アマチュアの“持ち球”といえばかつてはスライスが定番だったが最近では左に打ち出してそのまま真っすぐ飛んでいく左へのミスが増えているという。これは近年のドライバーの性能特性と関係があると伊丹大介プロ。週刊ゴルフダイジェスト2月25日号では、その原因を探り、解決法を教わっている。「みんゴル」でも2回に分けてご紹介しよう。【2回中1回目】

解説/伊丹大介プロ
1976年生まれ。東北福祉大ゴルフ部出身で、2004年にプロ入り。アマチュアへのレッスン、メディアでのクラブ試打、クラブ開発など幅広く活動している。
カット軌道の人のいまどきのミスがコレ
最近アマチュアの間で、ドライバーで左に打ち出してそのまま真っすぐ突き抜けてしまう「左真っすぐ」のミスが増えている。かつてスライスに悩んでいた人が、急にこの球が出るようになったという話も聞く。

「あ、左だ~」
これを、スウィングの改善によって「球がつかまるようになった」と感じている人もいるかもしれないが、実態はそうではないと伊丹大介プロは分析する。
「これはドライバーの性能の進化の副産物だと感じています。最近のドライバーは、重心深度が深くて慣性モーメントが大きいうえに、重心角も大きくてライ角もアップライト。フェースが左を向きやすく、球がつかまるクラブが多いんです。アウトサイドインのカット軌道の人がこういうクラブを使ったら、左に真っすぐ飛ぶ球が出やすいのは当然です」
大MOI×大重心角=フェースが左を向きやすい
慣性モーメントも重心角も大きい「つかまってやさしい」ドライバーは、フェースが左を向きやすい。かつてスライスを打っていたアウトサイドインの人が、同じスウィングで「左真っすぐ」が出るようになったのだ。

重心角が大きいクラブは球がつかまる!
10年くらい前までは、大型ヘッド、大慣性モーメントというと、フェースが開きやすく、スライスやプッシュアウトが出やすかった。しかしヘッドの重心設計が進化して、大慣性モーメントでもフェースが閉じやすくなった結果、同じアウトサイドインのスウィングでも出るミスの傾向が変わってきたというわけだ。かつてのスライサーは、以前とは別の問題に対処する必要が出てきたのだ。
7~8年前から顕著になった
「左真っすぐ」のミスは、ドライバーヘッドが460㏄でも重心設計の自由度が高まり、フックフェースでなくても球がつかまるドライバーが作れるようになった7~8年くらい前から増え始めたと伊丹プロは感じているという。

フックフェースじゃなくても球がつかまる
左へのミスが出る原因
原因①カット軌道の人にとって軌道なりに左に行きやすい
つかまりのいいドライバーのおかげで、アウトサイドインのカット軌道でもスライスが出にくくなった反面、左に打ち出してそのまま真っすぐ飛ぶ「左真っすぐ」が出やすくなった。

軌道なりに左に出てしまう
原因②フェースを返す動きも急激になりやすい
深重心でフェースは開きやすいが、アップライトで重心角も大きいのでそこから急激にフェースが返るケースも。こうなると左に出て左に曲がる球が出る。

左に出て左に曲がる
スウィングを変えずに向きを変えるのが安全
ではいまどきの「つかまる大慣性モーメントドライバー」を上手く打ちこなし、左へのミスを防ぐためにはどうすればいいのだろうか。伊丹プロは「向きを変えるのが一番簡単で安全」だと話す。
「スライスはもちろん、真っすぐ構えて真っすぐ打とうとすることをやめるのがシンプルな解決策と思います。コースの右サイドを向いて構え、そこから少し引っ張り込むようなイメージで、クラブの性能なりに球をつかまえて打つ。つまり“プルドロー”がいまどきドライバーに最適な弾道なんです」

左に引っ張り込むイメージでOK!
狙い方のポイント向いているところより左に打ち出すイメージ
アドレスは右のラフか林を向き、体の向きよりも左、フェアウェイセンター方向に引っ張るように打ち出して少しドローするつかまった球をイメージしよう。

ドローのつかまった球をイメージ
このとき、右に打ち出そうとするのは絶対NG
アドレスで向いた右方向に打ち出そうとすると、プッシュアウトしやすい。思い切って球をつかまえ、左に打ち出していこう。

左に打ち出す
ポイントは、肩の向きが右ラフか林を向くくらいクローズにして構えること。そしてフェアウェイセンター方向に打ち出して、少しドローするイメージの球を打つ。スウィングを大きく変える必要がなく、クラブの性能にもマッチしているので、安定して飛ばせる狙い方といえる。
左に引っ張り込むイメージのポイント
ポイント①肩のラインを右に向けることが重要!
肩を右に向けて構えることで、ターゲットに対してややインサイドアウトの軌道を作りやすく、左に引っ張り込む感覚で振ってもつかまったドロー系の球になりやすい。

肩のラインを左に向ける
ポイント②右足を少し引いてクローズスタンス
スタンスの向きはあまりこだわる必要はないが、右足を引いてややクローズに立つのがおすすめ。アドレスでフェースはかぶせないほうが、フェースを閉じながら打つイメージが出やすい。

クローズスタンス
後編では実際に打つ時の注意点を解説しよう。
PHOTO/Tsukasa Kobayashi
TEXT/Kosuke Suzuki
THANKS/中山CC
※週刊ゴルフダイジェスト2月25日号「左真っすぐを退治しよう」より一部抜粋