「長谷部祐とギア問答!」は、国内外大手3メーカーで、誰もが知る有名クラブの企画開発を20年超やってきたスペシャリストの長谷部祐氏に、クラブに関する疑問を投げかけ、今何が起こっているのか? その真相を根掘り葉掘り聞き出すものです。クラブ開発の裏側では、クラブ開発の裏側では、こんなことが考えられているようです……。

球1個分の打点ズレに「ピン」の進化を感じた

GD 市場では「ピン」のドライバーが人気ですが、この流れは2018年の『G400マックス』が始まりと言っていいでしょう。すでに7年が経過し、その間に『G410』、『G425』、『G430』、『G440』と4度モデルチェンジをしていますが、今日は源流の『G400マックス』を改めて打つことで、“ピンのドライバー”の進化を探ってみたいと思います。

長谷部 『G440』を含めた今年の新製品を早い段階でレビューさせてもらいました。『G440』が日本でこれだけ人気になっていることは、アメリカ市場と比較してかなり好調だと思います。その理由は日本人が好む「変わらない良さ」を持つブランドの信頼がひとつあると思います。今日『G400』を打ってみて、その源流をなんとなく感じました。

GD 形状的には『G400』と『G440』でそんなに変わらない? でも打ってみたらちょっと違いましたね。

長谷部 打ったら違いましたね。形状の違いは指摘しづらいぐらい非常に近いものがありましたが、打ってみるとさすがにカーボンクラウンとフルチタンの差の弾き感であったり、打点が球1個分バラついた時の曲がり具合に違いがありました。『G440』はまったくと言っていいほど曲がらないので、この点の進化を感じましたね。

GD 『G400』を振ったらズシリと重さを感じたじゃないですか。でもあの当時はこれを軽いと思った人も多かったはずです。モデルチェンジするたびに徐々に軽さに慣らされてきたわけですね。

長谷部 我々も重さに順応していきますしね。

GD 7年前はこんな重いドライバーを使っていたの?ということを感じたわけですけど、重さも含めて「ピン」が狙う進化は、どの辺にありそうですか?

長谷部 軽量化とともに高慣性モーメント化が徐々に進んできたと思うのですが、2年に1回のモデルチェンジが上手いことハマって、一気に『G440』が大ブレイクしている気がします。慣性モーメントは大きいけど、クラブの総重量は少しずつ軽くしつつ、ヘッドも少しずつ軽くしているので、「ピン」のドライバーを継続して使っている人にしてみれば、より振りやすくなっているメリットが徐々に浸透してきていると思います。でも「ピン」のコンセプトは重いヘッドであることは変わらないですよね。

GD そうそう、『G400』より前の時代の「ピン」は重ヘッド路線でしたからね。ヘッド重量をパワーに変えて飛ばそうというのが昔の「ピン」でした。徐々に軽くなったとしても、まだまだヘッドが効いているクラブのように感じました。

長谷部 今日打った『G400マックス』は、純正シャフトでありながらしっかりしていました。同じ路線を踏襲しつつも、若干軽めにして振り心地を上げていることはあるでしょうね。で、なおかつヘッドのパフォーマンスは慣性モーメントを最大化することを目指して作っていく中でのバリエーションなので、「G440」に関してはとにかくやさしいと言われる、曲がらないと言われる世間の評価は間違いないでしょうね。

GD 見た目はそんなに変わらずに中身が変わっている。これって他のメーカーではあまり見られないことですよね。

長谷部 唯一「ゼクシオ」がずっとやってきたことがキープコンセプト、正常進化ですけど、「ゼクシオ」もさすがに20年以上やっているブランドなので最近はいろんなバリエーションを出していて、シニアに行こうとしているのか、それともアベレージゴルファーに戻ろうとしているのか、そのへんの迷いがゼクシオブランドにあると思うんですよ。

片や「テーラーメイド」は毎年のようにテーマを変えて新しい製品を出し続けているので訴求内容も変わらざるを得ない。「キャロウェイ」も同様で毎年5、6モデル出しているので、どこにユーザーを引き込んだらいいのか、我々ユーザーとしてもどれを選んだらいいのか毎年迷ってしまう。そういう中で「ピン」はヘッドバリエーションを出しても、基本的にやってることは「正常進化の中の飛距離アップ」っていうテーマだけだと思うので、「ゼクシオ」に近いことを「ピン」はやっているように見えますね。

GD 近いですね。

長谷部 そこが日本人のゴルファーマインドに合致しているような気がします。変わらない安心みたいな。

GD 「ピン」が人気だっていうのは世界的なことじゃない?

長谷部 アメリカでももちろん人気はあるんですけど、ここ2年くらい日本は飛び抜けてピン人気が強いような気がします。ここまで圧倒的に年間続いて、しかも前作の『G430』もマークダウンされているんですけど、それでもちゃんと売れているし、「10K」はそのまま併売だから……、なかなかこういうブランドはないですね。

GD 「ゼクシオ」はバリエーションがなかったですが、2年に1回のサイクルをしっかり守りながらやってきました。

長谷部 「バリエーションがない」というのは、逆に我々のユーザーからすると選びやすいですね。フレックスを選べばいい、ロフトを選べばいいだけで済んじゃいますから。

GD 「LS」、「レギュラー」、「ドローバイアス」。今や当たり前のようになっている性能を分けたのは、元をたどれば「ピン」ですからね。

長谷部 「テーラーメイド」、「キャロウェイ」も違うラインを明確に出していたことはあるんですけど、ひとつのネーミングで性能が違うと言い出したのは「ピン」に習ってやっているから。そういう意味では変わらない見せ方も「ピン」が成功しているんじゃないですかね。

This article is a sponsored article by
''.