PGA下部ツアーとしての役割
日本男子ゴルフ界の若手のホープ、平田憲聖が今季から参戦しているのがコーンフェリーツアーだ。PGAの下部ツアーにあたる同ツアーは一体どんなツアーなのか。
発足したのは1990年で、PGAツアーへの出場資格がない若手選手が試合経験を積む場として、1試合の賞金総額が10万ドル(当時のレートで約1400万円)のトーナメントシリーズとして誕生。当時PGAのコミッショナーを務めたディーン・ビーマン氏は「今や優秀な選手が多く、その一人一人がトーナメントに出場してそのスキルを発揮する機会を持つべきなのです」とツアー設立の意図について話している。そんな下部ツアーでは、設立した年にツアー1勝を挙げたジョン・デーリーに始まって、多くのスター選手を生み出してきた。
ツアーの歴史
「ベン・ホーガンツアー」として1990年にスタート
●ツアー名の変遷
ベン・ホーガンツアー(1990-1992)
ナイキツアー(1993-1999)
バイドットコムツアー(2000-2002)
ネーションワイドツアー(2003-2011)
ウェブドットコムツアー(2012-2018)
コーンフェリーツアー(2019-)
90年にベン・ホーガンツアーとして始まり、当初は賞金額が少なかったが、93年にナイキがスポンサードしたことで、ツアーの認知度が向上。その後4度のスポンサー変更を経て、現在は経営コンサルティング会社のコーンフェリーがスポンサーに。
そして現在、その流れは加速。昨年メジャーで2勝したザンダー・シャウフェレやここ2年でメジャー3勝を挙げているスコッティ・シェフラーも下部ツアー出身と、今やコーンフェリーは“スター選手への登竜門”となっている。こうした下部ツアーを取り巻く環境について、タイガー・ウッズはかつて次のように語っていた。
「シーズンを通してプレーすることで選手たちは強くなり、1年間旅を続けるという、大学とは全く違うライフスタイルそのものを身に付けます。そしてPGAツアーに出場するときには、すでにアグレッシブにプレーし、フラッグを狙ってチャレンジする準備ができている。それが彼らの成功率を高めるのです」
タイガーが語るように、下部ツアー出身の選手は「チャレンジする準備」が整っているため、PGAツアーに昇格しても必然的に結果を残すことができるのだ。
最近では、欧州ツアーで上位に入りPGAツアー出場権を得る“欧州ルート”に注目が集まっているが、PGAツアーで結果を残すという観点から見れば、コーンフェリーツアーで研鑽を積むことが一番の近道なのかもしれない。
ツアー規模(試合数、賞金総額)は国内男子ツアー超え
●日米レギュラー&下部ツアー賞金額比較(2025)
「ツアーに若くて才能のある選手が集まるように」と23年より現在の水準の賞金額に。当時、前年比10億円を超える大幅な増額となった。ちなみに今季賞金ランキングトップのジョニー・キーファーは22試合を終え、すでに1億円以上を稼いでいる。
米国男子ツアー⚫︎総賞金額(以下同)約780億円⚫︎39試合
コーンフェリーツアー⚫︎約41億円⚫︎26試合
国内男子ツアー⚫︎約32億円⚫︎25試合
ACNツアー⚫︎約2億円⚫︎13試合
※「日本OP」の賞金額は2024年実績で算出
世界ナンバー1になった5選手もココから上り詰めた
現在世界ランク1位のスコッティ・シェフラーのほか、多くのメジャーチャンピオンも誕生。その実績を見ると下部ツアーでありながら、“スター育成ツアー”であることがうかがえる。
14年下部ツアー1勝
18年世界ランク1位到達
ジャスティン・トーマス

ジャスティン・トーマス
07年下部ツアー1勝
15年世界ランク1位到達
ジェイソン・デイ

ジェイソン・デイ
93年下部ツアー2勝
99年世界ランク1位到達
デビッド・デュバル

デビッド・デュバル
19年下部ツアー2勝
22年世界ランク1位到達
スコッティ・シェフラー

スコッティ・シェフラー
90・91年下部ツアー4勝
97年世界ランク1位到達
トム・レーマン

トム・レーマン
コーンフェリーツアーで戦った主な日本人選手
過去には12人の日本人選手が出場実績を持つ。そのうちPGAツアーの出場権を勝ち取ったのは大西魁斗と今田竜二の2人。今田は04年に1勝を含む7回のトップ10でポイントランク3位に入り、資格を得た。
今田竜二

今田竜二
出場 | 143試合(1999-2004/2013-2015) |
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予選通過 | 76回(53.1%) |
トップ10 | 20回 |
最高順位 | 優勝(2000、2004) |
ポイント最高位 | 3位(2004) |
大西魁斗

大西魁斗
出場 | 43試合(2023、2024) |
---|---|
予選通過 | 22回(51.1%) |
トップ10 | 4回 |
最高順位 | 優勝(2024) |
ポイント最高位 | 25位(2024) |
桂川有人

桂川有人
出場 | 16試合(2023) |
---|---|
予選通過 | 7回(43.7%) |
トップ10 | 0回 |
最高順位 | 13位タイ |
ポイント最高位 | 130位 |
國吉博一

國吉博一
出場 | 14試合(2001) |
---|---|
予選通過 | 6回(42.8%) |
トップ10 | 0回 |
最高順位 | 22位タイ |
ポイント最高位 | 156位 |
小斉平優和

小斉平優和
出場 | 18試合(2019、2020、2021) |
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予選通過 | 5回(27.7%) |
トップ10 | 0回 |
最高順位 | 16位タイ |
ポイント最高位 | 185位 |
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PHOTO/Yoshihiro Iwamoto、Hiroaki Arihara、Yoshinori Nanjyo、Getty Image