか。徐々に「キャロウェイ」が『レガシー』、「テーラーメイド」が『グローレ』など日本市場攻略を意識し始めた頃からだと思います。先にファン作ってしまってから大手量販店とともにシェアを広げていけば、近年は為替や原価高騰を背景にして市場価格もリードしていったということだと思うんですよね。
結局日本のメーカーより高い価格設定になっていると。ちょっと普通に考えたら、量産性がよくて、たくさん作っている外ブラのほうがコストは安いんじゃない?って思うんですけど、それにも増して魅力的なマーケティングを展開しているということだと思います。
GD それに乗らなかったのが「タイトリスト」のモノづくり?
長谷部 あくまでもその広告宣伝よりは、地道なプロの使用と実績を積み重ねてきて、その時々でクラブの場合は評価がわかれていたと思うんですよね。前の『TSR』が部分的にはいろんな評価があった中で、それを改良して『GT』に仕上げてきているところなので、そういった意味では、2年に1回のモデルチェンジを守りつつ、きちんとしたモノづくりをされている証拠だと思うんですよね。