
インドアで試打するノリー堀口こと堀口宜篤コーチ。ボールはタイトリスト「プロV1」、計測器は「GCクワッド」だ
ヘッドスピード帯によって“飛ぶ傾向”に違いがある
今年のD-1グランプリにエントリーしたドライバーは39モデル。予選を3会場で行い、ヘッドスピードが異なる3人のテスターが全モデルを打って飛距離を計測する。その結果、上位の16モデルが東名CC(静岡県)で開催される決勝トーナメントに進出する。
ラストの3カ所目となる予選会場はPGST(東京都)で、プロコーチでありギアの試打&解説に定評がある“ノリー”こと堀口氏(HS46~47m/s)が打って飛距離を測った。弾道計測器は「GCクワッド」で、ボールは「プロV1」(タイトリスト)を使用。
予選の第一会場(小倉勇人氏)ではジャパンブランドがイニシアティブを奪い、第二会場(マーク金井氏)では軽量ドライバーが優位に立った。第三会場ではどんなモデルが上位に顔を出すのか? それによって運命の16モデルが決まる。
ロースピン系のモデルが続々と上位にランクイン

上段左からテーラーメイド「Qi35 LS」、ピン「G440 LST」、本間ゴルフ「TW767 LS」、下段左からタイトリスト「GT4」、スリクソン「ZXi LS」、キャロウェイ「ELYTE ◇◇◇」
その答えから言うと、この会場では“LS”というネーミングだったり低スピンを持ち味にするアスリートモデルが、ガッツリと上位に入った。ヘッドスピードが速い人ほど、スピンを抑えた棒球のほうが飛ぶということだ。
クラブ名 | 初速 | 打ち出し角 | スピン量 | キャリー | 飛距離 |
---|---|---|---|---|---|
Qi35 LS | 69m/s | 12.1度 | 2282rpm | 265Y | 287Y |
G440 LST | 68m/s | 13.5度 | 2449rpm | 263Y | 283Y |
TW767 LS | 69m/s | 12.4度 | 2674rpm | 260Y | 278Y |
GT4 | 66m/s | 12.3度 | 2289rpm | 252Y | 275Y |
スリクソン ZXi LS | 68m/s | 9.9度 | 2309rpm | 255Y | 274Y |
ELYTE ◇◇◇ | 67m/s | 10.7度 | 2339rpm | 248Y | 273Y |
好記録を出したドライバーの弾道データを見ると、おおむね打ち出し角が抑えられて、スピン量が2000台前半から2000台半ばでまとまり、ランを20Yほど稼いでいる。インパクトのエネルギーが“上”ではなく“前”へ向かうことで、飛距離が伸びた。
「GT」シリーズの飛びが今大会でも炸裂する!?
堀口氏はコブラの「DS-ADAPT LS」も「打ちやすい!」と好感触だった。

左からコブラ「DS-ADAPT LS」、タイトリスト「GT1」、タイトリスト「GT2」、タイトリスト「GT3」
「打感が圧倒的にやわらかくて、フェースに吸いついてから離れていく感じです。そして、見るからにスピンが少なめで叩きにイケる。ある程度のヘッドスピードがないと球が浮きませんが、ウェイトを軽くしたり、33通りの多彩なセッティングができる“カチャカチャ”をいじることで、ヘッドスピードが速くない人でも合う可能性が出てくるでしょう」(堀口氏、以下同)
“アスリート向け”という点で見ると、タイトリストの「GT」シリーズも軒並み飛距離を伸ばした。

GT2の初速の速さに驚いたノリー
ディフェンディングチャンピオンとして今大会を迎える「GT2」は、290Yオーバーのビッグドライブを見せつける。
「『GT』シリーズの中ではスタンダードな位置づけのモデルだと思いますが、初速性能が高いしスピンが少なくて飛ぶクラブ。とてもバランスが良いんです」
一方で、ヘッドスピードが速い堀口氏が、トッププロも使う「GT3」はもちろん、軽量タイプの「GT1」でも飛ばしたことから、このモデルが幅広い層に合うことと飛びのポテンシャルの高さが見えてくる。
クラブ名 | 初速 | 打ち出し角 | スピン量 | キャリー | 飛距離 |
---|---|---|---|---|---|
DS-ADAPT LS | 67m/s | 12.1度 | 2799rpm | 249Y | 269Y |
GT1 | 68m/s | 11.0度 | 2828rpm | 252Y | 272Y |
GT2 | 68m/s | 12.5度 | 1800rpm | 262Y | 291Y |
GT3 | 67m/s | 10.8度 | 2284rpm | 253Y | 277Y |
し烈を極めた39モデルのマウントの奪い合い
低スピンで飛距離を伸ばしたモデルとして、プロギアの「RS」もマークしたい。

左からプロギア「RS」、リョーマ「MAXIMAⅢ TYPE D」、リョーマ「MAXIMAⅢ TYPE V」
「吸いつくようなフィーリングがいい。バランスが良くて、オールマイティに幅広い人に合います」
メジャーブランドと互角以上に渡り合ったドライバーとして、リョーマゴルフの2モデル「MAXIMAⅢ TYPE D」と「MAXIMAⅢ TYPE V」もチェックしておきたい。
「同じシャフトが入っていますが、切り返しで負荷をあまりかけなくてもヘッドが来る『TYPE D』と、負荷をかけていける『TYPE V』という、2モデルの違いを感じました」
クラブ名 | 初速 | 打ち出し角 | スピン量 | キャリー | 飛距離 |
---|---|---|---|---|---|
RS | 66m/s | 10.6度 | 2216rpm | 244Y | 270Y |
MAXIMAⅢ TYPE D | 65m/s | 12.4度 | 2514rpm | 242Y | 263Y |
MAXIMAⅢ TYPE V | 67m/s | 10.0度 | 2501rpm | 250Y | 271Y |

「RS」の吸い付くような打感を高評価したノリー
ここまでの結果を見てもわかるように、39モデルの飛ばし合いはし烈を極め、どのドライバーがベスト16に勝ち進んでも全くおかしくない。ロースピン系、軽量系、MAX(大慣性モーメント)系、ドローバイアス系というように、それぞれのモデルに個性があり、打ち手のヘッドスピードやスウィングタイプなどによって飛ぶモデルはガラッと変わることもわかった。
予選でこれだけのハイレベルな戦いが繰り広げられたのだから、決勝トーナメントのバトルはどれだけヒートアップするのか? D-1グランプリの予選から決勝トーナメントの白熱した展開は、明日(6月20日)発売の本誌8月号をご覧いただきたい。
文/新井田聡
写真/大澤進二
協力/PGST