障害者ゴルファーたちが招待された麻生グループクリニック。あいにくの雨で室内での質問会となったが、皆の真剣で詳細な問いかけにクールに丁寧に答えたのは今季DPワールドツアー参戦中の中島啓太。

「今日はすごくよかったです。すっかり中島選手のファンになりました」と喜ぶ3人
参加したのは櫻田新児さん(左半身片麻痺障害)、吉村泰知さん(左上肢障害)、中野智昭さん(左片麻痺障害)の3名。まずは、日本と海外のコースの違いや難しさについての質問から。
「僕はヨーロッパを舞台に戦っているんですけど、風がかなり強いこともよくありますし、毎週国が変わって芝も変わるので対応する難しさを感じますね。風の対応は、打ち方を変えたり、クラブセッティングを変えたりします。球が上に上がると風の影響を受けますから。それに地面が硬いときは、低くコントロールする球を打ちたいので、ユーティリティを抜いて、3番アイアンを入れたりします」
また、それぞれがスウィングなどの悩みをぶつけると、実際に立ち上がって実演レッスンする中島。皆に共通する課題は、「もっと飛ばしたい!」ということにあるようで……。

「ボールの先で力を出し切るイメージのほうが飛ばせると思います」と飛ばしのコツを伝授
飛ばしのコツに関しては、「スウィングで一番加速するところは、僕のなかでは打ったあとの少し先。そこで加速させるイメージなんです。そのくらいのイメージをすればちょうどインパクトで一番力が伝わると思っています。飛ばそうと思ってインパクト前で力が入ったら、一番飛ばないし曲がります。ダウンからインパクトまでは力は入れているつもりはない。クラブを上げたら、下ろす動きがあって体が回るだけ。そうすれば自然と加速します。左右どちらかに力が偏って入っているということもない。アドレスのときからお腹には力が入っていて、ゆるまないようにはしています」。

3人の真剣さに応えるようにプチレッスン会に。世界で戦うプロからのアドバイスは貴重だ
さらに、飛ばすためにはどのようなトレーニングをしたらよいかという質問には、「僕が一番飛距離を伸ばせた時期は高校時代。そのときは下半身しかトレーニングしていなかったんです。スクワットやジャンプを交互にしたりしていました。大学入ってからは上半身も鍛えましたけれど」。
皆さん、“啓太の教え”をすぐに実践してみる気になったようで、「ゴルフへのモチベーションが上がりました!」(3人)。

ラウンドを終えたアダム・スコットも特別ゲストとして登場。思わず「かっこいいですね」
中島啓太も自身のモチベーションをアップさせているようで、「また来週からインド、韓国、アブダビ、ドバイとヨーロッパツアーの試合が4試合残っていて、来年PGAツアーに入れるチャンスも今ありますので、しっかり頑張っていきたいと思いますし、皆さんと一緒にゴルフできる機会があればいいと思っています」と爽やかに締めくくった。
一方、サヒス・ティーガラはファーストティの子どもたちへの特別イベントに参加。“臨時講師”として、ジュニアたちに「球を操ることの楽しさ」を教えた。

見ているだけで楽しい球の魔術師ティーガラの“曲打ち”に、子どもたちから大歓声が上がっていた
3日目の18番でティーショットを右に大きく曲げて池に入れてしまい、そのミスショットを「打ち直したい」とネタにし、つかみはOK! 普段からいろいろな球筋を操るティーガラ。まずはドライバーで普通の球と低い球を打ち分ける技を披露。
「風が強いとなるべくドライバーは低い球を打つようにしています。高く打つと風の影響を受けますから」と言いながら打たれた地を這うようなボールの行方を見て、子どもたちからは「うわー!!」「ナイスショット!」と大歓声。「少し右に行き過ぎたなあ」と茶目っ気たっぷりにフェースを見せて「ほら、真ん中に当たっているでしょう」と笑う。

球の打ち分けに必要な、ティーの高さやボールの位置の変え方もしっかりアドバイス
「ティーの上にボールを置くとき、普通はボールの半分のところにヘッドの上がくる感じ、低い球を打つときはティーを低くしてボールの上のところとヘッドの上がちょうど合う感じにして打ちます」とプチレッスンも忘れない。
次に、コース左端にある木から大きくスライスさせる「ザ・ビックスライス!」ボールを見せ、続けて「日本のコースは狭いけど、アメリカはもっと広い。これから遠くへ大きくボールを飛ばしてみましょう。このときのポイントは『左足を上げる』です」とビッグドライブも披露すると、「うわーーー!」とさらに大歓声が!

気温が低くなっても最後まで子どもたちと楽しそうに交流する律儀なティーガラなのだ
その後、子どもたちからリクエストがあった“一番好きなクラブ”という3番アイアンで「スティンガー、タイガーショット」を打つ。「いつもはスチールシャフトだけど、今日はカーボンシャフトを使っています」と説明も交えながら、次にドローボールを打ち、普通のボールで締め、「普通の球を打つことも必要。変な球ばかり打つと明日に影響するんです」。

ファーストティはPGAツアーがジュニア向けに開発した教育プログラム。ゴルフの素晴らしさを知るイベントとなった
最後に3番ウッド。ティーを使うと「フェースの上のほうに当たってしまうから」と地面に置いて打つティーガラ。こちらでも低い球を披露。「普通の球を打つときは、ボールの位置は左足のかかと前、低い球のときは真ん中に入れます」とアドバイス。また見事に打ち分けて、大歓声! こうして“曲打ち”は終了。ジュニアたちも、ゴルフの奥深さ、面白さを感じたことだろう。そして最後までジュニアたちにサインの対応をするティーガラ。本当にいい人! 子どもたちの心に残る出会いとなった。
撮影/岡沢裕行