
DPワールドツアー、ヒーローインディアンオープンで優勝したスペインのエウヘニオ・ロペスチャカラ(PHOTO/Getty Images)
3月最終週のDPワールドツアー、ヒーローインディアンオープンで優勝し、晴れて同ツアーメンバーとなったエウヘニオ・ロペスチャカラ。スペイン・マドリード出身の25歳。
ジュニア時代は100勝以上をマークし、スペインNo.1選手として鳴り物入りでウェークフォレスト大に進学。2年でオクラホマ州立大に転校するとオールアメリカンに選出され、世界アマチュアランクも22位に。このとき1位に君臨したのが中島啓太くんです。プロ転向は同大を卒業した22年。
PGAツアーユニバーシティ制度で3位だったロペスチャカラは、コーンフェリーツアーで戦える資格を有していましたが、彼が選んだのはLIVゴルフでした。
これは当時、ゴルフ界に大きな衝撃を与えました。カレッジのトップ選手が、LIVゴルフに行く流れを作るかに見えたからです。その後、PGAツアーユニバーシティ制度の待遇を厚くし、上位選手がそのままレギュラーツアーに進出できるようなったのは、明らかにロペスチャカラの影響でした。
LIVゴルフに進んだロペスチャカラは、早くも5戦目で優勝。翌23年にはアジアンツアーのセントアンドリュースベイで、10ホールに及ぶプレーオフを制し、順風満帆のプロ人生が始まったかに見えました。ところが3年目の昨年は39位でシード権喪失。LIVゴルフのシードは24位までで、25位から48位はオープンゾーンと呼ばれ、どこかのチームから声がかかれば残留できます。
香妻陣一朗選手はシード権が得られませんでしたが所属していたチームとの再契約で今シーズンを戦っています。そして39位のロペスチャカラは、離脱の道を選びました。その際、彼を取材した記事の中でロペスチャカラはこう語っています。

エウヘニオ・ロペスチャカラは188㎝のガッチリした巨漢で、野生味溢れるパワフルなスウィングが特徴。「とんでもないことをやってのけそうな選手だけに、その姿をもっと見たいと思う」と佐藤プロ(PHOTO/Getty Images)
「PGAツアーで勝つと人生が変わる。メジャーにも出られるし世界ランクも上がる。だがLIVは何も変わらない。1位も30位も違うのは金額だけ。自分が欲しいのはお金ではない。マスターズにも出たいし、他のメジャーにも、ライダーカップにも出たい。自分は若い選手で最初にLIVを選んだが、そのときは世界ランクも上がるしメジャーにも出られると信じていた。しかし未だこのツアーは何も変わらない」
LIVゴルフ寄りのメディアからは、24位のシードにも入れない実力、オープンゾーンでも誰からも声のかからないことが、ロペスチャカラの人間性そのものを表している……といった批判的な声も聞こえてきました。実際はわかりませんが、再びゴルフ界に衝撃を与えたことは事実です。
そして無所属の状態で25年シーズンに。出場できるのは、推薦の数試合に限られます。昨年は日本オープンにも推薦出場。実は水面下でミズノオープンへの推薦出場の打診もあったようです。日程の関係で実現しませんでしたが、すでにこの時期、LIVを離脱した後のPGAツアーにつながる新しいルートを模索していたのでしょう。
今季はアジアンツアーのインド、欧州ツアーのケニアに出て、そこから5週間ぶりに出場したのがヒーローインディアンオープンでした。この試合は(中島)啓太くんの連覇に注目が集まりましたが、とにかく強烈な試合でした。啓太くんいわく「硬くて乾いてグリーンがカピカピ」。
アンダーパーはロペスチャカラと啓太くんと欧州ツアー6勝のベテラン、ユースト・ラウテンのわずか3人。通常、4日間でダボが20個も出たら危険な難ホールと言っていいと思いますが、ゲーリー・プレーヤー設計のDLFゴルフ&カントリークラブはダボ20個以上が9ホール、40個以上が4ホール。5週間ぶりの試合、しかも想像を絶する難コースでアンダーパーでの優勝は、エリートの実力を見せてくれました。
5月20日現在、欧州ツアーではポイントランク15位。10位以内に与えられる来季のPGAツアーへの出場権を得ることも十分可能です。PGAには今秋のQスクールからと考えていたようですが、晴れて欧州ツアーメンバーとなり、早ければシーズン中にもPGAツアーでの活躍が見られるかもしれません。
優勝会見では、LIVゴルフのことを「another side of golf」と表現していました。「一度は向こうの世界に行ったけど、またこっちに戻ってきた」といったニュアンスでしょうか。
188㎝のガッチリした巨漢で、野生味溢れるパワフルなスウィングが特徴。飛ばし屋にして、スピンコントロールの効いた精度の高いショット力の持ち主。昨年の日本オープンで見ましたが、成績は悪かったもののドライバーからアイアンまで本当に上手かったですね。
とんでもないことをやってのけそうな選手だけに、その姿をもっと見たいと思うのはボクだけではないはずです。
◆参考にしたいポイント=飛ばしにもショットの精度にも必要な積極的なフットワーク

「ダウンからフォローでの左足の動きに注目。左足のつま先がターゲット方向に向く。その結果、体も回るし、左サイドにしっかりと体重も乗ります」(佐藤プロ)
アマチュアには足が使えない、動かない人が多く、なかには『動かしてはならない』と考えている人も多いようです。積極的なフットワークは飛ばしにも、ショットの精度にも必要。体重移動と回転はまったくの別物ではなく連動するものです。左足を大きく上げ、踏み込んで行う素振りも効果的な練習です。
※週刊ゴルフダイジェスト2025年5月27日号「さとうの目」より