教えてくれた人/パッティング専門の平田智コーチ

平田智パッティング専門コーチ(左)右は菅楓華
エンジョイゴルフ ゴルフスタジオ&パッティングラボラトリー福岡でツアープロからアマチュアまで教える。初優勝を挙げた菅楓華や昨年、アマチュアでステップ・アップ・ツアーを制し、プロテストに合格した都玲華を教える。
「見え方」を整えることで距離感は磨かれる
パッティングで「強すぎた」「ショートした」といった距離感のミスは、単なる力加減の問題ではありません。実はその多くが「目の距離認識能力=深視力」の乱れから起こっている可能性もあるのです。
深視力とは、左右の目のわずかな視差を使って、対象物までの距離や奥行きを正確に判断する能力のこと。これが低下すると、打つ前の段階で上りや下りのラインで距離を誤りやすくなります。
パットのストロークは静的な動作ですが、距離感の判断は非常に動的です。ボールとカップの間の空間を「どのくらい転がるか」とイメージできる人ほど距離が安定します。逆に深視力が鈍ると、カップまでが実際より遠く感じたり、近く見えたりして、タッチが合わなくなるのです。特に、片目で狙う癖がある人や、長時間のスマホ・PC作業をしている人は要注意。目の焦点調整力(調節力)が低下し、立体感をつかみにくくなります。

ボールとカップを交互に見ることで深視力を鍛え距離感がつかめるようになる
深視力を高めるには、目の“ピント調整筋”である毛様体筋を鍛えることが効果的です。簡単にできる方法として、「遠近交互トレーニング」があります。ボール→カップ→ボール→カップ……と焦点を素早く行き来させることで、目のピント機能が活性化します。これにより、実際の距離感と見た目の距離感が一致しやすくなります。
また、練習場やグリーンで「遠くを見る癖」をつけることも効果的。構える前に1~2秒、カップの奥や背景の樹木など遠くを眺めると、視界が広がり目がリラックスします。この状態でストロークに入ると、距離感が自然と整い、強弱のバラつきが減っていきます。
それでは練習ドリルをご紹介させていただきます。
遠近ピント切り替えトレーニング
①ボールを置き、5m先にも目印を置く
②ボール→5m先→ボール→5m先と、目の焦点を1秒ごとに切り替える
③そのままストロークし、転がりのイメージ通りに距離が出るか確認する
このトレーニングを1日5分続けるだけで、目の奥行き認識が改善し、距離感の安定度が増していきます。
パットができなくてもテーブルの上にボールを置き、顔を動かさずにそのボールと奥の壁や時計などの目標になるものを交互に見て焦点を合わせることでも効果は出ます。
「タッチが合わない」と感じるときほど、目のピントを整える練習が効果的です。パットの距離感は実際にボールを打つ練習よりも目のトレーニングが効果的な場合もありますので是非お試しください。
文/平田智(パッティング専門コーチ)
取材協力/エンジョイゴルフ福岡